当て馬にも、ワンチャンあってしかるべき！

学園5年目

命がけのかくれんぼ ～パパさん視点～

そろそろ、トレッドはあちらに着いた頃だろうか。
足は速い方だと言っていたが、如何せん彼は民間人だ。
それほど速さに期待は出来ない。

突然魔力溜まりから出てきた謎の魔物は、魔力溜まりから数歩歩いた場所で止まり、唸り声を上げ続けている。
それに呼応するように、がさがさと周辺の木々が揺れ、様々な魔物の気配が増えていく。

俺とビスカリア卿、フェンネル侯は古代魔法の3人が張った結界の中で、
ボロニア侯はヒソップ侯の結界の中で、
オレガノ侯はソランの結界の中で、
それぞれ息を潜めている。

謎の魔物の目は、周囲を探る様にしている。
何で目が４つもあるんだ…くそっ。

結界があるからといってこちらの気配が消えるわけではないが、魔法攻撃は防げる。
物理攻撃も多少は防げるそうだが…ただ結界を張り続ける魔力が持つかどうか。

俺のいるこの結界は1日持つ…とマグノリア卿は言っているが、攻撃を喰らえばそれも分からない。

魔物や魔獣の気配はどんどん増えていく…
このまま行けば大発生と同じ規模になるかもしれない。
魔獣と魔物が混ざるのはよくある事だが、それにしても魔獣の数が多い…

どのくらい時間が経っただろうか。

謎の魔物の目は４つとも同じ方向を向き、その方向を右腕で指し示し、ゆっくりと動き出す。
集まった魔物や魔獣も同じ方向へと向かって動き出し…少しずつその動きを早める。

奴らが向かう方向は…まさか！？

トレッドがやつらに見つかったのか？
やはり非戦闘員を向かわせるのでは無かった、と、後悔したその時…

魔物たちに向かって、魔法の矢が降り注いだ。