当て馬にも、ワンチャンあってしかるべき!

紫蘇

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学園2年目

出来る男、イドラ

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午前中の「魔法理論初級」の授業が終わった直後、俺はイドラ君に話しかけた。

「イドラ君…ちょっと、いい?」
「えっ、何?」

ようやく口調も友だちっぽくなってきたところに、こんな話を持ちかけていいか悩むとこだけど…
殿下がいなくてイドラ君がいるタイミングはここしかないから、いくしかない。

「夏休みに魔石採取でダンジョンへ行きたいんだ」
「どこの?」「街の東の…」「了解」「えっ…」

イドラ君はノートにサラサラっと何か書いて従者の人に渡した。
従者の人は一礼して走っていった。

「何人?」「2人」「だけ?」「うん」

ガーベラ先輩には断られちゃったんだよね。
バイトあるからって。

「終日魔法棟?」「うん」「じゃあ北口で」

人気ひとけのないところを待ち合わせにしてくれるあたり、どうやら周りに知られたくないことなんだと分かってくれてるみたいだ。
ありがたい。

1分弱で会話を終わらせたイドラ君は、次は政経だから…と言って一般授業棟へ早足で歩いて行った。
何かカッコいい…。

俺はこの後も魔法棟で「魔法理論中級」の授業。
お昼を挟んで、「魔生物学基礎」「魔法戦術中級」
と続き…ほぼ魔法棟から出ない1日だ。

魔石工学の件も含め、俺の時間割はオカシイ。
最初は「テストの結果なのかな?」程度に考えてたんだけど、そもそも自分が考えて提出してたやつと全然違うし、魔法棟にいる時間が長すぎる。

大体、授業の難易度は「入門→初級→中級→上級」と上がっていくはずで、三学期のテストで合格しないと1つ上の級には上がれないはずなんだ。

アレクさんなんか、ずっと魔法の授業を放置していたせいで、今更1年生に混じって「魔法実践入門」を受けているのに…俺は初級も中級も、科目によっては上級すらも一緒くたになっている。

確実におじいちゃん先生の仕業だろ…
と思って聞いてみたら、
「言うの忘れとった(てへぺろ)」
と返されて、ついカッとなってリアルに雷を落としかけた。今は反省している。
「お前さんも報告を忘れる事くらいあるじゃろ」
…って、それを怒ってるだけじゃないんですよ!
職権乱用が過ぎるでしょ!

そう言ったら、今度は
「そんなに文句を言うんなら、二学期は剣術教練(必修)も辞めてその分研究室に来て貰うかのぉ?」
って脅してくるし…。

もー、絶対嫌ですからね!
剣術への希望はまだ捨ててないんだから!

----------

今日の授業も終わり、誰にも会わないように魔法棟北口へ行き、イドラ君と合流した。
それから、学園の勝手口を出て辻馬車を拾い、アイリス商会まで行く。
本来のアイリス商会は市場の奥ではなく、街の中心にある立派な建物らしい。
冒険者ギルドはその隣。
ギルドの応接室を借りて、商会の担当さんと冒険者ギルドの担当さんに話をし、申請書を書いて、規則について確認する。

ギルドの担当さんが眼鏡のブリッジを押し上げながらダンジョン内の魔石について教えてくれる。

「魔石はダンジョンの中に落ちているものもありますが、基本的には魔物を倒して手に入れます。
 魔物の強さに応じて魔石の大きさが変わります」

商会の担当さんから注意事項を聞く。

「魔物の死体を放置するとスライムが増えてしまいますので、なるべく処理するようにしてください。
 それから奥には近づかない事。魔石を取るのが目的なら中盤あたりまでで十分ですからね」

ギルドの担当さんからも注意事項を聞く。

「魔獣や魔物の乱獲はダンジョン内の生態系を崩しかねませんので、手当り次第殲滅するのは止めてください。ですが、ゴブリンは例外で、見かけたら即殺、群れで出るようなら丸ごと潰すまで徹底的にやってください」
「なぜゴブリンは例外なんですか?」

ギルドの担当さんの眼鏡がきらっと光る。

「あれは、一定の数を超えるとダンジョンから出てきて村や街を襲い、誰彼構わず孕ませようとします。
 不幸の元凶であるとともに、ダンジョン内の生態系も破壊するほどの大食いでもあり、駆除対象になっています」

ゴブリン…特定外来生物的な扱いなのな。
言われ様がもはやブラックバスかブルーギル。

じゃあ、ゴブリンはなるべく倒すようにします、と言うと、商会の担当さんが衝撃の発言をした。

「倒す自信が無ければすぐに逃げて下さいね!
 魔石より命が大事ですから…特に貴方は、アルファード殿下の伴侶になる方でしょう?」
「ふえっ!?」

待って待って待って待って。
「あっ!まだ内々の話でしたね、すみません」
「ここでは隠さなくても大丈夫ですよ!
 ギルド長と私はその話をすでに存じてますから」
「いやいやいやいやいやいやいやいや」



俺の扱いがおかしくなってない?
これもゲームの強制力なの!?
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