獣人姫は逃げまくる~箱入りな魔性獣人姫は初恋の人と初彼と幼馴染と義父に手籠めにされかかって逃げたけどそのうちの一人と番になりました~ R18

鈴田在可

文字の大きさ
219 / 220
シドハッピーエンド 王の女

17 王に捧げる ✤

しおりを挟む
 執務室で仕事をしていたヴィクトリアはペンを走らせていた手を止め、顔を上げた。

 ヴィクトリアの視線の先、外の風を入れるために開けていた窓から入ってきたのは、不審者ではなくて、この国の王だった。

「ちょうど良かったわ。キャンベル家から資材の引き渡しの件で書面が来ていたから、目を通しておいてもらえる? それから、これと…… あとこれも……」

 言いながら、ヴィクトリアは必要な書類を取り出すと、背後からの風を背に受けて自由人そのままの雰囲気で窓枠に脚をかけてだらしなく座るシドの手元まで、使書類を運んだ。

 以前はシドの番たちに物凄く憎まれ恨まれていたために、阻害されて魔法が使えなかったヴィクトリアだったが、『番解消の魔法』発動後は、彼女たちのヴィクトリアへの恨みの感情の大部分が消え、魔法が使えるようになった。

 学校環境を整えるなどして頑張っている最中だが、獣人たちの識字率はまだまだ低く、文字を使って仕事ができる者も限られていて、そのためにヴィクトリアは「国」の重要な案件を含む書類と格闘する、とても忙しい日々を過ごしていた。

 あの日ジュリアスから、『国を作ってほしい』と頼まれて以降、色々なことがあった。

 様々な問題を乗り越えつつ、もちろん言い出したジュリアスやキャンベル伯爵家の協力も得て、時には反対する人間たちとの血なまぐさい衝突も皆無だったわけではないが、苦しみを乗り越えて、ヴィクトリアたちは国を作った。

 この絶倫大魔王じゃなくて獣人王シド率いる獣人の里と周辺一帯の魔の森は、悲願叶い、「獣人の国」として人間社会からの独立を果たしている。

「まあいいんじゃないか」

 書類を読み条件を確認したシドがそう言った。

「良いなら一番下の欄にサインをしておいてくれる? あっ! あなたのサインが必要なものが他にもあるのよ。ええと、これと、これと…… これもそうね。あとこれも――――」

「ヴィクトリア」

 ふよふよと次々に書類を空中に浮かせて机回りのことばかり気にしていたヴィクトリアは、気付けばいつの間にか瞬間移動ばりの高速でそばに来ていたシドに抱きすくめられていた。

「今日の仕事はもう終わりだ」

「ちょっと、待っ…… んーっ!」

 縦横無尽に口内を動き回るシドの舌技にヴィクトリアは腰砕けになり、勝手に濡れてきてしまう秘所を疼かせながら、とろんとした目付きでシドを見上げた。

「全く書類書類と面倒な毎日だ。こんなことならお前の制止を振り切ってさっさと世界征服しておけば良かった」

 建国にあたり、幾度も困難な場面に遭遇する度にシドは舌打ちして「世界征服」と言い出していたので、ヴィクトリアは毎回青褪めながらそれを止めていた。

 族長の頃、やろうと思えばできたのに世界征服しなかったのは、ただ面倒だったかららしい。

「駄目よシド」

「わかってる。お前の望まないことはしないさ」

 シドは、彼の至高の存在であるヴィクトリアの望みは、結構わりとなんでも受け入れてくれる。

 しかし、一歩間違ってヴィクトリアが世界の破滅でも願ってしまったら、シドは躊躇なく世界を滅ぼすのかもしれないと思うと、それはそれで恐ろしい部分はあった。

「ま、待って……! この後引き渡しの立ち会いが……」

「そんな雑用はあのクソ美形に全部やらせておけば良い。俺の相手をするのもの立派な王妃お前の仕事だろうが」

 シドはジュリアスのことを「クソ美形」と呼ぶが、貶しているのか褒めているのかわからないなと時々思う。

 執務室でエロエロする流れになりそうで、ヴィクトリアも抗いきれずにそれに乗っかりそうだったが――――

「お父さま! お母さま!」

 幼い子供の声が外から聞こえてきた。

 以前のシドはヴィクトリアとの子供はいらないという考えだったが、魔法が使えるようになってから、「妊娠出産中に何があっても大丈夫!」と説得し、現在一粒種を授かっている。

「お待ち下さい!」

 シドに似てわんぱくなその子は、子守役の制止を振り切って執務室の扉をバーン! と開けた。

 しかしその時には、子供に如何わしい場面を見せてはならないと思ったヴィクトリアの転移魔法により、二人は鍵付きの部屋の寝台上に移っていた。

 鍵が付いているのは行為中に子供に突撃されないためであり、ヴィクトリアはもう昔のように、シドを恐れて鍵を使ったり、シドの顔色を窺いながら窮屈な生活を送る必要はなかった。

 国を動かす仕事は責任も重大だし難しい場面も多くて、大変な毎日ではあるが、この国が存続していくことにはきっと意義があると思うから、これからも精一杯頑張るつもりだ。

 何より、ヴィクトリアには最強の男が付いている。怖いものはない。

 シドは義父で、人殺しで、女性経験も星の数で、その女たちとの間に子供もたくさんいて、かつてヴィクトリアを苦しめていたとんてもない男である。

(でも――――)

「あなたのすべてを愛してる」

 ヴィクトリアがいつものように愛を伝えると、シドが嬉しそうに笑った。

 ヴィクトリアはシドのその笑顔をとても深く愛している。

 シドが唇を合わせてきたので、ヴィクトリアは目を閉じてそれを受け入れた。

「ヴィクトリア、愛してる」

「シド……」

 ヴィクトリアは請われるまま、そして自らも望んで、彼女の唯一無二で最愛の王に、すべてを捧げた。







【シドハッピーエンド 了】





***

次回短めの共通エピローグで完結です
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番など、今さら不要である

池家乃あひる
恋愛
前作「番など、御免こうむる」の後日談です。 任務を終え、無事に国に戻ってきたセリカ。愛しいダーリンと再会し、屋敷でお茶をしている平和な一時。 その和やかな光景を壊したのは、他でもないセリカ自身であった。 「そういえば、私の番に会ったぞ」 ※バカップルならぬバカ夫婦が、ただイチャイチャしているだけの話になります。 ※前回は恋愛要素が低かったのでヒューマンドラマで設定いたしましたが、今回はイチャついているだけなので恋愛ジャンルで登録しております。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

婚約破棄に応じる代わりにワンナイトした結果、婚約者の様子がおかしくなった

アマイ
恋愛
セシルには大嫌いな婚約者がいる。そして婚約者フレデリックもまたセシルを嫌い、社交界で浮名を流しては婚約破棄を迫っていた。 そんな歪な関係を続けること十年、セシルはとある事情からワンナイトを条件に婚約破棄に応じることにした。 しかし、ことに及んでからフレデリックの様子が何だかおかしい。あの……話が違うんですけど!?

私に番なんて必要ありません!~番嫌いと番命の長い夜

豆丸
恋愛
 番嫌いの竜人アザレナと番命の狼獣人のルーク。二人のある夏の長い一夜のお話。設定はゆるふわです。他サイト夏の夜2022参加作品。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

処理中です...