当て馬にも、ワンチャンあってしかるべき!

紫蘇

文字の大きさ
436 / 586
学園6年目

ネタバラシ

しおりを挟む
下手糞なダンスを踊り、皆様の生温かい視線を浴びるという苦行が終わった。

肩で息をする俺に話しかける人もおらず、また殿下に話しかける猛者もおらず…。
なので、俺はあえてこの場であの結婚式で起きたアレコレについて聞くことにした。

「殿下、今回の件…どこまで聞いてたんですか」
「ん、ああ…もしかしたら父親たちが結婚式を反対している裏に、王弟がいるかもしれないとは聞いていた」

どうやら拳で語り合うと相当仲が良くなるものらしい。
いつの間にか腹を割って話せる間柄になっていたとは…まあ、スプーラ殿下が暫くローズに留まっていたのもあるんだろうけど。

「それだけ?」
「まあ、そうだな…
 あとはゴードから招待状が届いた人間を見れば、少なくとも戦闘の一つ二つは覚悟していくべきだと思った」
「…つまりゴード先輩は、調子に乗って沢山友達を呼んじゃったテイで援軍を頼んだってことですね」
「そういうことだな。
 まあ呼ばれていなくても、お祖父様は勝手に全員を連れてくるのだろうが…」

そういえば、シャラパールでの一件が片付いた後、ノースさんが「次はカメリアだ」みたいな事を言って、それにおじいちゃん先生が「みんなを連れていけるようにする」って言ってたな。

「確実に来てもらわなければ困るって事か…」

ゴード先輩がその事を覚えていたかどうかは分からないけど、敵に悟られず援軍を呼ぶ最適解だよな。
もし何も無くても、全員がゴード先輩と同じ戦場で戦ったぐらい深い関係だし、言い訳はどうとでもなる…

何だ、ゴード先輩もしっかり王族してるじゃん。
これなら安心だな。

うんうん…と俺が頷いていると、殿下が言った。

「お前だって薄々気づいていただろう?」
「まあ…この人数は異常ですからね」

でも問題はご両親だけだと思ってたから…
エルさまからの情報に、王弟の話は無かったし。

「12で国を離れたエルグランと、ずっとカメリアにいたスプーラ殿では情報量が違う。
 スプーラ殿も、ぎりぎりまで叔父の事を信じると言っていたしな…
 それに、なるべく弟には触れさせたくない話だったようだから」

それはそうだ。
国を出るまでずっと自分を持ち上げてた派閥が、あっさり叔父さんに鞍替えしてるなんてショックだろう。
何か裏切られた感じするもんな…
エルさま、昔は繊細な王子様だったし。

「その為に慣れない嘘もついた、と…。
 弟思いなんですね、スプーラ殿下」
「そうだな、あの口の悪さと周囲の人間のせいで、あまり伝わっていなかったようだが」

確かに…2人に仲良くされると派閥の長の立場が薄くなっちゃうもんな。
その辺は今後スプーラ殿下が上手くやっていくんだろう…

多分。


今後こんな面倒が起こらない事を祈りつつ、俺は言った。

「周りから兄弟で争うように仕向けられてるんですもんね…2大派閥が常に競っている状態だし」
「ああ、今までの歴史もあるんだろう。
 カメリア王家は、常に2人以上の王子がいるからな」
「え、そうなんですか?」
「ああ、養子を取ってでも2人以上を確保するんだ。
 1番目に何かあっても次が必ずいる状態を保つ為だろうが、争いの種でもあるな。
 今回のように王の兄弟が我が子を王子にしたいがために暗躍したり…過去には色々あったそうだ」

まあそれは分かる。
うちの高位貴族連中だってそれが嫌で、父さんに1人産ませた上に輿入れ先が決まるまで認知しなかったんだから。
おまけに金払いは悪いし…
今からでも取り立ててやろうか!
特にフリージアの親父の方!!

…と、俺が思い出しギレしていると、殿下がそれをどう捉えたのか…言った。

「…カメリアにはユーフォルビアのような家は無いからな。
 まあ将来ローズでもそうする予定だが」
「有難う御座います」
「当然の事だ…遅すぎたくらいだ」

殿下は悔やむように言う。
だけどそれは…違う。

「…最初に甘やかしたのはユーフォルビアです、そのツケが…7代前の王の時代に回ってきた」
「ユーフォルビアは何も悪くない、王家が…」
「殿下、もう、良いんです。
 殿下も俺も…誰も悪くない、悪い奴は…全員表舞台から消えますから」
「…そう、だな」

誰も悪くない。
そう言える時が来たんだ…きっと。
何とかかんとか、ここまで来たんだ。

俺は、珍しく自分から殿下を誘った。

「ね、もう一曲、踊りませんか。
 俺、良い事考えついたんですよ!
 それに、次に幸せになるのは俺たちなんですから…
 
 多分」

「…多分?」

うん、ちらっと見えちゃった。

「俺たちより先に幸せになりそうな人たちが…
 ほら、あそこ」
「あっ…」

そこには、照れくさそうにクリビアさんをダンスに誘うヘヴィさんの姿が、あった。


しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

王道学園のモブ

四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。 私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。 そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

発情薬

寺蔵
BL
【完結!漫画もUPしてます】攻めの匂いをかぐだけで発情して動けなくなってしまう受けの話です。  製薬会社で開発された、通称『発情薬』。  業務として治験に選ばれ、投薬を受けた新人社員が、先輩の匂いをかぐだけで発情して動けなくなったりします。  社会人。腹黒30歳×寂しがりわんこ系23歳。

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました

西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて… ほのほのです。 ※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

処理中です...