当て馬にも、ワンチャンあってしかるべき!

紫蘇

文字の大きさ
492 / 586
卒業後

【おまけの2】薬学、暗躍 ※微

しおりを挟む
「……出来ましたね、教授」
「ああ、ついに完成だ」

私はローズ王立学園薬学教授ブレティラ。
今ついにあの「王家の秘薬」が完成したところ!

「ふ、ふふ……」

シーマと2人でカメリアの王宮へ潜入し、宮廷薬師筆頭に目を付け仲良くなり、そこから何とか泣き落としで手に入れた王家の秘薬とその薬草の種……
そして、調合レシピ。

ここまでの苦労がこれで報われる。
ひと瓶10万…10本で100万、100本で1000万!!
これで私を信じてついてきてくれたシーマにも、贅沢をさせてやれるというものだ。

「あとは薬効を確認するだけだな…」
「しかし、どなたにお願いしたら……」
「うーむ……ふむ……えー……あっ!」
「当てがあるのですか?」
「補佐局に良さげなカップルが一組…」
「あっ…あー…」

そうだ、シャムロック家の長男と元公爵家の彼だ。

「…何か、申し訳無い気もしますが」
「殿下たちに何かあるよりは良いだろう」

そう、これは必要な犠牲なのだ。

倦怠期のカップルにとっても、
政略結婚のカップルにとっても、
私たちの幸せにとっても…!!

そう心に決め、私とシーマは補佐局の厨房へと足を踏み入れた……。

***

「…ミカ、何これ」
「さあ…メモには『治験へのご協力をお願いします』と書いてあるけど」

正室補佐局の建物の中で唯一、後宮として機能している特殊な一室。
ここにはシャムロック侯爵家の長男であるミカと、元公爵家のコーラスが暮らしている。
ミカは罪人として刑期が終わるまで、コーラスは保護対象として身の安全が確保できるまでここへ匿われている……という事になっているが、本人たちからしてみれば、これは単なる幽閉だ。

一生ここから出る事は叶わない…
ここから出るのは死んだときだ。

2人ともそう覚悟をしてここに居る。

そこへ夕食と共に一本の小瓶が届けられたのだ。
受け取った2人は当然それを訝しんだ。

「メモには他に何か書いて無いの?」
「ええと…『最初は3滴程度から始めて、体調が悪くならなければ少しずつ増やして下さい…』」
「何の薬かは書いて無いの?」
「カメリアに伝わる「秘薬」…だと」
「……へえ」

秘薬、という言葉に反応したのはコーラスだ。

「つまり、これで楽になれって事か」
「……楽になる?」

ちょっとお馬鹿なミカには、この言い回しがいまいちピンと来なかったらしい。
だからコーラスは笑いながらミカに言った。

「苦しまずに死ねる薬じゃないかって事」
「えっ…てことは、毒!?」

あのお人好しルースがそんな事をするだろうか?とミカは思ったが、コーラスは言った。

「あいつらの意思を汲んで動くような連中はいくらでもいるさ。
 バイオレット公爵家お抱えの諜報部ですら歯が立たないような凄腕の影がついてるくらいだ…
 証拠が残らないような毒なんていくらでも用意できるんだろうよ」
「なっ……!」

ミカは憤った。
死ねと言うなら死刑にでも何でもすればいいのに、なぜこんな回りくどいことをするのか、と。
要するに彼らは傷つきたくないのだ…卑怯者め!

「だったらこんなもの!!」

彼は小瓶を掴んで、床に叩きつけようとした。
しかしそれをコーラスは制止した。

「飲まないなら、食事に混ぜて出されるだけさ。
 自分で死ぬか殺されるか選ばせてやる、ってやつじゃないの?」

ミカは固まった。
悔しくて切なくて堪らなくて、小瓶を握りしめた。

「…その薬貸して、ミカ」
「だ、駄目です!」
「最初は3滴からって事は、3滴じゃ死なないって事だろ。
 どうせ僕は死ぬまでここから出られないんだ…
 それだけの事をしてきたからね」
「で、でも、だめです…」

ミカは禁じられた敬語でコーラスを止めようとする。
そんなミカにコーラスは告げる。

「『ミカ、僕にその小瓶を渡せ』」
「え、あっ、あ…っ、うっ、」

闇魔法の「命令」だ。
短時間ではあるが強い力で相手を操る事ができるそれに、ミカは対抗できない…

そもそも彼は水属性しか持ってないのだ。
闇魔法は魔道具の力を借りてただけ。
その魔道具も、この前吊るされた魔導師副長から『コーラス様の為に使え』って渡されただけ……。

だもんだから、ミカの手は本人の意志に反してコーラスへ小瓶を渡してしまう。

「これ一本分飲み切った時に死ぬ。
 そういう事だろ…!!」
「コーラス様っ!?やめてください!!」

コーラスはその瓶を開け、一気にあおった。

つまり……

全部、飲んだ。

飲んで、しまった。

「は…これで、あいつらに少しでも、罪悪感を与えられるんなら…」
「コーラス様あ!!」

コーラスは縋るミカを振り切ってベッドへ行き、これから迫る死を迎える為にそこへ横たわった。

「はっ、これで、あいつらの心に傷を負わせられるなら、僕は、何だって……っ……。
 ……っ、……え……?」

心拍が少し早くなる。
身体が火照り、肌の感覚が敏感になり…

「は…っ、あ……」
「コーラス様!?しっかりして!!」
「な、んだ、これ…っ、あ、つい…な、ん…あっ」

コーラスの股間は勝手に張りつめていた。
身体を動かすたびに服が肌に擦れて、そこからえも言われぬ感覚が駆け巡る。

ようやく、コーラスは自分の間違いに気づいた。

「み、かぁ…、これ、どく…じゃな…」
「コーラス様っ!?」
「あっ…んっ、や、んっ……あっ、」
「ま、まさかこれ…媚薬…!?」

そうなのだ。
教授はメモに「媚薬」という言葉を書かなかった。

いや、書けなかったのだ。

だって媚薬はまだご禁制なんだもん。

もしメモが見つかったりしたら……。

…仕方ないじゃん!!


薬学コンビの思惑はどうあれ、媚薬に耐性のないコーラスには我慢など出来るはずもない。

「ミカ…あつい、服…脱がせて」
「は、はい…!!」
「あっ、ん、優しく…っうっ!」
「は、はい!!」

 ・
 ・
 ・


……次の日の朝、彼らの様子を確かめようと薬学の2人がその部屋をそっと覗くと……


「ミカぁ…っ、もっと、おくぅ、欲し…っ、」
「はいっ…い、いくらでも…っ、くっ…」


薬効が強すぎたのか、未だ熱をもってくんずほぐれつする2人がいたのだった。
しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

転生したらBLゲームのホスト教師だったのでオネエ様になろうと思う

ラットピア
BL
毎日BLゲームだけが生き甲斐の社畜系腐男子凛時(りんじ)は会社(まっくろ♡)からの帰り、信号を渡る子供に突っ込んでいくトラックから子供を守るため飛び出し、トラックに衝突され、最近ハマっているBLゲームを全クリできていないことを悔やみながら目を閉じる。 次に目を覚ますとハマっていたBLゲームの攻略最低難易度のホスト教員籠目 暁(かごめ あかつき)になっていた。BLは見る派で自分がなる気はない凛時は何をとち狂ったのかオネエになることを決めた オチ決定しました〜☺️ ※印はR18です(際どいやつもつけてます) 毎日20時更新 三十話超えたら長編に移行します メインストーリー開始時 暁→28歳 教員6年目 凛時転生時 暁→19歳 大学1年生(入学当日) 訂正箇所見つけ次第訂正してます。間違い探しみたいに探してみてね⭐︎ 11/24 大変際どかったためR18に移行しました 12/3 書記くんのお名前変更しました。今は戌亥 修馬(いぬい しゅうま)くんです

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話

屑籠
BL
 サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。  彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。  そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。  さらっと読めるようなそんな感じの短編です。

同室のアイツが俺のシャワータイムを侵略してくるんだが

カシナシ
BL
聞いてくれ。 騎士科学年一位のアイツと、二位の俺は同じ部屋。これまでトラブルなく同居人として、良きライバルとして切磋琢磨してきたのに。 最近のアイツ、俺のシャワー中に絶対入ってくるんだ。しかも振り向けば目も合う。それとなく先に用を済ませるよう言ったり対策もしてみたが、何も効かない。 とうとう直接指摘することにしたけど……? 距離の詰め方おかしい攻め × 女の子が好きなはず?の受け 短編ラブコメです。ふわふわにライトです。 頭空っぽにしてお楽しみください。

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

処理中です...