上 下
18 / 20
山あり谷あり、平坦あり?

5

しおりを挟む

 本を読みながら片手でペンを持ち、重要なところを書き出す作業を朝から始めて、早くも昼過ぎになろうとしている。


 今日は母が仕事で留守のため、昼になっても書庫から出ずとも怒られることは無い。
 昼食にと出されているご飯を後でキリのいい時にでも食べておけば心配はない。そう思って書庫に篭ること7時間。休むことなく、本を読んでは書き写していた。


 机の上にあった本はもう全て読み切った。
 あとは紙に書いてあるものを、また別の紙に整理した状態で書き写すだけである。
 乱雑に置かれている紙を一枚一枚重ねる。まずは植物系の物からまとめるとしよう。


 植物系の毒は多種多様で、どれにしようかと悩むほどだった。全部使えるなら使いたいところだが、探すとなると大変なものもあるだろう。
 探索範囲なんて限られた場所でしかできない。そんな中でどれだけのものを集められるかが問題になってくる。


 一般的に知られているもの。そして、野草として広く分布しているものから順に書き出した。
 その中で、一際有毒性が高いものとして出ていたのがトリカブト。小説の中にも見かけたものだった。
 別名、アコニツムやカブトギクとも言われている。


 毒性はトップクラス。症状も早め出るタイプのもの。吐き気や腹痛、痙攣、呼吸不全などがあげられる。致死率はかなり高いものだ。これを弓矢やナイフの先に添付していれば、ある程度は役に立つだろう。魔物に対して効くのかまでは、やってみないことにはわからないが。


 そしてもう一つ。
 キチガイイモとも呼ばれている、ハシリドコロというものである。これは本州広く分布しているもので、フキノトウにそっくりなほど似ている。その為か、誤食してしまうケースが多いらしい。
 根っこの部分に毒があり、目眩や幻覚、異常興奮などがあげられる。


「これをなんとか粉末にすることが出来たらなぁ。魔物に投げつけて混乱してるところを叩く! とかできるのに」


 魔物相手にするのであればもう少し強力にしたい所である。これもまた追々考えていくとしよう。


 あとは、イヌサフランと呼ばれるもの。これは症状に皮膚の知覚減退がある。
 神経症状のもので、痛みや温度などの感覚が鈍くなることがあるらしい。


 そして一番入手しやすいものがアセビ。なんせ、今住んでいるこの家の裏の庭に生えているものである。庭木として植えられているものがまさか毒があるなんて思わないだろう。調べなければ分からなかったものだ。
 アセビには神経麻痺の症状が確認されている。


 その他にも色々とあるのだが、今はとりあえずこの植物の入手に徹しようと思う。植物を入手した後に、毒の抽出や液体などへの加工も視野に入れなくてはならない。参考になるもの全ての植物を集めたところで、加工出来なければ意味が無いのだ。
 まずはこれらの植物から試してみようと思う。


「毒の抽出なんてどこにもないからなぁ。そんなことすれば犯罪みたいなものだろうし。どうするか」


 毒の抽出キットなんてものがあったら、世の中毒殺塗れである。お手本なんてものは最初からない。
 自力でどうにかするしかないのかとため息をついたところで腹の虫が鳴った。どうやら、考えるよりも腹を満たせとのご命令らしい。
 時計を見ると既に14時。キリもいいところだし、ここいらで一旦休憩を挟むとしよう。


 机の上をそのままの状態で放置して、リビングへと上がっていった。
しおりを挟む

処理中です...