当て馬にも、ワンチャンあってしかるべき!

紫蘇

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学園4年目

伝説の3DAYS、前日

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ついに夏休み終盤。
デューイ君とMDMの初公演に向けて準備は大詰め。

衣装は魔工ミシンと王宮のお針子部隊の活躍により完成。
舞台は魔法総合建築部で制作。
照明は古代魔法チームと魔石工学チームが担当。
場内警備はケンタウレア先生とカレンデュラ先生と側近ズによる事前打ち合わせが終了。
ライブグッズもアイリス商会によって準備万端。
会場周辺の屋台の仕切りはダンピエラ男爵。
楽器や道具の搬入とお客さんの会場までのアクセスはセリンセ商会が請け負ってくれた。

「グッズが売れなくても、屋台の食材の卸でそこそこ儲かるから気にしないで」
「馬車の増便も、広告収入があるので赤字にはなりませんから!」
「広告料も屋台の出店料でちゃんと回収できていますからご安心を!」

…大赤字も覚悟の上だったので、一安心。
とりあえずお金の心配は無さそう。

「…サクラは要らないみたいだな?」
「ええ、そのようで…。
 当日は元締めも楽しんでいってください」
「ああ、あの5人が成功すれば、こっちでもいくらか儲け話が出来そうなんだろう?楽しみにしている」

チケットは3日間とも完売だそうだ。
色街に借りを作ることもなさそうだし、どうやらそっちも一安心。


今日は前日リハーサルで朝から大騒ぎだ。

「あっちい!!くそっ、何で出来ないんだ!?」
「呼吸だ、呼吸!鼻から吸って3秒、口から吐いて10秒!」
「はい!!」
「動きを止めるとこ、流されてる!関節、意識して!」
「はい!!」

あがり気味のダンサーさん達に声をかけ、どこが足りないか的確な指示を出すカイト君。
すっかりダンスの先生として機能している…。
まさかの才能がこんなところに眠っていようとは。

「こういう才があったとは…見抜けなかったな」
「ケンタウレア先生…」
「お前はゴードと違って、なかなか身体も大きくならんかったから心配していたが…。
 道が見つかったようで何よりだ」
「…あ、有難うございます!!」

えっ、あれでガタイ良くないって…ほんまか?
どう見ても俺なんかよりずっと…

何かショックだな。

逆にデューイ君は慣れているのか、それほどあがっている様子は無い。
さすが音楽の神童…

「さすがにこれほどの規模でコンサートをしたことはありませんし、新しい試みも多いですけど…
 笛を吹くという事に変わりはありませんから」

頼もしすぎるぜ。

「じゃあ最後、一回通して終わりにしよう。
 デューイ、頼んだ!!」
「はい!皆さん、お願いします!」
「「おう!!」」

カイト君とデューイ君を中心に、チームに素晴らしい一体感が生まれていた。
リハーサルを見に来ていた興行主のダンピエラ男爵が俺に言った。

「そうそう、席の事ですが…普段はこういったものを軟弱だと毛嫌いされている方々からもお声がけ頂いたりしましてね」
「本当ですか?」

男爵は芝居がかった動きで胸を張り、羽を広げる様に両腕を広げた。

「たかが娯楽・されど娯楽と言いますがね。
 私は、娯楽とみんなに言わせたいのです」

ダンピエラ男爵の意外と熱い一面が見えた気がした。

…よし、絶対に成功させよう!

チケットのもぎりは任せろ!!



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