当て馬にも、ワンチャンあってしかるべき!

紫蘇

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学園3年目

怒涛の学外研修(暗き森の遺跡)

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「おー、待っていたぞ!」

久々の「暗き森の遺跡」。
何故か入口付近に砦が出来ていて、そこから現地集合のゴード先輩が出てくる。

「さすがヘヴィ師の関わっている建物なだけはある、頑丈で居心地もいい」

ちょっとご機嫌な様子のゴード先輩のセリフに、凍り付く俺。

「まさか…おじいちゃん先生、また?」
「うん?何のことかな?」
いや、今更何を誤魔化そうというんだ…。
「ちゃんと地権者に許可とったんでしょうね?」
「……」

また無許可ですか?
もうこれ国家の横暴じゃん…。

「近くに宿屋があるのに、こんなことしたら営業妨害で訴えられますよ?」
「それは大丈夫じゃ!ここの管理を頼んでおるくらいじゃから」
「なるほど」

…いや「なるほど」やあれへんがな。

***

砦は宿屋の持ち物として認定されているらしく、地権者りょうしゅにもそれで通っているらしい。
ちゃんと中に従業員とおぼしき人もいたので、心置きなく馬車と馬を預けてダンジョンへ。
いや、多少モヤってはいるけど、もういいやと思って…。

「あっ、もうスライムが…」
「結構ここで捕獲したのに、ちゃんと個体数は維持されてるみたいだね」
「不思議だなあ…あ、逃げちゃう」

去年の夏、3回ぐらい往復したもんな…
でも、新しく増えた個体にどうやって情報伝達してるんだろう。
不思議だなあ…。

「あっ…もしかして、電気信号じゃなくて、他の…。プルプルしてるし…まさか、振動?」
「また何かに気づいたんですか先生?」
「はい、もしかしてスライムとの意思疎通には雷より水か風なんじゃないかなって…じっくり観察してみないと何とも言えないですけど…う~ん、もしかしたらもっと根源的な、分裂するときにすでに元のスライムから情報を得た状態で…でもそうなるとすごい情報量がこの中に入ってることになるしなあ」
「スライムって謎だらけですね」
「だから研究するのが楽しいんじゃない」
「しかし今はサンドワームの穴が先だな」

確か、この前1日目で通ったところにもあったってヘヴィさんが言ってた。

「あ、あそこ…スライムが入っていきますね」
「今度はスライムの巣になってるのか…これ、スライムが増える原因になりそうですね」
「ヘヴィ師が焼き尽くした穴に棲むとは…しぶといものだな」
「そういえば2日目でキャンプ張ったとこにも穴があったって」
「そうそう!急に炎が噴き出して…びっくりした」
「そうなるとあのゴブリンの集団は、入口からちょっとずつ追い詰められて、耐えきれず3日目のところから出てきた…のかな?」
「じゃあ中で全部が繋がってるってこと?」
「そうなると一大地下帝国ですね」

地下帝国…帝国か…

「ゴブリンって、元々地下で生活してるのかな?」
「は?どういうこと?」

俺はクリビアさんに聞いてみる。
「ゴブリンって、見つけ次第駆除って言われるじゃないですか。ダンジョンの生態系を破壊するからって…。
 それって、世界中どこでもそうなんですか?」
「そうですね、どこのギルドでもそうなっているはずですよ」

う~ん、やっぱりそうなのか…。
「じゃあそもそもどこに棲んでいるべき生き物なんでしょうか?」
「ん?どういうこと?」
「ソラン先輩、ゴブリンの生息地ってどこか分かります?」
「あ、いや…そんな話は今まで聞いたことがないね。見つかってないだけかもしれないけど…」
「それが地下だとしたらどうですかね?」
「は?」

だって地上のどこでも特定外来生物扱いなんだもん。
元々の生息地がない生き物って変じゃない?

「どこの国でもゴブリンって出ますよね?」
「そうですね、どこの国でも目撃情報がありますし討伐記録もありますね」
「他の魔物や魔獣には大体生息地がありますよね?
 スライムだって砂漠にはいませんし、極楽蝶だって南の密林にしかいない。
 例えば、の話ですけど…
 この大陸の地下全体に広がるような空洞があって、そこが生息地だとしますよね?
 んで、新鮮な空気を取り入れるとか食料や燃料を得るとかのために地上と地下を繋ぐ穴を開けている。
 それで地上に出てきたときに、人間を襲うことがある、とか…?」

みんなが俺に不審な目を向ける。
確かにこんなトンデモ話、信じる人のほうが少ないよな。俺だって変な事言ってると思うもん。

「まあ仮定の話ですよ?妄想の産物というか。
 真相はゴブリンに聞いてみるしかないんで…」

想像するのはタダだからね。

「折角だから、この構想を小説にできないかなあ」
「小説か!知り合いに物書きがいるからちょっと話してみようかな…」

意外なことにトレッドさんがこの話に乗り気になってくれて、このあとどんな話にするとかゴブリン帝国の設定とかで盛り上がったりして…。
最初の「穴」まではしょうもない話ばかりしながら進んだ。

でも穴と穴がつながってるのは確かなんだよな…。
どうやって確かめるか考えないとなあ。

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