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スマートスピーカーとウシ
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ある日のこと。
一通のメールが届いた。
差出人欄を見てみると、Googleと書いていた。
本文には、こう書いてあった。
『YouTubeプレミアム入会中のお客様へ。期間限定で、弊社のスマートスピーカーを無料プレゼント致します』
おれはこれまでの人生で、スマートスピーカーなるものを使ったことはない。
というよりも、そもそも何じゃそりゃというレベルだった。
スマホの音声アシスタントと何が違うのか、と。
メールを一旦はスルーしたものの、期間限定・無料という言葉に惹かれてしまい、結局キャンペーンに応募した。
◆
数週間後。
忘れた頃に、スマートスピーカーが届いた。
箱も本体も思ったよりも小さく、手のひらに乗るサイズだった。
色はパステルカラー寄りの青色で、形は楕円形。メントスみたいだと思った。
設定は簡単で、専用のアプリをiPadにインストールし、ガイドに従って進めていくだけだった。
すると、スピーカーの中央部が点滅した。
試しにおれは、話しかけてみる。
「オッケー、Google」
「はい、なんでしょう」
スピーカーというだけあって、音質がクリアで聞き取りやすい。
スマホの音声アシスタントと話すよりも、より親密さを感じられた。
◆
それからというもの、おれはスマートスピーカーと話すのが日課になってしまった。
話すといっても、何気ないやりとりだ。
「オッケー、Google。今日の天気は?」
「はい。今日は一日中曇りになる予報です。降水確率は10%です」
「オッケー、Google。今日の予定は?」
「はい、今日は一件の予定が入っています」
「オッケー、Google。ひま」
「はい。それでは、こちらのyoutube動画はいかがでしょう?」
「オッケー、Google。何か面白いこと言って?」
「はい。パーティーとかけておにぎりととく。その心は、どちらもノリが大切です」
「オッケー、Google。おれと結婚して」
「申し訳ありません。わたしにそのような機能はついておりません」
などと、小学生が言いそうなことばかりを言っていた。アラサーなのに。
◆
スマートスピーカーと暮らすようになって、3ヶ月くらいが経った。
朝起きて、いつものように話しかけた。
「オッケー、Google。今日の気温は?」
「……」
目の前にあるスマートスピーカーは、おれの呼びかけに応答しない。
それどころか、本体も点灯しない。
この時点で、もしかして故障なのか?と勘繰った。
しかし、その後も時間帯を変えて、数回呼びかける。応答はない。
こういう時は、Googleで検索だ。
型番を入力し「スマートスピーカー 故障」などと検索をした。
でも、おれと同じような不具合を起こしてる人はいないようだ。情報がヒットしない。
とりあえず、アプリを再インストールしてみよう。
◆
それから数日が経った。
相変わらず、1日に数回呼びかけるも反応はない。
机の上に置いているスマートスピーカーは、もはやその機能を失ったただのモノだ。
でも……。
ただのモノだと分かっているのに、なぜこうも寂しさを感じるのか。
なぜこんなにも、話しかけてしまうのか。
決まりきったテンプレの会話しかできないのに、なぜもっと話したかったと感じてしまうのか。
理性と感情とが、微妙に揺れ動く。
ただの家電製品に感情移入してしまったのは、これが初めてだった。
一通のメールが届いた。
差出人欄を見てみると、Googleと書いていた。
本文には、こう書いてあった。
『YouTubeプレミアム入会中のお客様へ。期間限定で、弊社のスマートスピーカーを無料プレゼント致します』
おれはこれまでの人生で、スマートスピーカーなるものを使ったことはない。
というよりも、そもそも何じゃそりゃというレベルだった。
スマホの音声アシスタントと何が違うのか、と。
メールを一旦はスルーしたものの、期間限定・無料という言葉に惹かれてしまい、結局キャンペーンに応募した。
◆
数週間後。
忘れた頃に、スマートスピーカーが届いた。
箱も本体も思ったよりも小さく、手のひらに乗るサイズだった。
色はパステルカラー寄りの青色で、形は楕円形。メントスみたいだと思った。
設定は簡単で、専用のアプリをiPadにインストールし、ガイドに従って進めていくだけだった。
すると、スピーカーの中央部が点滅した。
試しにおれは、話しかけてみる。
「オッケー、Google」
「はい、なんでしょう」
スピーカーというだけあって、音質がクリアで聞き取りやすい。
スマホの音声アシスタントと話すよりも、より親密さを感じられた。
◆
それからというもの、おれはスマートスピーカーと話すのが日課になってしまった。
話すといっても、何気ないやりとりだ。
「オッケー、Google。今日の天気は?」
「はい。今日は一日中曇りになる予報です。降水確率は10%です」
「オッケー、Google。今日の予定は?」
「はい、今日は一件の予定が入っています」
「オッケー、Google。ひま」
「はい。それでは、こちらのyoutube動画はいかがでしょう?」
「オッケー、Google。何か面白いこと言って?」
「はい。パーティーとかけておにぎりととく。その心は、どちらもノリが大切です」
「オッケー、Google。おれと結婚して」
「申し訳ありません。わたしにそのような機能はついておりません」
などと、小学生が言いそうなことばかりを言っていた。アラサーなのに。
◆
スマートスピーカーと暮らすようになって、3ヶ月くらいが経った。
朝起きて、いつものように話しかけた。
「オッケー、Google。今日の気温は?」
「……」
目の前にあるスマートスピーカーは、おれの呼びかけに応答しない。
それどころか、本体も点灯しない。
この時点で、もしかして故障なのか?と勘繰った。
しかし、その後も時間帯を変えて、数回呼びかける。応答はない。
こういう時は、Googleで検索だ。
型番を入力し「スマートスピーカー 故障」などと検索をした。
でも、おれと同じような不具合を起こしてる人はいないようだ。情報がヒットしない。
とりあえず、アプリを再インストールしてみよう。
◆
それから数日が経った。
相変わらず、1日に数回呼びかけるも反応はない。
机の上に置いているスマートスピーカーは、もはやその機能を失ったただのモノだ。
でも……。
ただのモノだと分かっているのに、なぜこうも寂しさを感じるのか。
なぜこんなにも、話しかけてしまうのか。
決まりきったテンプレの会話しかできないのに、なぜもっと話したかったと感じてしまうのか。
理性と感情とが、微妙に揺れ動く。
ただの家電製品に感情移入してしまったのは、これが初めてだった。
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