魔法しかなかったから物理で叩いた

麦茶畑の緑茶園

文字の大きさ
19 / 20
山あり谷あり、平坦あり?

6

しおりを挟む

 サンドイッチを口にくわえながらモニターをいじる。じいちゃんがよく見ていた映画というものを見るために、久しぶりに機械を引っ張り出しているのだ。


 じいちゃんが亡くなってからは一度も出されていなかった機械。使われなくなってしまっても、毎日掃除はされているのがよくわかる。ホコリ一つ被っていないところを見ると、文句を言っていた割には大切にしていたんだなと、母の言葉と行動があっていないことに笑みを零した。


 機械にディスクを入れて、モニターを見る。映画が始まる前の企業紹介のところで早送りをして、本編へと飛ばす。今日見るのは、じいちゃんがよく憧れていたというもの。暗器というものを使って悪人を一人一人始末していくという映画。しかも、シリーズ物だ。


 舞台は江戸時代。今よりだいぶ古典的な生活を送っていた時代だ。そんな中に蔓延る悪人に苦しめられている人間たちからの依頼を受けるところから始まる。
 依頼を受けた仕事人が一人一人悪人を殺していくのだが、それがまた面白いものだった。
 武器はここに違うものを使用する。仕込み笛や三味線の糸、刀と言われるものからメリケンサックなど。


 そんなので殺せるのか!? と思ってしまうもので仕事を済ませていく。確かにこれはじいちゃん好みの映画だ。華麗な技術で敵を倒すというのに憧れるのだろう。
 俺もちょっとかっこいいと思ってしまうほどに。


 その中で武器として出てきている刀に注目する。腰に携えた刀の見た目は細くて薄い。下手な使い方をしてしまえばポキリと折れてしまいそうに見える。それを鮮やかに使いこなしている。例えそれが役者の演技だとしても、観ている者をこんなにも魅了させているのだ。


 この刀。作れはしないだろうか。


 考えるよりも行動。
 皿に残っていたサンドイッチを無理矢理胃の中へと入れた。モニターを元の場所に戻すと、書庫へと急いだ。
 江戸時代、歴史、刀剣などの書籍を見つけては手に取り、机の上に置いていった。関連書籍はざっと数えて15冊。書庫の中をくまなく探せばまだ出てくるだろうが、今のところはこれでいいだろう。


 毒草などの本には付箋をして、机の隅へと追いやる。
 毒に関しての調べ物もしなくてはいけないのだが、今は刀についてもっと知りたい。中途半端に投げ出すのは良くないと分かっているのだが、それ以上に知りたい欲が抑えきれないのだ。
 刀のことが分かれば、後々に作る予定のナイフも作りやすくなるだろう。先のことを見据えての調べ物ということにしよう。うん。


 本を手に取って一字一句読み漏らすことのないように集中する。知識が一つ一つ増えていくことに興奮を感じながら。


「刀……想像以上のものだな……」


 一冊目の本を読み終えて一息つく。
 刀と言っても色んな種類のものがあることがわかった。サイズもものによって違う。小さいものから、人の身長くらいのものまであるらしい。
 大太刀、打刀、短刀などという分類のものや、薙刀や軍刀というものもある。
 作るといっても、そう簡単に作れるような代物でもない。刀の素材は一つ物から出来ているのではなく、複数の素材を接合させた複合素材の一種。それゆえのあの斬れ味なのだそうだ。


 となると、その素材の調達に手間取るだろう。
 複数の素材を使うとなるとそれなりの費用もかかるだろうし……それでなくても刀を作るのに場所や道具も必要だ。素材を熱するために高温を必要とする。それこそ、上級魔法士が底つくくらいの魔力で出した炎くらいの温度。そんなものをこしらえることも、維持することも出来ない。そんな中でどうやって作るというのか。


 答えは一つしかないだろう。
 現状では作ることは不可能。いや、これから先も作れる機会など無いに等しい。刀は諦めるしかない。
 そう結論づけた。


「……仕方ない……か。そう簡単に作れるようなものではないもんな。刀を作る職人がいたそうだし……そこらのガキが少しつけたような知識で作れたりしたらそれこそ、おかしな話だろ」


 読んでいた本をパタンっと閉じる。
 どの本を見ても書いてあることは変わらなかった。
 別のものを探そう。そっちの方が早い気がする。
 持ってきた本を全て本棚へと戻す。最後に残った本を戻そうとした時、手を止めた。本の表紙を見て少し考える。その本に目印を付けてから本棚へと戻した。


 その本がいつか役立つような気がして。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった

雷覇
ファンタジー
ワノクニ、蒼神流・蒼月道場。 天城蒼真は幼き頃から剣を学び、努力を重ねてきた。 だがある日、異世界から来た「勇者」瀬名隼人との出会いが、すべてを変える。 鍛錬も経験もない隼人は、生まれながらの天才。 一目見ただけで蒼真と幼馴染の朱音の剣筋を見切り、打ち破った。 朱音は琴音の命で、隼人の旅に同行することを決意する。 悔しさを抱えた蒼真は、道場を後にする。 目指すは“修羅の山”――魔族が封印され、誰も生きて戻らぬ死地へと旅立つ。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

異世界配信〜幼馴染みに捨てられた俺を導く神々の声(視聴者)

葉月
ファンタジー
コルネ村で、幼なじみであり恋人でもあったユリアナと、ささやかな幸福を分かち合って生きていたロイド。 だがある日、ユリアナは女神の愛子として目覚め、国王の命により王都へと連れ去られる。 突然、日常を奪われ、運命に引き裂かれたロイドは、抗う術も持たぬまま、否応なく大きな流れへと呑み込まれていく。 これは、奪われたものを取り戻すため、そして理不尽な運命に抗おうとする、一人の少年の物語である。

処理中です...