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リュージュハッピーエンド 私の王子様
2 あの夜に戻ってきた
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あの時に戻ってやり直したいと、そう強く願った瞬間、ヴィクトリアの見ている景色が変わった。
気付けばヴィクトリアは地面のない空間にぷかりと浮いていた。周囲にはキラキラと輝く砂粒のような細かい点が無数にあって、空中に浮かびながら渦を描くようにゆっくりと動いていた。
ヴィクトリアは自分が何かに吸い寄せられていると感じていた。自分の身体が動くたびに周囲の点がだんだんと大きくなっていき、点ではなくていくつもの風景になっていく。
知ってる風景、知らない風景、知っている人や知らない人、様々な人や物がその風景の中で動いていていて、まるで目の前で本当に生きているかのように見えて驚く。
やがて、ヴィクトリアの眼前に、ある一つの風景が一際大きく広がった。
空は真っ黒なので夜のようだが、赤く燃え盛る炎や、壊された家や逃げ行く人々の影が見えた。
ヴィクトリアはその風景に吸い寄せられて――――
気付けば、その風景の中に立っていた。
先程までヴィクトリアは空中に浮かんでいたわけだが、今はちゃんと地面があって、そこに足を着いている。
風景を向こう側にあるものとして眺めていた時は、何の匂いも感じなかったが、今は物が燃えた後の焦げ臭い匂いや、人の血の匂いまで、実際にそこに漂っているものとして嗅ぎ取ることができた。
(さっきまでは確かに処刑場にいたはずなのに…… 一体何が起こっているの……?)
この時点でヴィクトリアは、自分が『過去干渉の魔法』を発動させたことには気付いていなかった。
所在なくキョロキョロと当たりを見回すヴィクトリアは、この風景をどこかで見たことがあるように感じた。
そして、とある人物が泣きながら近くを走り抜けて行くのを見かけて、度肝を抜かれた。
「……あれは、私………………」
嗚咽を漏らし泣きじゃくりながら闇夜を駆ける銀髪の少女は、紛れもなく、十歳前後の頃のヴィクトリアで間違いなかった。
「もしかして…… ここは……」
ヴィクトリアは、自分が魔法によって過去に――あの時に――戻ったのではないかと半ば確信するのと同時に、走り出していた。
「いやぁぁぁーーっ! やめてぇぇーーっ!」
その声を聞いてヴィクトリアは立ち止まった。
(間違いない…… ここはレインの故郷の村で、私は自分の魔法であの惨劇の夜に戻ってきたんだわ)
確信したヴィクトリアの動きは素早かった。
ヴィクトリアは魔法で自分の姿を十一歳当時のものに変えた。匂いも、先程嗅いだ昔の自分の匂いへと変える。
ヴィクトリアは以前魔法書で読んだ「姿替えの魔法」と「匂い替えの魔法」についての記憶を思い出しつつ、強く願うとその魔法の発動に成功したので、急ぎレインの家まで走った。
昔から、ヴィクトリアはよく「狩り」に同行させられていた。シドが女性に襲い掛かる場面に遭遇した際は、「ヴィクトリア風色仕掛け」によってシドを女性から引き剥がしていた。
そうなるとまたシドに舐められたり吸い付かれたりと、色々とベタベタされるわけだが、不思議と、襲われる女性たちとは違ってヴィクトリアが犯されることはなかったので、まあなんとかなるだろうと思った。
それに、元の時間の流れではシドは既に死んでいる。ヴィクトリアを守ろうとした時の、シドの最期の優しい微笑みを思い出すと、涙が出そうだった。
ヴィクトリアはレインの家の前に立った。隣家からは火の手が上がり始めていて、うかうかしていたらこの家も火事に巻き込まれるだろうと思った。
ヴィクトリアは玄関の扉を開けようとしたが、その前に、扉が勢い良く内側から開いたので驚く。
「シド……」
立っていたのは、六年前のあの日のシドだった。
気付けばヴィクトリアは地面のない空間にぷかりと浮いていた。周囲にはキラキラと輝く砂粒のような細かい点が無数にあって、空中に浮かびながら渦を描くようにゆっくりと動いていた。
ヴィクトリアは自分が何かに吸い寄せられていると感じていた。自分の身体が動くたびに周囲の点がだんだんと大きくなっていき、点ではなくていくつもの風景になっていく。
知ってる風景、知らない風景、知っている人や知らない人、様々な人や物がその風景の中で動いていていて、まるで目の前で本当に生きているかのように見えて驚く。
やがて、ヴィクトリアの眼前に、ある一つの風景が一際大きく広がった。
空は真っ黒なので夜のようだが、赤く燃え盛る炎や、壊された家や逃げ行く人々の影が見えた。
ヴィクトリアはその風景に吸い寄せられて――――
気付けば、その風景の中に立っていた。
先程までヴィクトリアは空中に浮かんでいたわけだが、今はちゃんと地面があって、そこに足を着いている。
風景を向こう側にあるものとして眺めていた時は、何の匂いも感じなかったが、今は物が燃えた後の焦げ臭い匂いや、人の血の匂いまで、実際にそこに漂っているものとして嗅ぎ取ることができた。
(さっきまでは確かに処刑場にいたはずなのに…… 一体何が起こっているの……?)
この時点でヴィクトリアは、自分が『過去干渉の魔法』を発動させたことには気付いていなかった。
所在なくキョロキョロと当たりを見回すヴィクトリアは、この風景をどこかで見たことがあるように感じた。
そして、とある人物が泣きながら近くを走り抜けて行くのを見かけて、度肝を抜かれた。
「……あれは、私………………」
嗚咽を漏らし泣きじゃくりながら闇夜を駆ける銀髪の少女は、紛れもなく、十歳前後の頃のヴィクトリアで間違いなかった。
「もしかして…… ここは……」
ヴィクトリアは、自分が魔法によって過去に――あの時に――戻ったのではないかと半ば確信するのと同時に、走り出していた。
「いやぁぁぁーーっ! やめてぇぇーーっ!」
その声を聞いてヴィクトリアは立ち止まった。
(間違いない…… ここはレインの故郷の村で、私は自分の魔法であの惨劇の夜に戻ってきたんだわ)
確信したヴィクトリアの動きは素早かった。
ヴィクトリアは魔法で自分の姿を十一歳当時のものに変えた。匂いも、先程嗅いだ昔の自分の匂いへと変える。
ヴィクトリアは以前魔法書で読んだ「姿替えの魔法」と「匂い替えの魔法」についての記憶を思い出しつつ、強く願うとその魔法の発動に成功したので、急ぎレインの家まで走った。
昔から、ヴィクトリアはよく「狩り」に同行させられていた。シドが女性に襲い掛かる場面に遭遇した際は、「ヴィクトリア風色仕掛け」によってシドを女性から引き剥がしていた。
そうなるとまたシドに舐められたり吸い付かれたりと、色々とベタベタされるわけだが、不思議と、襲われる女性たちとは違ってヴィクトリアが犯されることはなかったので、まあなんとかなるだろうと思った。
それに、元の時間の流れではシドは既に死んでいる。ヴィクトリアを守ろうとした時の、シドの最期の優しい微笑みを思い出すと、涙が出そうだった。
ヴィクトリアはレインの家の前に立った。隣家からは火の手が上がり始めていて、うかうかしていたらこの家も火事に巻き込まれるだろうと思った。
ヴィクトリアは玄関の扉を開けようとしたが、その前に、扉が勢い良く内側から開いたので驚く。
「シド……」
立っていたのは、六年前のあの日のシドだった。
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