160 / 220
処刑場編
【SIDE4】 セシルの考察(セシル視点)
しおりを挟む
【注意】遺体への愛撫(軽度)がありますので注意
***
セシルは残っていた自分の全魔力を、主に三兄ノエルと、それから、一部を長兄ジュリアスに譲渡した。
この処刑場で起こっている全ての出来事を把握したセシルは、兄たちを信じて、全てを委ねることにした。
レインと父のアークは、ヴィクトリアを殺そうとしていた。
ただし、レインの中にはそれでも迷いがある。
ヴィクトリアは人が変わったような状態になっているが、それは、魔法使いとして覚醒したことによるものだ。
しかし、魔法使いとして覚醒した者の全員が、あのように攻撃的になるわけではない。
ヴィクトリアは覚醒のきっかけになったナディアの死に際して、ナディアの全ての人生の記憶を『視て』いた。
どうやらヴィクトリアは、自分と同じく『過去系の魔法』に適正があるようだった。
ヴィクトリアの中では、ナディアの過去の苦しみや悲しみと、それからヴィクトリア自身の苦しみと悲しみがごちゃまぜになって、共鳴し合っていた。
覚醒したばかりの制御しきれていない膨大な魔力がその過去の感情を増幅させていることもあり、強い恨みの感情に引っ張られすぎていて、ヴィクトリアは我を忘れたような行動を起こしていた。
もう少し魔力を制御する術を覚えれば、負の感情に飲み込まれて自分を見失うこともなくなると思うが――――
セシルが『過去視』で感じる限りでは、シドに支配され抑圧されながら生きてきたヴィクトリアは、これまで「喜」よりも「苦」を感じることが多かった。
この事態を引き起こしてしまったのは、ヴィクトリアの置かれた状況を知りながら、そこから救う方法もたぶんあったはずなのに、放置し続けてきた自分たちブラッドレイ家の者たちにも、責任があると思った。
ヴィクトリアがそばいればシドは比較的――あの男にしてみればだが――残虐な行為も抑えて穏やかそうに過ごしていた。
もしもヴィクトリアの存在がなかったら、シドによる人間たちへの被害はもっと甚大だっただろう。
自分たちはずっと、ヴィクトリアを人身御供のようにしてシドのそばに置き続け、彼女の苦しみを見て見ぬ振りをし続けてきたのだ。
家族の中ではヴィクトリアの一番近くにいたシリウスや、全女性を尊ぶ男であるノエルなどは、何とかしてやりたいと訴えることもあったが、父が「否」と言えばシリウスはそれに従うしかなかったし、一見すると兄たちたちの中では一番の自由人のように見えているノエルも、結局は精神下では父に逆らわないことを植え付けられている。
実際にヴィクトリアを助ける動きまでにはならなかった。
ノエルが銃騎士になることを拒んだり婿入り結婚をしたのは、ノエルの反抗が成功した数少ない事例であり、父の精神的な支配から外れてきている兆しでもあった。
アーク自身もそれを感じていて、近頃はずっと焦りを感じているようだった。
アークが「ナディアを殺す」という凶行に走ったのも、元を正せばそこら辺にも原因がありそうだった。
『真眼』の能力を持つマグノリアもヴィクトリアの状況は理解していたようだったが、マグノリアはアークに目を付けられていて、頻繁にその行動を監視されていた。
国防にも関係してくる「シドのそばにヴィクトリアを置き続ける」というアークの意向を無視すれば、何をされるかわからないと警戒していた様子で、長らくヴィクトリアに手出しができなかった。
マグノリアは『真眼』という特殊能力は持っているが、魔法使いとしての総合的な能力はアークの方が上である。
セシルは、ジュリアスが目を覚ましてくれたら、きっとこのどうしようもない展開も何とかしてくれるはずだと信じていた。
ノエルも、ヴィクトリアが正気に戻って攻撃が止むまで、きっと持ち堪えてくれるはずだと。
そして、嘆くことを止め、じっとその場で時を待っているらしき次兄シリウスのことも――――
端から見れば、シリウスはナディアの亡骸を延々と抱きしめ続けているようにしか見えないが、それはシリウス自身の幻視の魔法によるものだ。
実際のシリウスは、死んでしまったナディアの唇を奪い、彼女の服の中に手を突っ込んで身体中を撫で回していた。
他の魔法使いならばマグノリアにしかわからないだろうが、セシルの強力すぎる『過去視』――セシルが視ることができるのは数分前の過去からであり、多少の時間差はあるが――は、妨害魔法を看破できた。
***
セシルは残っていた自分の全魔力を、主に三兄ノエルと、それから、一部を長兄ジュリアスに譲渡した。
この処刑場で起こっている全ての出来事を把握したセシルは、兄たちを信じて、全てを委ねることにした。
レインと父のアークは、ヴィクトリアを殺そうとしていた。
ただし、レインの中にはそれでも迷いがある。
ヴィクトリアは人が変わったような状態になっているが、それは、魔法使いとして覚醒したことによるものだ。
しかし、魔法使いとして覚醒した者の全員が、あのように攻撃的になるわけではない。
ヴィクトリアは覚醒のきっかけになったナディアの死に際して、ナディアの全ての人生の記憶を『視て』いた。
どうやらヴィクトリアは、自分と同じく『過去系の魔法』に適正があるようだった。
ヴィクトリアの中では、ナディアの過去の苦しみや悲しみと、それからヴィクトリア自身の苦しみと悲しみがごちゃまぜになって、共鳴し合っていた。
覚醒したばかりの制御しきれていない膨大な魔力がその過去の感情を増幅させていることもあり、強い恨みの感情に引っ張られすぎていて、ヴィクトリアは我を忘れたような行動を起こしていた。
もう少し魔力を制御する術を覚えれば、負の感情に飲み込まれて自分を見失うこともなくなると思うが――――
セシルが『過去視』で感じる限りでは、シドに支配され抑圧されながら生きてきたヴィクトリアは、これまで「喜」よりも「苦」を感じることが多かった。
この事態を引き起こしてしまったのは、ヴィクトリアの置かれた状況を知りながら、そこから救う方法もたぶんあったはずなのに、放置し続けてきた自分たちブラッドレイ家の者たちにも、責任があると思った。
ヴィクトリアがそばいればシドは比較的――あの男にしてみればだが――残虐な行為も抑えて穏やかそうに過ごしていた。
もしもヴィクトリアの存在がなかったら、シドによる人間たちへの被害はもっと甚大だっただろう。
自分たちはずっと、ヴィクトリアを人身御供のようにしてシドのそばに置き続け、彼女の苦しみを見て見ぬ振りをし続けてきたのだ。
家族の中ではヴィクトリアの一番近くにいたシリウスや、全女性を尊ぶ男であるノエルなどは、何とかしてやりたいと訴えることもあったが、父が「否」と言えばシリウスはそれに従うしかなかったし、一見すると兄たちたちの中では一番の自由人のように見えているノエルも、結局は精神下では父に逆らわないことを植え付けられている。
実際にヴィクトリアを助ける動きまでにはならなかった。
ノエルが銃騎士になることを拒んだり婿入り結婚をしたのは、ノエルの反抗が成功した数少ない事例であり、父の精神的な支配から外れてきている兆しでもあった。
アーク自身もそれを感じていて、近頃はずっと焦りを感じているようだった。
アークが「ナディアを殺す」という凶行に走ったのも、元を正せばそこら辺にも原因がありそうだった。
『真眼』の能力を持つマグノリアもヴィクトリアの状況は理解していたようだったが、マグノリアはアークに目を付けられていて、頻繁にその行動を監視されていた。
国防にも関係してくる「シドのそばにヴィクトリアを置き続ける」というアークの意向を無視すれば、何をされるかわからないと警戒していた様子で、長らくヴィクトリアに手出しができなかった。
マグノリアは『真眼』という特殊能力は持っているが、魔法使いとしての総合的な能力はアークの方が上である。
セシルは、ジュリアスが目を覚ましてくれたら、きっとこのどうしようもない展開も何とかしてくれるはずだと信じていた。
ノエルも、ヴィクトリアが正気に戻って攻撃が止むまで、きっと持ち堪えてくれるはずだと。
そして、嘆くことを止め、じっとその場で時を待っているらしき次兄シリウスのことも――――
端から見れば、シリウスはナディアの亡骸を延々と抱きしめ続けているようにしか見えないが、それはシリウス自身の幻視の魔法によるものだ。
実際のシリウスは、死んでしまったナディアの唇を奪い、彼女の服の中に手を突っ込んで身体中を撫で回していた。
他の魔法使いならばマグノリアにしかわからないだろうが、セシルの強力すぎる『過去視』――セシルが視ることができるのは数分前の過去からであり、多少の時間差はあるが――は、妨害魔法を看破できた。
0
あなたにおすすめの小説
番など、今さら不要である
池家乃あひる
恋愛
前作「番など、御免こうむる」の後日談です。
任務を終え、無事に国に戻ってきたセリカ。愛しいダーリンと再会し、屋敷でお茶をしている平和な一時。
その和やかな光景を壊したのは、他でもないセリカ自身であった。
「そういえば、私の番に会ったぞ」
※バカップルならぬバカ夫婦が、ただイチャイチャしているだけの話になります。
※前回は恋愛要素が低かったのでヒューマンドラマで設定いたしましたが、今回はイチャついているだけなので恋愛ジャンルで登録しております。
婚約破棄に応じる代わりにワンナイトした結果、婚約者の様子がおかしくなった
アマイ
恋愛
セシルには大嫌いな婚約者がいる。そして婚約者フレデリックもまたセシルを嫌い、社交界で浮名を流しては婚約破棄を迫っていた。
そんな歪な関係を続けること十年、セシルはとある事情からワンナイトを条件に婚約破棄に応じることにした。
しかし、ことに及んでからフレデリックの様子が何だかおかしい。あの……話が違うんですけど!?
愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる