当て馬にも、ワンチャンあってしかるべき!

紫蘇

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学園6年目

戦と言う名の総決算 10

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一階に捕縛した指揮官(エルム公の伴侶=ルージュ様)をつれて降りると、ワルド先輩とルディ君が来たのにかち合った。

「ルース、エルム公の姿が消えたって!」
「えっ、もう?
 早いとこ地下室見つけないと…。
 あ、ルージュ様、穴の開いてる方の地下室って分かります?」
「うん…こっちだよ」

聞いといて言うのも何だけど、なぜかルージュ様は素直に案内してくれそうなご様子。
旦那の事は頭から飛んでいるのか、それとも高度な演技なのかは分かりかねるが、まあ地下室で囲まれたとしても魔法で何とかなりそうだから良いか…。

2人で取り急ぎそちらへ向かって行こうとすると、上から殿下とウィン兄・ディー兄が駆け下りて来た。

「おい、ルース、待て」
「ルー!先に行かないの!」
「あっ、ごめん…つい」

ルージュ様は3人の登場に驚いたのか、俺の手をぎゅっと握って不安そうな顔をする。

「大丈夫ですよルージュ様。
 彼らにも事情を話して、ちゃんとお約束は守りますから」
「うん…」
「案内してくれますか?」
「うん」

俺たちは、何やら絶妙に子ども返りしている様子のルージュ様を連れて、エルム邸に繋がる地下道があると思われる場所へ向かう。

「地下には誰かいますか?」
「…執事が、ひとり」
「えっ?」

一般人が1人?
いやいやそれはないやろ!!
言うても20年以上連れ添った旦那が逃げてくるかもしれんのに…ほんまか?

「まあ行ってみれば分かる事だ。
 そいつが本当の事を言っているかどうか、な」
「嘘だったらその場で死んでもらうしね」
「ほ、本当だよぅ…」
「ほんとかなあ」

やや物騒な事を言うウィン兄。
きっと気が立ってるんだな…。

「…行きましょうか」
「そうだな」

***


地下室に入ると、地下道の入口であろう穴が床に空いていて、側に執事っぽい人が1人佇んでいた。
その人がこちらに気付く前に、ルージュ様が呼びかけた。

「じいや!」
「ルージュ様!?」
「ごめんねじいや…やっぱり、無理だった」
「…そう、でしたか」

項垂れて涙ぐむ執事さん。
それを抱きしめるルージュ様。
その隙に、ウィン兄とディー兄が穴の中を調べてくれたけど、どうやら本当にこの人1人しかいないらしい……念の為にボディチェックをしてから闇飛ばしをしたけど、特に何も無かった。

つまり、ルージュ様はここに来た時点で、もはやエルム公のことはどうでも良かったってことか。
戦闘能力の無い人を置いといても、何か変化があったら知らせる程度の命令しか出せないもんな。

ま、当然だ。自業自得。

婚約中に他の男と寝るわ、閨を学んだとか言い訳したくせにその設定も守らないわ、最低of最低。
人を殺してまで奪った男すら自分から抱こうとしないとかほんとドクズ。
最低でもはすべき。
処刑はその後でも充分出来るしな!!

執事さんが言った。

「ルージュ様、この方々は」
「…アルファード殿下と、ルース殿。
 あと側近の人たちだよ」
「そうでしたか、アルファード殿下が直々に…」

無表情の執事さん。
ルージュ様は彼に言った。

「じいや、いままでありがとうね。
 ようやく暇を出してあげられるよ」
「…ルージュ様」
「僕は罪人だ、だから様は要らない」
「……坊ちゃま」
「それも今更恥ずかしいな」

穏やかな雰囲気で話す2人を外へ連れ出し、地下室の制圧も完了。
またもワルド先輩とルディ君に拠点へのお使いを頼んで、屋敷内の捕虜(全裸の騎士含む)をパーティーホールへ移動させる処理をウィン兄とディー兄に任せる。

俺と殿下は地下室で、糞狸が逃げて来ないか見張りをする。

「あとは神官長待ちだな」
「ダグさん、大丈夫かなあ…。
 あ、そういえばトレッドさんはどこに行ったんですかね?」
までは後ろを付いてきていたぞ?」
「えっ、そうなんですか!?」

うわ、全然気づかなかった。
パーティーホールでイチャイチャしてたのバレてないよね?

「…しかし、見事に何もないな」
「備蓄も全部売られて行ったんですかね…」

このままじゃ、イフェイオン領で何かあったら飢餓が発生するな。
今年豊作だったら良いんだけど…。

「はあ…」

ため息をつく俺に、殿下が言った。

「ルース、魔力は?」

じっ…と目を見ながらそう言われると、不思議と嘘も強がりも出てこなくて、

「……少し、不安です」

俺は正直にそう答える。

「…いい子だ」

ちゃんと倒れる前に言えたな…と、殿下が俺の頭を撫でる。

「今なら誰もいないし、暫く誰も来ない」
「…うん」
「だから、魔力補給…できる、だろう?」
「……うん」

俺は、ラッキーなんだと思う。

「アルの…ちょうだい?」
「ああ、いくらでも」

アルは俺に深いキスをくれる。

アルはこういう時だって、ちゃんと俺の事をキモチ良くしてくれる。

たとえ、俺が奉仕する場面だとしても……。
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