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『番の呪い』後編
99 優しさの贈り物
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「私、リュージュを傷付けてきたの。リュージュにはもう会えないわ」
暗い表情で話し終えたヴィクトリアは下を向く。
「もう会えないなんてそんなこと言うなよ。会いたいなら会いに行けばいいじゃないか。あいつは何だかんだ言って、笑って許してくれるような気がするよ」
「どんな顔して会えばいいのかわからないわ。それに、番になれないのに会えないわよ」
うーん、と、ロータスは腕組みをして考え始める。
「そうだなあ…… なら、リュージュに会いに行く時は俺も一緒に里に付いていくとかじゃ駄目か?
俺はもうずっと、里とは関わり合いになりたくないと思って生きてきたけど、でももういい加減、そんなこだわりも捨てた方がいいんじゃないかって、思っていた所だったんだ」
シドが明日処刑されることは、ロータスの耳にも届いているはずだ。
「最後、リュージュとは喧嘩別れみたくなってそのままだったんだ。
シドに会いに里に行くって言うリュージュと、絶対にやめろって言う俺とでぶつかって、結局あいつは俺の制止も聞かずに行ってしまった……
その後マグに行方を探ってもらって、無事に里に着いたことと、出会い頭にシドにボコボコにされたことを聞いて、まあほぼ予想通りだなとは思ったけど、やっぱり心配で、連れ戻そうかってマグと話したりもしてたんだ。
だけど、あいつは案外里の中で自分の居場所を見つけて上手くやってるようだって聞いて、あいつにとって俺はもう必要な存在じゃなくなったんだなって、ちょっと悲しく思ったのと同時に、リュージュに対して申し訳ないことをしたなって気持ちが芽生えたんだ。
赤ん坊のあいつを里から引き剥がしたのは俺だから。
俺と一緒じゃなくて、本当はリュージュは里で育っていた方が幸せだったんじゃないかって思った。里にいたら当然受け取っていたはずのものを、俺のせいで全部受け取れなかったわけだから。
そのことは今でも俺の中でずっと引っかかっている。
俺にとってはそうじゃなかったけど、あいつにとっては里こそが本来いるべき場所なんじゃないかって思って、リュージュを連れ戻すのはやめにしたんだ。
その後俺も忙しかったり他にも色々あって、五年もの間一度も会っていない。ずっとほったらかしだったから、俺もあいつと会うのがちょっと気まずい所もあって、二人で一緒に会いに行けば怖くない、みたいな?」
ロータスはいつの間にか隣に移動してきて、不安そうな顔をしているヴィクトリアの頭を撫でていた。ロータスは安心させるように朗らかな笑みを向けてくる。
ロータスはとても優しい。接し方は年長者が年下にするような態度でリュージュとはまた少し違うけれど、慈しむようなその優しさを受けると、まるでリュージュが隣にいるように感じられた。
ヴィクトリアは気付く。リュージュの優しさは、この人から貰ったものなのだと。
「リュージュはロイといてきっと幸せだったと思うわ。だって、私は今ロイといられて幸せだもの。
あなたといるととても温かい気持ちになるわ。ロイの優しさはリュージュに届いていて、リュージュはその優しさを私にも分けてくれていたのよ。
私はそれにとても救われていた」
(リュージュはきっとロータスのことも、私のことも恨んだりなんてしていない。リュージュはそんな人じゃない)
「会いに行くわ、リュージュに。その時はロイも一緒に来てくれる?」
「ああ、勿論」
そう言ってロータスが満面の笑みになる。陽だまりのように温かくて優しくて、眩しい笑みだった。
その笑顔にリュージュの面影が重なって苦しくなる。ロータスはシドよりも、リュージュによく似ている。
暗い表情で話し終えたヴィクトリアは下を向く。
「もう会えないなんてそんなこと言うなよ。会いたいなら会いに行けばいいじゃないか。あいつは何だかんだ言って、笑って許してくれるような気がするよ」
「どんな顔して会えばいいのかわからないわ。それに、番になれないのに会えないわよ」
うーん、と、ロータスは腕組みをして考え始める。
「そうだなあ…… なら、リュージュに会いに行く時は俺も一緒に里に付いていくとかじゃ駄目か?
俺はもうずっと、里とは関わり合いになりたくないと思って生きてきたけど、でももういい加減、そんなこだわりも捨てた方がいいんじゃないかって、思っていた所だったんだ」
シドが明日処刑されることは、ロータスの耳にも届いているはずだ。
「最後、リュージュとは喧嘩別れみたくなってそのままだったんだ。
シドに会いに里に行くって言うリュージュと、絶対にやめろって言う俺とでぶつかって、結局あいつは俺の制止も聞かずに行ってしまった……
その後マグに行方を探ってもらって、無事に里に着いたことと、出会い頭にシドにボコボコにされたことを聞いて、まあほぼ予想通りだなとは思ったけど、やっぱり心配で、連れ戻そうかってマグと話したりもしてたんだ。
だけど、あいつは案外里の中で自分の居場所を見つけて上手くやってるようだって聞いて、あいつにとって俺はもう必要な存在じゃなくなったんだなって、ちょっと悲しく思ったのと同時に、リュージュに対して申し訳ないことをしたなって気持ちが芽生えたんだ。
赤ん坊のあいつを里から引き剥がしたのは俺だから。
俺と一緒じゃなくて、本当はリュージュは里で育っていた方が幸せだったんじゃないかって思った。里にいたら当然受け取っていたはずのものを、俺のせいで全部受け取れなかったわけだから。
そのことは今でも俺の中でずっと引っかかっている。
俺にとってはそうじゃなかったけど、あいつにとっては里こそが本来いるべき場所なんじゃないかって思って、リュージュを連れ戻すのはやめにしたんだ。
その後俺も忙しかったり他にも色々あって、五年もの間一度も会っていない。ずっとほったらかしだったから、俺もあいつと会うのがちょっと気まずい所もあって、二人で一緒に会いに行けば怖くない、みたいな?」
ロータスはいつの間にか隣に移動してきて、不安そうな顔をしているヴィクトリアの頭を撫でていた。ロータスは安心させるように朗らかな笑みを向けてくる。
ロータスはとても優しい。接し方は年長者が年下にするような態度でリュージュとはまた少し違うけれど、慈しむようなその優しさを受けると、まるでリュージュが隣にいるように感じられた。
ヴィクトリアは気付く。リュージュの優しさは、この人から貰ったものなのだと。
「リュージュはロイといてきっと幸せだったと思うわ。だって、私は今ロイといられて幸せだもの。
あなたといるととても温かい気持ちになるわ。ロイの優しさはリュージュに届いていて、リュージュはその優しさを私にも分けてくれていたのよ。
私はそれにとても救われていた」
(リュージュはきっとロータスのことも、私のことも恨んだりなんてしていない。リュージュはそんな人じゃない)
「会いに行くわ、リュージュに。その時はロイも一緒に来てくれる?」
「ああ、勿論」
そう言ってロータスが満面の笑みになる。陽だまりのように温かくて優しくて、眩しい笑みだった。
その笑顔にリュージュの面影が重なって苦しくなる。ロータスはシドよりも、リュージュによく似ている。
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