456 / 586
学園6年目
出産狂騒曲
しおりを挟む出産シーン注意。
駄目な方は読まなくても大丈夫です!
==================
「うっ…い、いぃ、いた…っ」
「大丈夫、落ち着いて、教授!」
「さ…っ、さけっ、ああっ!」
王都へ着いて次の日。
俺が見舞いに行ったその時を狙ったようにベルガモット教授が産気づいた。
「予定日ぴったりってこと、あります!?」
「いや、ままある事です、準備は出来てます!」
「いたぃ…っ、うっ、くっ…う!」
陣痛の痛みに呻く教授のお腹はパンパンに膨らんで、かなり大きい。
「ルース様、産湯の準備お願いします!」
「分かりました、すぐに!」
分娩室に変えた父さんたちの寝室は、準備万端。
バスタオルも山ほど用意したし、産湯の桶と新生児用ベッドは念のために4つずつ。
先生は「多胎」というだけで人数に言及しなかったので、双子より多いのかな…と思って、一応…。
父親候補も4人いることだし、念の為?
「いっ…く、うんっ…ふ」
「教授、リラックス、リラックスして…」
何とか自力で分娩台に上がった教授の服を脱がせて大きなバスタオルを体にかける。
先生が言う。
「順調にヘソが開いてきてる!」
「ええっ、もう!?」
「かなり早いですけど、想定内です!!
ベルガモットさん!楽な姿勢で、いきんで!」
「うっ……うーーっ、ううっ……!ふぎっ!」
「はい、鼻から吸って、口からゆっくり吐いてー…
すうっ、はあーーー、すうっ、はあーーー」
「す、す、は、はああ、す、すっ、はあ、あ」
「はい、ゆっくりおなかに力いれて…」
この世界では、ラマーズ法じゃなくて痛みを逃す用の呼吸が採用されているらしい。
2回呼吸をしていきむ、を繰り返し、ゆっくりヘソが裂けてくるのを待つのだ……
「ルース様、背中に支えを!」
「分かりました!」
ヘソから子どもが出てくる事もあって、横向きが基本姿勢。
その姿勢を支えるのに専用のクッションを背中に入れ、そのクッションがズレないように、分娩台に無数に空いている穴へ杭を立てる。
こうすることであらゆる体勢にフィットするクッションストッパーを作るのだ。
ベルガモット教授は俺の手を掴んで言う。
「る、るー、いたい、いたいよぅ」
「大丈夫、大丈夫だからね、息をしましょうね、はいっ、すうっ、はあーーー、すうっ、はあーーー」
「すす、は、はああ、すっ、はああ」
一緒に呼吸をしながら、教授の肩をさする。
本当は伴侶がやるべきだと思うんだけど、やつらの人数が多すぎるので外で祈らせている。
「もう少しですよ!」
「うあああ!!」
「頑張って、教授!!」
「いいいいいい」
ベルガモット教授が必死でいきんだ、その時。
ぶしゃっと羊水が溢れる音がして、
「出た!1人目!」
「はい、バスタオルOKです!」
「渡しますよ!」
先生の手から生まれたての命をバスタオルで受け取り、落とさないようにバスタオルごと産湯を入れた桶へ。
優しくお尻から漬けると、
「ふぎゃあー!」
「おー、よしよし…元気な子だ!」
羊水を洗い流し、バスタオルを引いたベビーベッドへ乗せ、しっかり湯を拭きとったらそっとバスタオルを抜き、寝かせる。
「次!」
「はい!!」
急いで2人目。
さっきと同じ手順で産湯からベビーベッド…
「次!」
「はい!?」
ちょっとまて。
何人出てくるの!?
えーい、バスタオル、バスタオル!!
「う、うう、ふううう…っ」
「えっ?つ、次!?」
「は!?4人目!?」
「4人目です!!」
待って待って。
そんなにいたなんて聞いてないんだけど!?
「先生!!もういませんか!?」
「いません!あとは胎盤が出るのを待ちます!」
「はい!」
「う…うう…っ、あ……」
いません!はいいけど…
4人!?4人って!!
混乱しながらも赤ちゃん達の様子を見る。
少し小さいけど、ふぎゃふぎゃ泣いている。
「頑張りましたね、ベルガモット教授!」
「素晴らしい安産でしたよ!!」
「う…、うん……、うっ……」
ずるり、と胎盤が出てくる。
出てきたのを見計らって、裂けたお腹にヒール。
休む間もなく先生が俺に指示を飛ばす。
「ルース様、初乳!初乳飲ませないと!
杭抜いてクッション取って!ベッドの頭上げて!」
「はい!!」
あああもう!
4人って、誰が誰の子なんやーーーー!!
どうなってんねん!!
***
…怒涛の出産が終わり、ポンコツ4を呼びに行こうと扉を開けると雪崩れる様に4人が入ってきた。
4人は真っ直ぐにベルガモット教授に駆け寄り、涙を流して無事を喜んでいる。
「セド~!セドが無事で良かった~!」
「大丈夫セド!?痛かった?痛かったね?」
「頑張った!頑張ったよぉおお!」
「セド~!!」
…掛け値なしに美しい光景だと思う。
4人の労いを受けて、ベルガモット教授は言った。
「ほら…、1人ずつ、公平に…、だろ、
頑張ったん…だから、な…」
…何だか聞き捨てならない事をベルガモット教授が言った気がする。
本人は4人って分かってたような口ぶり…
まっ、いいか。
今は赤ちゃんが全員無事に生まれてきたっていうだけで充分だよね。
「わあ、ほんとだ…!」
「か、かわいい…!!」
「4人!?4人もいるの!?」
「うわーんセドおおお!有難う!!」
しかし、37歳にしていきなり4人も新生児を抱えたベルガモット教授…
っていうか、うちで新生児4人育てるのかあ…
賑やかになりそうだなぁ。
俺は一応先生に聞く。
「…4人いるって、知ってました?」
「いや、2人か3人か、今まで確信が持てなかったくらいですよ。心音の種類がね、3に聞こえたり2に聞こえたり、どっちだろうな…って、ずっと考えてたんですよ、これでも」
「それで人数を敢えて言わなかったんですか?」
「ええ、まあ…ですがルース様こそ、産湯もベッドも4つずつ用意されてたじゃありませんか?」
「胤候補が4人いるんで……何となくです」
そう、完全に当てずっぽうというか、まあ4つあれば3でも2でもいけるだろう…くらいの感覚で。
後宮のお医者さんは言った。
「産科全体から見ても、4人は非常に珍しくて…」
「…論文にしたい?」
「正直」
「お気持ちお察しします」
産むなら全員の子を産んでやりたい、なんてベルガモット教授は話してたけど…
こんな無茶苦茶、ホントに起きるんだなあ。
「隠して産む方を選択して…良かった」
「そうですねえ」
俺はふと思う。
あの時、堕胎も選べる状況だったら?
こっそり堕胎をしに行って、結果4人もの子どもを無にしてしまったと分かったら…?
この光景は見られなかったかもしれない…
結果論では、あるけれど。
俺はベルガモット教授たちのほうを見た。
「産んでくれて…ありがとう」
「ありがとう、セド」
「うん…おれも、産んで、良かった」
悪法もたまには仕事をするらしい。
……
ゆうて結果オーライでしかあれへんがな!!
あほか!
何を美談にしとんねん!!
「まあでも、今回だけは…ね」
しゃあないから、許したろ。
47
あなたにおすすめの小説
お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!
MEIKO
BL
本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。
僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!
「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」
知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!
だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?
※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。
転生したらBLゲームのホスト教師だったのでオネエ様になろうと思う
ラットピア
BL
毎日BLゲームだけが生き甲斐の社畜系腐男子凛時(りんじ)は会社(まっくろ♡)からの帰り、信号を渡る子供に突っ込んでいくトラックから子供を守るため飛び出し、トラックに衝突され、最近ハマっているBLゲームを全クリできていないことを悔やみながら目を閉じる。
次に目を覚ますとハマっていたBLゲームの攻略最低難易度のホスト教員籠目 暁(かごめ あかつき)になっていた。BLは見る派で自分がなる気はない凛時は何をとち狂ったのかオネエになることを決めた
オチ決定しました〜☺️
※印はR18です(際どいやつもつけてます)
毎日20時更新 三十話超えたら長編に移行します
メインストーリー開始時 暁→28歳 教員6年目
凛時転生時 暁→19歳 大学1年生(入学当日)
訂正箇所見つけ次第訂正してます。間違い探しみたいに探してみてね⭐︎
11/24 大変際どかったためR18に移行しました
12/3 書記くんのお名前変更しました。今は戌亥 修馬(いぬい しゅうま)くんです
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話
屑籠
BL
サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。
彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。
そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。
さらっと読めるようなそんな感じの短編です。
同室のアイツが俺のシャワータイムを侵略してくるんだが
カシナシ
BL
聞いてくれ。
騎士科学年一位のアイツと、二位の俺は同じ部屋。これまでトラブルなく同居人として、良きライバルとして切磋琢磨してきたのに。
最近のアイツ、俺のシャワー中に絶対入ってくるんだ。しかも振り向けば目も合う。それとなく先に用を済ませるよう言ったり対策もしてみたが、何も効かない。
とうとう直接指摘することにしたけど……?
距離の詰め方おかしい攻め × 女の子が好きなはず?の受け
短編ラブコメです。ふわふわにライトです。
頭空っぽにしてお楽しみください。
転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが
松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。
ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。
あの日までは。
気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。
(無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!)
その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。
元日本人女性の異世界生活は如何に?
※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。
5月23日から毎日、昼12時更新します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる