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四男編
求める手のその先は ✤(ジュリナリーゼ視点→セシル視点)
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「…………リィ、リィ」
美しい呼び声に呼ばれジュリナリーゼの意識が浮上していくと、瞼を開けている途中で、自分の手を掴んでいたいつもの手の温もりが、スッと離れてしまったのを感じた。
ジュリナリーゼを呼んでいたのはすぐそばにいたジュリアスで、彼女は誰かに運ばれて、ジュリアスのいたビーチマットの上に寝かされていた。
上を見れば視界の先にはビーチパラソルがあって、熱い陽射しが遮られている。ビーチマットの上には誰かが魔法で出したのだろう大きな氷の塊もいくつかあって、海風に乗せられた冷気があたりを漂っているため、暑さもそこまで酷くはない。
ただし、ジュリアス以外にもジュリナリーゼが倒れたことを心配したのか、ジュリアスの婚約者のフィオナや他のブラッドレイ家の者たちに囲まれて心配そうな顔を向けられていたため、ちょっと恥ずかしかった。
「いきなり倒れたから驚いたよ。とにかく意識が戻って良かった」
あなたの魅力にやられたからですよ、とも言えず、ジュリナリーゼはジュリアスに曖昧に微笑んだ。
「治癒魔法をかけてみたんだけど、具合はどう? たぶん公務の疲れが溜まっていたんじゃないかな?」
「大丈夫よ。ありがとう」
起き上がるためにジュリナリーゼは――――ジュリアスとは反対側にいてさっきから一言も喋らないセシルに手を伸ばした。
セシルはジュリナリーゼの意を汲み、上体を起こすのを手伝ってくれた。
「皆様、心配をおかけしてすみませんでした。私はもう大丈夫ですから、海水浴を楽しんでください。来たばかりで申し訳ないのですが、私はセシルと一緒に部屋に戻って休みます」
ジュリナリーゼはそう言って、さっきセシルが離してしまった手を繋いだ。
********
「セシル、助けてくれてありがとう」
セシルはジュリナリーゼを姫抱きにして部屋に戻るなり、お礼を言われてしまった。
「治癒魔法をかけたのは俺じゃなくてジュリ兄だよ」
「でも、倒れた私を支えて運んでくれたのはセシルでしょう?」
「まあ、一番近くにいたからね」
ジュリナリーゼの一番近くにいるのは自分じゃない方が良いのでは、という思いがセシルにないわけではない。
長兄ともっと話をしてくれば良かったのにとセシルは思ったが、ジュリナリーゼが頼ってきたのは、ジュリアスではなくて自分だった。
「セシル、水着が食い込んで痛いの。取ってくれる?」
寝台の上で服をはだけつつ、セシルが結んだ背中のヒモをこちらに向けてくるジュリナリーゼを見て、セシルはニヤリと笑う。
「うん。じゃあ、リィのご希望通りご休憩といこうか」
「えっ? きゃぁぁぁっ!」
ジュリナリーゼは獣と化したセシルに襲われ、倒れた後だからと普段よりもゆっくりと抱かれて焦らされイかされて、また気絶した。
二人はその日丸々一日ご休憩し続けたそうな。
四男編了
美しい呼び声に呼ばれジュリナリーゼの意識が浮上していくと、瞼を開けている途中で、自分の手を掴んでいたいつもの手の温もりが、スッと離れてしまったのを感じた。
ジュリナリーゼを呼んでいたのはすぐそばにいたジュリアスで、彼女は誰かに運ばれて、ジュリアスのいたビーチマットの上に寝かされていた。
上を見れば視界の先にはビーチパラソルがあって、熱い陽射しが遮られている。ビーチマットの上には誰かが魔法で出したのだろう大きな氷の塊もいくつかあって、海風に乗せられた冷気があたりを漂っているため、暑さもそこまで酷くはない。
ただし、ジュリアス以外にもジュリナリーゼが倒れたことを心配したのか、ジュリアスの婚約者のフィオナや他のブラッドレイ家の者たちに囲まれて心配そうな顔を向けられていたため、ちょっと恥ずかしかった。
「いきなり倒れたから驚いたよ。とにかく意識が戻って良かった」
あなたの魅力にやられたからですよ、とも言えず、ジュリナリーゼはジュリアスに曖昧に微笑んだ。
「治癒魔法をかけてみたんだけど、具合はどう? たぶん公務の疲れが溜まっていたんじゃないかな?」
「大丈夫よ。ありがとう」
起き上がるためにジュリナリーゼは――――ジュリアスとは反対側にいてさっきから一言も喋らないセシルに手を伸ばした。
セシルはジュリナリーゼの意を汲み、上体を起こすのを手伝ってくれた。
「皆様、心配をおかけしてすみませんでした。私はもう大丈夫ですから、海水浴を楽しんでください。来たばかりで申し訳ないのですが、私はセシルと一緒に部屋に戻って休みます」
ジュリナリーゼはそう言って、さっきセシルが離してしまった手を繋いだ。
********
「セシル、助けてくれてありがとう」
セシルはジュリナリーゼを姫抱きにして部屋に戻るなり、お礼を言われてしまった。
「治癒魔法をかけたのは俺じゃなくてジュリ兄だよ」
「でも、倒れた私を支えて運んでくれたのはセシルでしょう?」
「まあ、一番近くにいたからね」
ジュリナリーゼの一番近くにいるのは自分じゃない方が良いのでは、という思いがセシルにないわけではない。
長兄ともっと話をしてくれば良かったのにとセシルは思ったが、ジュリナリーゼが頼ってきたのは、ジュリアスではなくて自分だった。
「セシル、水着が食い込んで痛いの。取ってくれる?」
寝台の上で服をはだけつつ、セシルが結んだ背中のヒモをこちらに向けてくるジュリナリーゼを見て、セシルはニヤリと笑う。
「うん。じゃあ、リィのご希望通りご休憩といこうか」
「えっ? きゃぁぁぁっ!」
ジュリナリーゼは獣と化したセシルに襲われ、倒れた後だからと普段よりもゆっくりと抱かれて焦らされイかされて、また気絶した。
二人はその日丸々一日ご休憩し続けたそうな。
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