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三男編
昔のノエル
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夜の砂浜でたき火をしながら、アテナは隣のノエルに身体を寄せて座り、月光に照らされる遠くの海を見ていた。
ノエルは灰色の髪と宝石のような碧眼を持つ美少年で、その類稀な天性の美貌を生かしてアテナと同様にモデルをしている。
ノエルはアテナよりも三学年下ではあるが、時には自分を引っ張って行ってくれる頼もしい面もあって、今はアテナにとっては魂の伴侶とも言うべき、なくてはならない存在だ。
夕食の後、アテナとノエルは、カインとシオンと一緒に海辺で花火をしていた。
しかし、五歳のシオンが眠いと言い出したことで花火はお開きになり、カインは寝てしまったシオンを背負って瞬間移動で別荘に帰って行った。
一番下のレオハルトも海ではしゃいでいた疲れが出たのか、眠そうにしていたので花火には不参加で、夕食後は父アークと母ロゼに連れられて部屋に引き上げて行った。
ジュリアスとフィオナには大人の事情があるような気がして、彼らからも一緒に花火をしたいと言われなかったこともあり、アテナは無理には誘わなかった。
四男カップルについても、夕食も部屋で摂るという話で、ずっと部屋に篭もりきりで、昼間に見たきり顔を合わせていない。
「ジュリナリーゼ様、綺麗だったわよねぇ…… 薄紫色と黒で左右の目の色が違うあの神秘的な瞳が開いた瞬間、森の妖精姫が現れたのかと思ったわ。
でも明日には帰っちゃうのよね。会えるのを楽しみにしていたんだけど、せめて挨拶くらいはしておきたいわ」
「セシもジュリナリーゼ様も忙しくしているようですから、せっかくの夏休みに二人だけで過ごしたいのでしょう。また会える機会もありますよ」
平常時は丁寧語で話すノエルがそう答える。
「そうよね…… 愛し合っている所に邪魔をするのも野暮よね」
そうして二人は沈黙した。
ザザーン、と打ち寄せる波の音だけが鼓膜を揺らし、アテナの胸のときめきも加速する。
「ノエル……」
何かを求めるつもりで、たき火の炎に照らされたノエルの美しい顔を見つめていると、ノエルも照れたような顔になった。ノエルは瞳を潤ませてアテナに顔を寄せ、唇にちゅっ、とキスをしてくれる。
(ああ、幸せ♡)
ノエルはアテナに啄むようなキスを繰り返し、アテナの身体を抱きしめてくれる、のだが…………
「…………ノエル、押し倒してくれないの?」
「……ここではちょっと」
「えっ、いいじゃない夜だし誰もいないし、魔法で見えないようにもできるんでしょう? 私たちもしようよ、青姦」
「な…… 何てこと言ってるんですか」
絶句しかけるノエルに暴走娘アテナが畳み掛ける。
「だって、ジュリアスお義兄様とフィオナ様、絶対にお外でしてたわよ。二人して結構な時間、不自然にいなくなった時があったじゃない。気が付かなかった?」
貴族のフィオナとは違って、ブラッドレイ一家は次期宗主ジュリナリーゼと婚約中のセシルも含め、現段階では全員平民だが、ジュリアスの美しさがあまりにも神懸かり的に凄すぎるため、ジュリアスの信奉者同様、アテナも何となくジュリアスを様付けで呼んでいた。
「そうですね…… そんな気はしていましたが、深く考えていませんでしたね」
「そうなの?」
「うちは、母が隙あらば父を襲って部屋に篭もるのが日常でしたので、家族のそういう部分は見て見ぬふりをするというか、皆無意識的にあまり気にしないようにしているんだと思いますよ」
「そうなんだ…… でも、お父さんがお母さんを襲うのではないのね」
「父も母のことは愛していますが、母はそれ以上に父が好きすぎて、父は仕事で長く留守にするような時もありますから、帰ってくると燃え上がってしまうようです」
ノエルたち兄弟の母、奇跡のアラフォーなロゼは、物語上に出てくるまさに空想通りの天使のような外見をしているのに、中身はかなりの肉食のようだった。
「母は生む子供が全員男ばかりなので、どうしても女の子がほしい部分もあるようです」
「でも、シオン君だって可愛いじゃない…… シオン君を見てると、昔のノエルを思い出すわ」
その昔…… といってもつい一年くらい前までの話だが、ノエルはシオンと同じように女装癖があった。
ノエルは灰色の髪と宝石のような碧眼を持つ美少年で、その類稀な天性の美貌を生かしてアテナと同様にモデルをしている。
ノエルはアテナよりも三学年下ではあるが、時には自分を引っ張って行ってくれる頼もしい面もあって、今はアテナにとっては魂の伴侶とも言うべき、なくてはならない存在だ。
夕食の後、アテナとノエルは、カインとシオンと一緒に海辺で花火をしていた。
しかし、五歳のシオンが眠いと言い出したことで花火はお開きになり、カインは寝てしまったシオンを背負って瞬間移動で別荘に帰って行った。
一番下のレオハルトも海ではしゃいでいた疲れが出たのか、眠そうにしていたので花火には不参加で、夕食後は父アークと母ロゼに連れられて部屋に引き上げて行った。
ジュリアスとフィオナには大人の事情があるような気がして、彼らからも一緒に花火をしたいと言われなかったこともあり、アテナは無理には誘わなかった。
四男カップルについても、夕食も部屋で摂るという話で、ずっと部屋に篭もりきりで、昼間に見たきり顔を合わせていない。
「ジュリナリーゼ様、綺麗だったわよねぇ…… 薄紫色と黒で左右の目の色が違うあの神秘的な瞳が開いた瞬間、森の妖精姫が現れたのかと思ったわ。
でも明日には帰っちゃうのよね。会えるのを楽しみにしていたんだけど、せめて挨拶くらいはしておきたいわ」
「セシもジュリナリーゼ様も忙しくしているようですから、せっかくの夏休みに二人だけで過ごしたいのでしょう。また会える機会もありますよ」
平常時は丁寧語で話すノエルがそう答える。
「そうよね…… 愛し合っている所に邪魔をするのも野暮よね」
そうして二人は沈黙した。
ザザーン、と打ち寄せる波の音だけが鼓膜を揺らし、アテナの胸のときめきも加速する。
「ノエル……」
何かを求めるつもりで、たき火の炎に照らされたノエルの美しい顔を見つめていると、ノエルも照れたような顔になった。ノエルは瞳を潤ませてアテナに顔を寄せ、唇にちゅっ、とキスをしてくれる。
(ああ、幸せ♡)
ノエルはアテナに啄むようなキスを繰り返し、アテナの身体を抱きしめてくれる、のだが…………
「…………ノエル、押し倒してくれないの?」
「……ここではちょっと」
「えっ、いいじゃない夜だし誰もいないし、魔法で見えないようにもできるんでしょう? 私たちもしようよ、青姦」
「な…… 何てこと言ってるんですか」
絶句しかけるノエルに暴走娘アテナが畳み掛ける。
「だって、ジュリアスお義兄様とフィオナ様、絶対にお外でしてたわよ。二人して結構な時間、不自然にいなくなった時があったじゃない。気が付かなかった?」
貴族のフィオナとは違って、ブラッドレイ一家は次期宗主ジュリナリーゼと婚約中のセシルも含め、現段階では全員平民だが、ジュリアスの美しさがあまりにも神懸かり的に凄すぎるため、ジュリアスの信奉者同様、アテナも何となくジュリアスを様付けで呼んでいた。
「そうですね…… そんな気はしていましたが、深く考えていませんでしたね」
「そうなの?」
「うちは、母が隙あらば父を襲って部屋に篭もるのが日常でしたので、家族のそういう部分は見て見ぬふりをするというか、皆無意識的にあまり気にしないようにしているんだと思いますよ」
「そうなんだ…… でも、お父さんがお母さんを襲うのではないのね」
「父も母のことは愛していますが、母はそれ以上に父が好きすぎて、父は仕事で長く留守にするような時もありますから、帰ってくると燃え上がってしまうようです」
ノエルたち兄弟の母、奇跡のアラフォーなロゼは、物語上に出てくるまさに空想通りの天使のような外見をしているのに、中身はかなりの肉食のようだった。
「母は生む子供が全員男ばかりなので、どうしても女の子がほしい部分もあるようです」
「でも、シオン君だって可愛いじゃない…… シオン君を見てると、昔のノエルを思い出すわ」
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