当て馬にも、ワンチャンあってしかるべき!

紫蘇

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学園2年目

テストが終わって一段落…かと思いきや

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「終わった……」

色んな意味でテスト日程は全部終了。
今日の魔法理論上級はなかなかしんどかった…

「魔石工学の研究室にでも顔を出しに行くか…
 お世話になったしな」

シャラパール語を教えてくれたノースさんにお礼をしないといけないもんな。
ちょうど魔法棟にいることだし、ついでだ。

そう思って筆記用具を片付け、持ち込み可だった用語集と共にトートバッグへ入れて席を立とうとしたその時、テスト監視員の先生が声をかけてきた。

「あー、ルース君、ちょっといいかな」
「え、はい…なんでしょう?」

不正を疑われてるわけではなさそうだけど…

「私は古代魔法の研究をしているマグノリアという者だけど…君が身体強化の魔法について考えているらしいと小耳に挟んでね、良かったら古代魔法の文献を調べに来ないかと思って」
「えっ…?」
「魔法棟の図書館に友人がいてね、彼から聞かれたんだ、古代魔法に身体強化の術はあるか…と。
 それで君の話を聞いたってわけさ」

確かに、文献を調べに図書館に行ったけど…
図書館でそんな話したかなぁ?

「事情があって、図書館にあった古代魔法の文献は、全部うちの研究室に移管されていてね…もし興味があれば貸出もするし…あ、この後は暇かい?」
「はい、特に用事は…でも、先に魔石工学の研究室に寄ってからでもいいですか?」
「ああ、いいよ!どうせなら一緒に行こう、私も研究室に戻るところだ」

マグノリア先生は俺の隣に並んで歩き始めた。
何だろう…すごい違和感ある導入だな。
でもまあ、おじいちゃん先生の研究室が元々あったところと同じ階だし、魔石工学研究室とも同じ階だし、急にかどわかされる心配は無いか。

正直、古代魔法のことはめっちゃ気になるし。

「古代魔法の研究はとにかく本を読む事が多くて、図書館には迷惑かけてたから…いっそ引き取りますってことになってね」
「そうなんですか」
「それで、図書館に古代魔法の文献を探す可能性がある人の情報を貰えることになってるんだよ」

うーん、納得できるようなできないような。
そうこうしているうちに魔石工学研究室へついた。
ノックをして声をかける。

「失礼します、ノース・コリアスさんはいらっしゃいますか?」
「はーい、いるよ!ルース、テスト終わるした?」
「終わりました…。
 色々教えて頂いたのに、申し訳無い結果かも…」
「よろしいのです、テスト無い、でも勉強する、大事ですから、またお手紙しましょう」
「ええ、ぜひよろしくお願いします」

その後、またお礼にお菓子を焼いてくる約束をして、ノースさんと別れた。

「お待たせしました」
「いやいや、では行こうか」

わざわざ待っててくれたマグノリア先生と一緒に、古代魔法研究室へ。
研究室の中には沢山の本や古文書が溢れており、その隙間に収まるように研究生さんが2人いた。

「戻ったぞ!お前たち、お客さんだ」
「わわ!あ、あわわ、こ、こんにちは」
「どーも…お茶、淹れますんで、ごゆっくり」
「あ、いや、お気遣いなく…」

まあまあ座って、と椅子を勧められる。
先に文献を探したいんだけどな…
まあ折角だし、お茶を頂いてからにするか…

お茶が運ばれてきて目の前に置かれた。
マグノリア先生は2人に言った。

「お前たち、自己紹介!」
「あっと、ワルド・ラナンキュラス、4年です。
 ワルドって呼んでください」
「は、はい、僕は、ルディ、ルディ・マグノリア。
 1年で、ルディって、よ、よんでください」
「えっ、マグノリア…って…?」
「あ、教授の、お、おいです」
「ああ、甥っ子さんかぁ」

この学園って、各種のツテで1年から研究室にいる人が意外といるんだな…カイト君とか。

マグノリア教授は幾分柔らかい困り顔で言った。

「ルディは入学早々クラスに馴染めなくてな…学園を辞めるわけにもいかんから、良かったらうちへ来いっていうことになったんだ、仲良くしてやってくれ」

はー、なるほど、保健室登校的な事か。

「ルディ君、大変だねぇ」
「!」
「俺はルース・ユーフォルビア、2年。
 ルースと呼んでください」
「る、ルース…」
「うん、何?」
「ルース、って、呼んで怒らないの?」
「えっ、何で?」
「だって、名字に様つけて呼ばないと、怒る…」
「えっ、そんなことで怒らないよ!?」

俺の大きな声に驚いたのか、ルディ君は大きく目を見開いたかと思うとしくしく泣き始めてしまった。
ヤバい、どうしよう。
年下の子を泣かすなんて最低やないか!俺!!

慌てているとまたルディ君が言った。

「だって、伯爵様でしょ?男爵の子は、公爵から伯爵までは名字に様を付けて呼ぶものだって…」
「ナニそれやばくない!?どこのお貴族様よ!!」

あっ!しまった、心の声がそのまま出ちゃった。

「あ、いやいや、失言失言…はっはっは」
「やばい…?……僕、やっぱり」
「違う違う、様付けて呼べって言うやつの方」
「プッ…、ヤバいって、何が?」

ワルド先輩がひねた顔で可笑しそうに言う。
だから俺も気兼ねなく返すことにした。

「『身分に関係なく学べる』って最初に先生が言うのは「少なくともそう演じろ」ってことですよね?
 伯爵以上の家の子が12歳にもなって「身分差を気にしない事」が出来ないなんて…ちょっとね」

ワルド先輩は尚もニヤニヤと笑って俺に聞く。
「へー、そう?どのへんが?」
だから答える。
「身分差を考慮せず人と付き合うっていうのは、そのまま「上手に身分を隠せる」能力に繋がるんで。
 領地で問題が発生したときに、お忍び…つまり「身分を隠して」現場へ出掛けることが出来ないんじゃ、領地経営なんて出来ないじゃないですか」

俺の言葉にルディ君はポカンとし、ワルド先輩はニヤニヤした笑顔から驚愕の顔になった。

「あっ……確かに!!」

そうなのだ。
この国の公爵~伯爵家は、必ず領地を持っている。
うちにだって狭いけど領地はあるもん。
だから、身分を隠して困り事のある場所へ直接出向いたりするスキルは必須のはず。

大体、家を継がないで他の仕事をするにしたって、そこで家柄は全く考慮されない。
基本この国は実力社会なのだ。
家柄だけで偉そうにしてるやつなんて爪弾きにされて終わりである。

「ルディ君、その子ともう関わらない方がいいよ。
 関わって得な事1つもなさそうだしさ…。
 このままここの研究生してもいいんだから」
「……ぐすっ、はい」
「さて、ちょっと文献を探させて貰っても?」
「あ、ああ、もちろん!
 ルディ、ワルド、手伝ってやれ」
「はい!」「はい」

古代魔法ってどんなのがあったんだろ、それをまずは知らなくちゃならないな…

「これ、古代魔法の入門書です」
「おお、これは…ちょっと読んでいっても?」
「ああ、もちろん。古代語と現代語の対訳はこれを見るといいぞ」
「ありがとうございます!」

身体強化だけじゃなくて、転移魔法とか、次元魔法…所謂マジックバッグを作る魔法とか、そういうののヒントもあったらいいんだけどなぁ。

えーと…

「…へー、無属性魔法…「気」みたいなもんか?
 うーん、理論が今より複雑ですな…あー、なるほど、一回属性の色をつける工程がねー、ほんで今はこのワンクッションが省略されて定着したんですね」

今は自分の中に属性フィルターを作って、そこを通すことで色を付ける工程を省いてる感じかな?

「…昔は小さい頃に属性が決まる、んじゃなくて決めてた、ってこと?それが体内に残って引き継がれるようになってきて今に至る…ってことか…?
 何でそんなこと始めたんでしょうかね」
「戦争の影響だろうな」
「そっか、攻撃にかかる時間は短い方がいいから」

大昔、長い戦争があったというのは歴史の授業でやったけど、ここにもその痕跡があるとは…。

「やっぱ戦争は駄目だな…」
「そうですね…」

深いなー古代魔法。

「ところで、今は属性が7つに固定されてるじゃないですか?何でその7つなんですかね?」
「へっ?」
「魔石を基準にしたのかなと思ったんですけど、自然に採れるのは水・木・土・風・雷…で、たまに闇のも魔生物から出るらしいんですけど、それだと光っていう属性はないと思うんですよね…光の魔石って無いみたいで…
 あれ、でも賢者の杖は…?でも全属性使えるようになるって…光…光魔法は、極めて古代魔法に近い存在…だってことか…?」
「待て、待ってくれ、どういうことだ」
「実は…」


この時の疑問が、様々な研究室を巻き込んで春休みを潰してしまうことになるとは…

どうやら俺は、
とんでもないことに足を突っ込んだらしい。

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