当て馬にも、ワンチャンあってしかるべき!

紫蘇

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学園6年目

出産狂騒曲

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出産シーン注意。
駄目な方は読まなくても大丈夫です!

==================

「うっ…い、いぃ、いた…っ」
「大丈夫、落ち着いて、教授!」
「さ…っ、さけっ、ああっ!」

王都へ着いて次の日。
俺が見舞いに行ったその時を狙ったようにベルガモット教授が産気づいた。

「予定日ぴったりってこと、あります!?」
「いや、ままある事です、準備は出来てます!」
「いたぃ…っ、うっ、くっ…う!」

陣痛の痛みに呻く教授のお腹はパンパンに膨らんで、かなり大きい。

「ルース様、産湯の準備お願いします!」
「分かりました、すぐに!」

分娩室に変えた父さんたちの寝室は、準備万端。
バスタオルも山ほど用意したし、産湯の桶と新生児用ベッドは念のために4つずつ。

先生は「多胎」というだけで人数に言及しなかったので、双子より多いのかな…と思って、一応…。
父親候補も4人いることだし、念の為?

「いっ…く、うんっ…ふ」
「教授、リラックス、リラックスして…」

何とか自力で分娩台に上がった教授の服を脱がせて大きなバスタオルを体にかける。
先生が言う。

「順調にヘソが開いてきてる!」
「ええっ、もう!?」
「かなり早いですけど、想定内です!!
 ベルガモットさん!楽な姿勢で、いきんで!」
「うっ……うーーっ、ううっ……!ふぎっ!」
「はい、鼻から吸って、口からゆっくり吐いてー…
 すうっ、はあーーー、すうっ、はあーーー」
「す、す、は、はああ、す、すっ、はあ、あ」
「はい、ゆっくりおなかに力いれて…」

この世界では、ラマーズ法じゃなくて痛みを逃す用の呼吸が採用されているらしい。
2回呼吸をしていきむ、を繰り返し、ゆっくりヘソが裂けてくるのを待つのだ……

「ルース様、背中に支えを!」
「分かりました!」

ヘソから子どもが出てくる事もあって、横向きが基本姿勢。
その姿勢を支えるのに専用のクッションを背中に入れ、そのクッションがズレないように、分娩台に無数に空いている穴へ杭を立てる。
こうすることであらゆる体勢にフィットするクッションストッパーを作るのだ。

ベルガモット教授は俺の手を掴んで言う。

「る、るー、いたい、いたいよぅ」
「大丈夫、大丈夫だからね、息をしましょうね、はいっ、すうっ、はあーーー、すうっ、はあーーー」
「すす、は、はああ、すっ、はああ」

一緒に呼吸をしながら、教授の肩をさする。
本当は伴侶がやるべきだと思うんだけど、やつらの人数が多すぎるので外で祈らせている。

「もう少しですよ!」
「うあああ!!」

「頑張って、教授!!」
「いいいいいい」

ベルガモット教授が必死でいきんだ、その時。
ぶしゃっと羊水が溢れる音がして、

「出た!1人目!」
「はい、バスタオルOKです!」
「渡しますよ!」

先生の手から生まれたての命をバスタオルで受け取り、落とさないようにバスタオルごと産湯を入れた桶へ。
優しくお尻から漬けると、

「ふぎゃあー!」
「おー、よしよし…元気な子だ!」

羊水を洗い流し、バスタオルを引いたベビーベッドへ乗せ、しっかり湯を拭きとったらそっとバスタオルを抜き、寝かせる。

「次!」
「はい!!」

急いで2人目。
さっきと同じ手順で産湯からベビーベッド…

「次!」
「はい!?」

ちょっとまて。
何人出てくるの!?
えーい、バスタオル、バスタオル!!

「う、うう、ふううう…っ」
「えっ?つ、次!?」
「は!?4人目!?」
「4人目です!!」

待って待って。
そんなにいたなんて聞いてないんだけど!?

「先生!!もういませんか!?」
「いません!あとは胎盤が出るのを待ちます!」
「はい!」
「う…うう…っ、あ……」

いません!はいいけど…
4人!?4人って!!
混乱しながらも赤ちゃん達の様子を見る。
少し小さいけど、ふぎゃふぎゃ泣いている。

「頑張りましたね、ベルガモット教授!」
「素晴らしい安産でしたよ!!」
「う…、うん……、うっ……」

ずるり、と胎盤が出てくる。
出てきたのを見計らって、裂けたお腹にヒール。
休む間もなく先生が俺に指示を飛ばす。

「ルース様、初乳!初乳飲ませないと!
 杭抜いてクッション取って!ベッドの頭上げて!」
「はい!!」

あああもう!
4人って、誰が誰の子なんやーーーー!!
どうなってんねん!!

***


…怒涛の出産が終わり、ポンコツフォーを呼びに行こうと扉を開けると雪崩れる様に4人が入ってきた。
4人は真っ直ぐにベルガモット教授に駆け寄り、涙を流して無事を喜んでいる。

「セド~!セドが無事で良かった~!」
「大丈夫セド!?痛かった?痛かったね?」
「頑張った!頑張ったよぉおお!」
「セド~!!」

…掛け値なしに美しい光景だと思う。
4人の労いを受けて、ベルガモット教授は言った。

「ほら…、1人ずつ、公平に…、だろ、
 頑張ったん…だから、な…」

…何だか聞き捨てならない事をベルガモット教授が言った気がする。
本人は4人って分かってたような口ぶり…

まっ、いいか。
今は赤ちゃんが全員無事に生まれてきたっていうだけで充分だよね。

「わあ、ほんとだ…!」
「か、かわいい…!!」
「4人!?4人もいるの!?」
「うわーんセドおおお!有難う!!」

しかし、37歳にしていきなり4人も新生児を抱えたベルガモット教授…
っていうか、うちで新生児4人育てるのかあ…
賑やかになりそうだなぁ。

俺は一応先生に聞く。

「…4人いるって、知ってました?」
「いや、2人か3人か、今まで確信が持てなかったくらいですよ。心音の種類がね、3に聞こえたり2に聞こえたり、どっちだろうな…って、ずっと考えてたんですよ、これでも」
「それで人数を敢えて言わなかったんですか?」
「ええ、まあ…ですがルース様こそ、産湯もベッドも4つずつ用意されてたじゃありませんか?」
「胤候補が4人いるんで……何となくです」

そう、完全に当てずっぽうというか、まあ4つあれば3でも2でもいけるだろう…くらいの感覚で。

後宮のお医者さんは言った。

「産科全体から見ても、4人は非常に珍しくて…」
「…論文にしたい?」
「正直」
「お気持ちお察しします」

産むなら全員の子を産んでやりたい、なんてベルガモット教授は話してたけど…
こんな無茶苦茶、ホントに起きるんだなあ。

「隠して産む方を選択して…良かった」
「そうですねえ」

俺はふと思う。

あの時、堕胎も選べる状況だったら?
こっそり堕胎をしに行って、結果4人もの子どもを無にしてしまったと分かったら…?

この光景は見られなかったかもしれない…
結果論では、あるけれど。

俺はベルガモット教授たちのほうを見た。

「産んでくれて…ありがとう」
「ありがとう、セド」
「うん…おれも、産んで、良かった」

悪法もたまには仕事をするらしい。


……

ゆうて結果オーライでしかあれへんがな!!
あほか!
何を美談にしとんねん!!


「まあでも、今回だけは…ね」

しゃあないから、許したろ。
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