当て馬にも、ワンチャンあってしかるべき!

紫蘇

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学園3年目

腹黒ルディ君 ~ルディ視点~

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僕、分かっちゃった。

泣いたら、多少無理なお願いでも通るって。

「泣き虫子爵」なんて馬鹿にされて、入学早々クラスに行くのが苦痛になっておじさんのところへ来たときは、ただ逃げた僕をおじさんもワルド先輩も大事にしてくれた。

「することがなければここの本を読んでればいい」
っておじさんが言ってくれたので、寮からここへ来て、ここにある本を読んで…。

それと、ワルド先輩も、優しいんだ。
「つまんねーなー」って言いながら、僕が研究室にいる間ずっと一緒にいてくれた。

僕は研究室で本をただ読んでた。
古代語の辞書を片手に、一冊、一冊…。
会話なんて特にしないけど、ワルド先輩と2人で、ずっと研究室にいて…。
これで良いのかなって思ったりもしたけど、教室には行けなくて、授業にも出られなくて。
このまま本に埋もれていくのかな…って、思って。

でも、ある日「ルース」さんがやってきた。
そこから怒涛のような日々が始まった。

身体強化の魔法を探しにきたはずなのに、属性の分け方そのものに疑問を持ったと思ったら、いつの間にか賢者の杖を見に行くことになって、王宮まで行って、ついでに宿泊まですることになって、笑顔で押しの強いエルグラン王子と一緒に賢者の杖の被験者を探し歩いて、王宮中をうろうろして、色んな人に会って、おじさんやワルド先輩と王宮の図書館で見たことのない文献を探して、読んで、新しい発見に盛り上がってうるさいって怒られたり。

そんな中、どうしても他の人の意見が聞きたくて、図書館の人に本を貸してほしいって頼んだんだ。
最初はもちろん断られた。
悲しくて、怖くて、涙が出た。
ごめんなさいって、でも、貸して欲しいって…。
いつもならすぐ引き下がっちゃう僕だけど、何でかその時は図々しくもう一回お願いできたんだ。
泣きながら、だけど。

そしたらね。
本、貸してもらえたんだ。
びっくりして、本当にいいんですかって聞いちゃった。
いいよって…言ってくれて、お礼言って、本、持って帰って…。
そしたら、『よくやった!!』って、おじさんもワルド先輩も褒めてくれた。
1人で出来たじゃないか、って。
泣いたっていいじゃないかって。

それから、僕はちょっと図々しくなった。
色んなとこでお願いするたびに、断られて、泣いて、もう一回頼んだ。
繰り返してるうちに…

気づいちゃったんだ。
泣くと、相手がちょっと優しくなることに。
お願いを聞いてもらいやすくなることに。

だからね、僕、泣きたい時に泣けるようになろうと思った。
あと一押しって時に、武器になるでしょ。
だからね、時々練習してるんだ。
だって、ちょっとぐらい怒られても、断られても、平気になってきちゃったんだもん。

でも、あんまり泣きすぎると効果なくなるからね、ってルースさんに先に言われちゃった。
あまり腹黒くなっちゃ駄目だよって。
でも、その言葉の後に「俺もここぞって時に泣けたらな~」って言うんだよ。
変なの。

だから、ちょっとだけ、教えてあげたの。
きっとルースさんには、もう使い道が見えてるんだと思ったから。

「泣くふりが真に迫ってれば、勝手に涙が出てくるので…」

って。

それをどう使ったのかは知らないけど、役に立ってるといいな。
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