当て馬にも、ワンチャンあってしかるべき!

紫蘇

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学園3年目

ルースのとある1日

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朝起きたら、殿下を起こす。
いつも通り洗顔から整髪…それと軽いキス。
それから今日1日分の結界を殿下にかける。
来年に婚約を控えているので敵が何かを仕掛けてくるのは確実だし、念には念を入れて…である。
殿下の耳に光の魔石のイヤリングをつける。
想いをこめて、そこにもキスをする。

最近殿下の精神状態が不安定なこともあって、色々と肌を重ねることも増えた。
あと4年したら、結婚出来ても出来なくても、殿下に処女をあげるつもりでいる。
その結果子どもができたら産む、と決めた。

殿下が王宮から出ることになるのなら、どこでもついて行けてかつ2人で暮らしていけるように…と、念の為に冒険者登録はすることに決めた。
殿下が王宮に残るなら魔法師団に入るつもりだ。
あと、最悪の場合でもシングルファザーとしてやっていけるように、何か手に職をつけなきゃな。
国内で身を隠すならアナガリス領。
国外へ行くならシャラパール。

それから殿下と一緒に武術棟へ行く。
殿下は馬術の訓練、俺は魔法のレッスン。
訓練場ではすでに生徒さんたちが揃っていて魔法の練習をしているので、1人1人見て回る。
うまくイメージが掴めない人にはやってみせる。
結局これが1番早い。
魔力の流れを掴めない人には、同調法に似たこともしてみたり、試行錯誤だ。

そんな中アレクさんは1人、無詠唱に挑んでいる。
これも完全に試行錯誤…俺にもできないからなあ。
出来ない2人であれこれ考えるよりも、ヘヴィさんが来た時に聞いてみるのが早いかな。

魔法拳のほうは、攻撃が当たる瞬間に魔法を発動できるように訓練してもらう。
具体的にはパンチやキックに合わせて「ファイヤー!」「ウォーター!」ってやるだけ…
土属性の場合は少し変えて、攻撃のあと踏み込んだときにもクレイウォールやクレイランスで攻撃できるように訓練してもらっている。

問題は魔法剣。
属性付与の古代魔法の復元は何とかできたものの、覚えるのが大変でよくミスる。
今の課題は「いかに失敗を減らすか」。
つまり詠唱を完璧に覚えられるような工夫だ。
これは今「替え歌作戦」で取り組み中。

どちらにも言えることだけど、「サンダーアーム」みたいに一定時間体のどこかに纏わせる魔法が雷以外の属性にはない。
ついでにいうと、新しい研究生(練習生?)には雷属性を持っている人がいない。
そもそも「第2属性として現れることがある」程度の希少さなので仕方ない…
近衛騎士団では横行してるけどな!

出しっぱなしは魔力も消費するし疲れる。
失われた魔法なのかもしれないので、余裕が出来たらこれも調べてみる予定。


午前中いっぱい武術棟でレッスンをしたら、お昼を食べに食堂へ向かう。
魔石工学研究室のみんなとガーベラ先輩が先に席を取ってくれているからそこで「こんな魔道具あったらどうかな」とか、「この前言ってた魔道具だけど」とかワイワイ話す。
こと生活魔道具については、売れそうなやつにはイドラ君が融資を検討してくれることもあって、みんなやる気になっている。
時々ノースさんがシャラパール語で話しかけてくれるので、語学の勉強も出来てお得だ。
火属性魔法の教授から頼まれている「属性封じ」については、「封じる」方が行き詰まってしまったので、いっそ「出す魔力を全部火属性に変換する魔道具」という方向で話を進めている。
結構白熱することもあるけど、昼休憩の終わりを知らせる鐘が鳴ったら終わり。

魔石工学のみんなと別れて、ガーベラ先輩と2人でおじいちゃん先生の研究室へ向かう。


おじいちゃん先生の研究室…魔法総合研究室では、すでに今年学会で発表する内容を検討している。

エルさまは相変わらずスライムの研究。
「飼育中のスライムの中で、卵を産むように無属性の魔石を排出する個体が出てきた」そうで、もしこれが自分の身を守るためにこちらの意図を汲んでいるのだとしたら、相当の知性があるのではないか…ということで、
もう一度意思疎通を図ってみることを検討しているそうだ。
出来る限り協力します、と約束している。

そうそう、スライムの残した無属性魔石に属性を付けられる話は、去年のヘザー先輩の「スライムは倒した魔法の属性とレベルに応じた魔石を残す」話と通じるものがあったので、早めに報告した。
ヘザー先輩は「そりゃそうだろうね」と言って笑っていたので、すでに気づいていた可能性が高い。

優秀なんだもん、当然といえば当然だよな。

後は発表するかしないか…だけど、そうなるとスライムの乱獲に繋がるので、先に「スライムの飼育と生活への役立て方」をソラン先輩と共同で発表することにしたそうだ。
まさかエルさまより先にヘザー先輩が魔生物学研究室と組むことになるとは…。
分からないもんだな。

こちらとしても、天然物が存在するか分からない光属性の魔石や、めったに獲れないはずの闇属性魔石を簡単に増やせることが分かるのは問題だろうと思うので、それでお願いした。

リリー君はおじいちゃんと共同で、「土魔法と火魔法を使った簡易建築について」の発表をするつもりらしい。
去年は疲労回復の魔法について発表していたな…と思い出す。
水属性にはもう少し何か可能性があるんじゃないか…という研究も続けているようだ。

色々話を聞いて、疑問や気づいた点について話し合っていると小腹が空く。
そうなると、みんなで第2砦に移動してティータイム。
古代魔法のみんなもそこへ帰って来る。
最近、彼らはルディ君の涙を武器に、音楽科へ突撃したり神殿に突撃したりとなかなかアグレッシブに活動しているらしい…うん、何よりだ。
ワルド先輩が言うには「神官長をこっちへ引き込むのには料理の腕が有効」とのことで、またあのお菓子教室をやるのか…と思うと気が重い。

武術棟の面々も合流して、属性付与のことについて話し合う。
勉強に疲れたゴード先輩もやってきて、カイト君と話をしたりして息抜きをしている。
ケンタウレア先生によると、拳法や体術には武器を使う流派もあるそうで、属性付与についての関心は高いそうだ。
剣術のほうは言わずもがな…。

今度みんなで讃美歌の練習でもしますかね~と言って、そうなるとやっぱり神官長を連れてきた方がいいんじゃないかということになる。

お茶を飲みながら色々話をし、キリがいいところで解散。
俺はそのまま古代魔法の文献を色々調べる。
火属性魔法のベルガモット教授のために属性封印に繋がる話があるかどうか…も、そうなんだけど、一番知りたいのは光魔法と闇魔法について。

どうしても気になるのは闇属性だ。
まずは相手を知らないと戦えない。
どうやって何のために生まれたのか…。

一番に考えられるのはトラウマの克服かな。
心に作用するなら、そういうことも可能なはず。
そういう目的で使われてきたなら、やっぱり神殿は避けて通れない…。

だって、信徒の悩みを聞いたり救ったりしてきた場所だもんな。
無関係とは思えない。

いっそ殿下を神殿に連れていったら…。
あの「結界」は強固だ。
ただ強固な代わりに、掛けられたほうも魔法が使えなくなるみたいで…。
3日間限定で良かった。

「あっ!」
限定的に、風魔法だけを結界で包めないかな?
魔道具なしで出来るとなれば、お金が無くても練習できる。

そんな都合のいいことができるかわからないけど。


夕方になると、ダンジョン再生計画を引き継いでくれているウィン兄とディー兄、ソラン先輩が帰って来る。
特に問題は起きてないっていうけど…
イドラ君から「学園ダンジョンの冒険者から、何度もサンドワームの皮を買い取って欲しいっていう依頼がある」と聞いているから、何かはあるんだろう。
でもあえて言ってくれるのを待つつもり。
実は、冒険者はギルドに依頼の経過報告をすることが義務付けられているので、クリビアさんに聞いて大抵のことは知っているんだ。
「ダグ」という名前の、明らかにダグラスさんだろう冒険者がいることもね。

ソラン先輩からは、「魔物の数が増えてきた」との報告。
あとは種類が増えるといいなと思う。
1層の工事が終わったら、一度10層まで確認にいかないとね。

その3人と一緒に、第1砦へ移動する。
話し足りない人たちも第1砦に集合する。
その頃には生徒会が終わった殿下も合流して、みんなで晩御飯を食べる。
今日の晩御飯担当はカレンデュラ先生とジョンさんの仲良しコンビ。
素材を焼いて、醤油や塩をかけただけのザ・男の料理。
それと、野菜をぐつぐつ煮込んだスープ。
パンは買ってきて済ませる。

ちなみに、俺が担当の日はなぜかトレッドさんが食材を持ってやって来る。
それを何となくで調理したやつを「うまいうまい」と食べて帰る…謎だ。

みんなで晩御飯を食べながらああでもないこうでもないと話す。
他分野からの意見で気づかされることも多いから、かなり実のある食事会になる。
教授陣はそのまま宿泊することもあるけど、俺と殿下が泊る日には全員が遠慮してくれる。

めっちゃ恥ずかしい。

今日は殿下と寮に帰る。

繋いだ手は少し冷えていて…
温めてあげなくちゃ。

そうだ、帰ったら、神殿に行くことを提案しよう。
少しでもアルの心が軽くなればいい。
そのためなら、何でもできる…

そんな気がする。
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