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ハガキ一枚のマインドチェンジ

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家族と絶縁(離縁)して、もう10年が経つ。

ウシ家の話は別の機会にするとして、とにもかくにも、おれには家族がいない。

また、恋人も妻もいない。

なので、お盆や年末年始を誰かとともに過ごすことがない。

大切なひと時を、年の変わり目を、もう10年も一人で過ごしている。

今年の年末年始も、相変わらずの孤独な生活だ。


年末から年始にかけての6日間、おれは外にも出ていない。

いや、昨日(1月1日)はコンビニに出かけたか。

2022年の最初に会話した相手は、セブンイレブンの店員さんだった。

しかも、男…ハズレだ。


1月2日の今日、さすがに運動不足すぎると思い、散歩に行ってきた。

しかし、家のドアを開けて早々、ローマインドになる出来事があった。

エレベーターホールにタバコが投げ捨てられていて、おまけに火が消えてない状態だった。

タバコの煙が室内に入る苛立ちと、火事になる危険にヒヤッとした。

もう散歩に行くのすら嫌になって、そのまま家の中に戻ろうと思った。

だけど、せっかく着替えたし、外の空気を吸いたかったので、一歩踏み出すことにした。


外は寒い。

冬だから当たり前か。

ポケットには、120円の小銭を入れている。

散歩に出るご褒美として、何か飲み物を買うためだ。

自販機を5か所ほど回ってみたが、お目当てのココアやカフェラテ系は140円くらいする。

120円で買えるのは、せいぜい「ほうじ茶」くらいだ。

ここでもまた、ローマインドになった。


歩数的に1000歩も歩いてないところで、足が痛み出した。

そのため、来た道を迂回して戻ることにした。

普段通らない道にある自販機に、足を進めた。

あてにしていなかったが、なんと、ミルクティーが120円で売られていた。

すぐさま小銭を投入し、ミルクティーを買った。

アルミ缶越しに、ミルクティーの熱が伝わってくる。

ぐいっとひと口飲むと、喉元から胸元までホッと温かくなった。


途中休憩しながらも、自宅に戻ってきた。

郵便受けを見ると、数枚の封書とハガキが入っていた。

3枚あったハガキのうち、1枚はセールスレター(ダイレクトメール)だった。

でも、残りの2枚は年賀状だった。

そのうちの一枚は、10年前から年賀状でだけやりとりをしている元同僚だ。

おれがダブルマインドになって退職した職場の、元同僚。

一年に一度の、ハガキ一枚の関係性。

でも、このハガキ一枚のご縁が、とてもありがたいと感じている。


今日散歩に行く時、おれはローマインドだった。

でも、ハガキ一枚で、おれの心はハイマインドになった。

マインドチェンジは、ほんのちょっとしたことで起こるのだ。
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