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対銃騎士隊編
47 裏切り(ヴィクトリア視点→レイン視点→ヴィクトリア視点)
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裏切り展開(どんでん返し)があります
***
「号外! 号外だ!」
長椅子に座りながら思考の渦に呑まれていたヴィクトリアは、顔を上げて声のした方を見た。
興奮したように紙の束を持った男が声を上げていた。公園の入口付近で文字の綴られた紙を道行く人に配っている。
「稀代の大悪党、獣人王シドが捕まったぞ!」
わあっ、と、周辺のそこかしこから歓声が上がる。人々が我先にと男に群がり、紙を手にしていく。
「処刑は明後日の午後だ!」
ヴィクトリアも立ち上がり、男に駆け寄って紙を受け取った。紙面を広げれば、男の言うとおりシドが銃騎士隊に捕まり、処刑の日時が決まった旨が記されている。
処刑――――――シドの処刑が正式に決まった。
わかっていたことだ。あらかじめそうなるとジュリアスから聞いていたし、仕方のないことだと思っていた。なのに、改めて突きつけられた現実は、ヴィクトリアの胸に穴を開けた。手や足の末端が冷たくなって、全身から力が抜けていくようだった。
周囲の人々は喜んでいる。ヴィクトリアの父親が死ぬことを喜んでいる。けれど自分は、喪失感に胸を突かれている。
襲われて里から逃げ出したあの夜から、あんな人は父親じゃないと、そう思おうとしていた。けれど、シドが死ぬことを悲しいと感じている自分は、結局割り切ることができなかったようだ。
「シド…………… お父さま………………」
******
レインは号外の紙を手にし呆然と佇むヴィクトリアを見ていた。
騒いで喜びを顕にする大勢の人々の中、彼女だけがその空気とは真逆の、異質な雰囲気を醸し出していた。彼女は衝撃に胸打たれたように立ち尽くしている。
眉を寄せた彼女の瞳は、深い悲しみの色に包まれていた。
何故?
何故?
何故?
その男は俺の大切なクリスティナを奪って殺したのに、何故君はそんな男の死を悲しむ?
君は何故そんな男に、今でも愛情を傾ける?
レインの手の中に綺麗な小箱が握り締められていた。すぐに渡すつもりで、余計な包装は省いてもらっていた。レインは揃いの指輪が入った小箱を見つめ…………
それを、肩に掛けた荷物入れの中に放り込んだ。
レインの顔に浮かぶのは、悲しみと憎しみの色だ。
次に足を踏み出した時、レインはそれらの感情を完全に顔から消し去っていた。
******
握っていたはずの紙を上から引っ張られて取り上げられるまで、レインが戻って来たことにヴィクトリアは気付かなかった。
はっとして彼を見れば、レインは周囲の者と同じように紙面を眺めている。
「明後日か。一度逃げられそうになったから急いだんだろうけど、それにしても明後日でも遅いな。もう少し早く殺るべきだ」
レインが淡々と言葉を紡ぎながら紙面から顔を上げてこちらを見る。
ヴィクトリアは口を開きかけるが、「そうね」と肯定することも、「そうかしら?」と否定することもできずにいた。
沈黙するヴィクトリアを、レインの眼差しが打つ。レインの表情は凪いでいた。不自然なほどに。
さっきまで考えていたことへの罪悪感も影響したのか、ヴィクトリアは何故だか咎められているように感じた。
「あの男は死ぬべきだ。君もそう思うだろう?」
「……そうね。シドはきちんと罪を償わなければいけないわ」
(――――そして、私も)
浮かんだ言葉を言えずに飲み込む。刑の執行が明後日だという知らせに思いの外動揺しているようだ。
ヴィクトリアは親友の剣をレインに返した。彼が口を開く。
「話したいことって何?」
戻ったら大事な話をすると伝えていたけど、シドの処刑決定の知らせが尾を引いていて、ヴィクトリアは今言ったら自分もレインに処刑されてしまうような気がした。
「ごめんなさい、話そうと思っていたことがあったのだけど…… 一度改めさせてもらえる?」
「そう、わかった」
「馬はどうしたの?」
「道の途中で街中がすごい騒ぎになって、君の事が心配になったから引き返してきたんだよ」
確かに街は色んな人が騒いでいて、見知らぬ者同士が手を取り合い喜びを分かち合っていたり、肩を組んで歌い出したりしている。
「街はこんな様子だし、散策は終わりにして宿まで戻った方がいいかしら?」
「あと一ヶ所だけいい? 仕事で使う用品を仕入れたいから、付いてきてもらえる?」
「ええ、もちろん」
頷いたヴィクトリアは、レインに手を引かれて歩き出した。
レインも話したいことがあると言っていたが、そのことについての話はなかった。
大通りから外れて、路地裏の細い道をひたすら進む。やがて商店が狭苦しく立ち並ぶ通りへと出たが、歩いている人はまばらだ。
一人の痩せこけた老女が目だけぎらぎらさせて店の前に立っていたが、二人がその店に入らず通り過ぎると舌打ちをする。道端に座り込む浮浪者のような男がヴィクトリアに向って下卑た笑いを向けていた。
先程買い物をしていた場所とは違い、この商店街は殺伐としていてあまり雰囲気が良くない。
レインが目的の店に辿り着いて中に入ろうとしたが、ヴィクトリアは足を止めて動こうとしない。
「レイン…… 鼻が曲がりそうよ……」
ヴィクトリアが片手で顔を抑えていた。店の中から色んな薬品が混ざった匂いが漂ってきて、かなり強烈だ。
「私、店の前で待ってるから」
「この場所はあんまり治安がよくないから、一人にはさせられない。すぐ済ませるからこれで鼻を抑えてて」
レインからハンカチを差し出されてそれで鼻を覆う。レインの匂いがして一瞬だけほっと息を吐いた。
店内に入ると強烈な匂いが強くなる。
(これ以上は進みたくない)
入口付近で立ち止まるヴィクトリアの腕をレインは強く掴んで強引に引っ張って行こうとするが、彼女は頭を降り完全に歩行を停止してしまった。
「……わかった。このままここにいて。危ないから絶対に店の外には出るなよ」
やがてレインは一緒に行くことを諦めたらしく、ヴィクトリアがその言葉に頷くと彼は薄暗い店内を一人奥へと進んで行ってしまった。
ヴィクトリアはハンカチに残るレインの匂いだけに意識を集中させていたが、その匂いも段々と感じ取れなくなっていく。
どうやら強烈な匂いのせいで鼻が完全に馬鹿になってしまったようだ。
ヴィクトリアはハンカチを服のポケットにしまうと辺りを見回した。店内の棚には薬の材料と覚しき物品が並べられている。粉や液体状になり既に薬として完成された商品も売っていた。
棚を眺めながらゆっくり歩いていると、そのうちに商品の種類が変わってきた。金属製で硬質なそれには見覚えがある。
(……手枷?)
獣人を捕まえる時にでも使うのだろうかとヴィクトリアは思った。
首を傾げていると不意に誰かに肩を叩かれた。鼻が効かないので気配を感じ取りにくくなってはいたが、足音すらしなかったので、近くに人がいたことに驚きつつも振り返る。
後ろにいたのはレインで、振り向きざまに唇が重ねられた。
顎を上向きにさせられて、口内に温かい液体が流し込まれる。妙に甘ったるい味がした。
ガチャッ――――
すぐ近くで金属と金属が重なり合う音がした。首に冷たい感触を感じる。
口付けられたままでもわかった。首に取り付けられたそれは紛れもなく――――――
(首……輪…………?)
驚いた拍子に、口の中に含まされたものを飲み下してしまった。
ヴィクトリアは唇を離してレインから距離を取ろうしたが、首輪に付いた鎖を引っ張られて逃げることができない。レインは仄暗い表情でヴィクトリアを見つめている。
呆然とするヴィクトリアにレインが言い放った。
「俺の奴隷にしてあげるよ」
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「号外! 号外だ!」
長椅子に座りながら思考の渦に呑まれていたヴィクトリアは、顔を上げて声のした方を見た。
興奮したように紙の束を持った男が声を上げていた。公園の入口付近で文字の綴られた紙を道行く人に配っている。
「稀代の大悪党、獣人王シドが捕まったぞ!」
わあっ、と、周辺のそこかしこから歓声が上がる。人々が我先にと男に群がり、紙を手にしていく。
「処刑は明後日の午後だ!」
ヴィクトリアも立ち上がり、男に駆け寄って紙を受け取った。紙面を広げれば、男の言うとおりシドが銃騎士隊に捕まり、処刑の日時が決まった旨が記されている。
処刑――――――シドの処刑が正式に決まった。
わかっていたことだ。あらかじめそうなるとジュリアスから聞いていたし、仕方のないことだと思っていた。なのに、改めて突きつけられた現実は、ヴィクトリアの胸に穴を開けた。手や足の末端が冷たくなって、全身から力が抜けていくようだった。
周囲の人々は喜んでいる。ヴィクトリアの父親が死ぬことを喜んでいる。けれど自分は、喪失感に胸を突かれている。
襲われて里から逃げ出したあの夜から、あんな人は父親じゃないと、そう思おうとしていた。けれど、シドが死ぬことを悲しいと感じている自分は、結局割り切ることができなかったようだ。
「シド…………… お父さま………………」
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レインは号外の紙を手にし呆然と佇むヴィクトリアを見ていた。
騒いで喜びを顕にする大勢の人々の中、彼女だけがその空気とは真逆の、異質な雰囲気を醸し出していた。彼女は衝撃に胸打たれたように立ち尽くしている。
眉を寄せた彼女の瞳は、深い悲しみの色に包まれていた。
何故?
何故?
何故?
その男は俺の大切なクリスティナを奪って殺したのに、何故君はそんな男の死を悲しむ?
君は何故そんな男に、今でも愛情を傾ける?
レインの手の中に綺麗な小箱が握り締められていた。すぐに渡すつもりで、余計な包装は省いてもらっていた。レインは揃いの指輪が入った小箱を見つめ…………
それを、肩に掛けた荷物入れの中に放り込んだ。
レインの顔に浮かぶのは、悲しみと憎しみの色だ。
次に足を踏み出した時、レインはそれらの感情を完全に顔から消し去っていた。
******
握っていたはずの紙を上から引っ張られて取り上げられるまで、レインが戻って来たことにヴィクトリアは気付かなかった。
はっとして彼を見れば、レインは周囲の者と同じように紙面を眺めている。
「明後日か。一度逃げられそうになったから急いだんだろうけど、それにしても明後日でも遅いな。もう少し早く殺るべきだ」
レインが淡々と言葉を紡ぎながら紙面から顔を上げてこちらを見る。
ヴィクトリアは口を開きかけるが、「そうね」と肯定することも、「そうかしら?」と否定することもできずにいた。
沈黙するヴィクトリアを、レインの眼差しが打つ。レインの表情は凪いでいた。不自然なほどに。
さっきまで考えていたことへの罪悪感も影響したのか、ヴィクトリアは何故だか咎められているように感じた。
「あの男は死ぬべきだ。君もそう思うだろう?」
「……そうね。シドはきちんと罪を償わなければいけないわ」
(――――そして、私も)
浮かんだ言葉を言えずに飲み込む。刑の執行が明後日だという知らせに思いの外動揺しているようだ。
ヴィクトリアは親友の剣をレインに返した。彼が口を開く。
「話したいことって何?」
戻ったら大事な話をすると伝えていたけど、シドの処刑決定の知らせが尾を引いていて、ヴィクトリアは今言ったら自分もレインに処刑されてしまうような気がした。
「ごめんなさい、話そうと思っていたことがあったのだけど…… 一度改めさせてもらえる?」
「そう、わかった」
「馬はどうしたの?」
「道の途中で街中がすごい騒ぎになって、君の事が心配になったから引き返してきたんだよ」
確かに街は色んな人が騒いでいて、見知らぬ者同士が手を取り合い喜びを分かち合っていたり、肩を組んで歌い出したりしている。
「街はこんな様子だし、散策は終わりにして宿まで戻った方がいいかしら?」
「あと一ヶ所だけいい? 仕事で使う用品を仕入れたいから、付いてきてもらえる?」
「ええ、もちろん」
頷いたヴィクトリアは、レインに手を引かれて歩き出した。
レインも話したいことがあると言っていたが、そのことについての話はなかった。
大通りから外れて、路地裏の細い道をひたすら進む。やがて商店が狭苦しく立ち並ぶ通りへと出たが、歩いている人はまばらだ。
一人の痩せこけた老女が目だけぎらぎらさせて店の前に立っていたが、二人がその店に入らず通り過ぎると舌打ちをする。道端に座り込む浮浪者のような男がヴィクトリアに向って下卑た笑いを向けていた。
先程買い物をしていた場所とは違い、この商店街は殺伐としていてあまり雰囲気が良くない。
レインが目的の店に辿り着いて中に入ろうとしたが、ヴィクトリアは足を止めて動こうとしない。
「レイン…… 鼻が曲がりそうよ……」
ヴィクトリアが片手で顔を抑えていた。店の中から色んな薬品が混ざった匂いが漂ってきて、かなり強烈だ。
「私、店の前で待ってるから」
「この場所はあんまり治安がよくないから、一人にはさせられない。すぐ済ませるからこれで鼻を抑えてて」
レインからハンカチを差し出されてそれで鼻を覆う。レインの匂いがして一瞬だけほっと息を吐いた。
店内に入ると強烈な匂いが強くなる。
(これ以上は進みたくない)
入口付近で立ち止まるヴィクトリアの腕をレインは強く掴んで強引に引っ張って行こうとするが、彼女は頭を降り完全に歩行を停止してしまった。
「……わかった。このままここにいて。危ないから絶対に店の外には出るなよ」
やがてレインは一緒に行くことを諦めたらしく、ヴィクトリアがその言葉に頷くと彼は薄暗い店内を一人奥へと進んで行ってしまった。
ヴィクトリアはハンカチに残るレインの匂いだけに意識を集中させていたが、その匂いも段々と感じ取れなくなっていく。
どうやら強烈な匂いのせいで鼻が完全に馬鹿になってしまったようだ。
ヴィクトリアはハンカチを服のポケットにしまうと辺りを見回した。店内の棚には薬の材料と覚しき物品が並べられている。粉や液体状になり既に薬として完成された商品も売っていた。
棚を眺めながらゆっくり歩いていると、そのうちに商品の種類が変わってきた。金属製で硬質なそれには見覚えがある。
(……手枷?)
獣人を捕まえる時にでも使うのだろうかとヴィクトリアは思った。
首を傾げていると不意に誰かに肩を叩かれた。鼻が効かないので気配を感じ取りにくくなってはいたが、足音すらしなかったので、近くに人がいたことに驚きつつも振り返る。
後ろにいたのはレインで、振り向きざまに唇が重ねられた。
顎を上向きにさせられて、口内に温かい液体が流し込まれる。妙に甘ったるい味がした。
ガチャッ――――
すぐ近くで金属と金属が重なり合う音がした。首に冷たい感触を感じる。
口付けられたままでもわかった。首に取り付けられたそれは紛れもなく――――――
(首……輪…………?)
驚いた拍子に、口の中に含まされたものを飲み下してしまった。
ヴィクトリアは唇を離してレインから距離を取ろうしたが、首輪に付いた鎖を引っ張られて逃げることができない。レインは仄暗い表情でヴィクトリアを見つめている。
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