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新婚旅行
WinーWinの反対
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アナガリス領最南端の村を出発し、視察をしながら車中泊を繰り返して4日。
ウィン兄・ディー兄の実家についたのは夕食前。
「遠い所をようこそ、両殿下」
「辺境伯様もご健勝で何よりです。
ウィンさんとディーさんにはいつもお世話になっております」
「短い間だが世話になる、宜しく頼む」
着替えを運び込んで身支度を整える。
今日は晩餐会…ダンスがなくて良かった。
***
アナガリス辺境領には、ウィン兄とディー兄の他に2人のいとこがいる。
4人も子どもがいたら後継者争いが起きそうなもんだけど、ここは今の所そんな心配は無し。
何でかって言うと、「本家と分家で立場に優劣がない」からだそうだ。
辺境伯という地位自体は長子相続。
だけど一族で手分けしてこの広い辺境領を治めている関係上、辺境伯1人では大したことは出来ない。
全領地に関わることは一族会議で決める。
……そういう慣習があるから、一族全員の立場が平等になりやすいそうだ。
「つーか、辺境伯を継いだからって何か旨味があるかって話なんだよなぁ」
「無駄にデカイ屋敷が付いてくるだけだからな…」
「維持費エグいからねー」
「そりゃ税金は管理してるが、それで贅沢するったって…なあ?」
「田舎すぎて、金を使う遊びも無いしな!」
「「ははは!!」」
…うん、諍いは無いに限る。
今日のメイン料理であるヤギのミルク煮込みを食べながら、俺は遠距離通信用魔道具を売り込めないかなと思ってアナガリス伯に言った。
「アナガリス領って広いですよね。
ほうぼうの村からの連絡が大変なのでは?」
「いやいや、そんなことはありません。
標高が高いので馬車道は大きく九十九折になっていますが、馬だけで来るのならもっと早く来れます」
「確かに、右に左に…って感じでしたね」
アナガリス領は広大な山の斜面にある。
道と道の間には森林や草原、九十九折の両端には村があり、段々畑が広がっている。
つまり、この斜面のおかげでアナガリス領の馬は山を走れる力がつくんだな。
「上の村と下の村を繋ぐのは、やっぱり馬しか無いんですか?」
「そうですね、まあ物品のやりとりは行商人が居ますから。
ただ、問題はダンジョンでね…」
「えっ、ダンジョン…何でまた?」
領主のアナガリス伯は続けた。
周りの人は「また始まった…」って顔だ。
どうやら長年の悩みらしい。
「うちのダンジョンは高い山の中腹にあるので、最寄りの村とは馬で行き来するしかないんです。
そうなると、ダンジョンへ行けるのは馬を扱える冒険者だけ、しかも潜っている間の馬の面倒を見る人間も雇わなければなりませんし…とにかく金が掛かるので、冒険者は誰も来たがりません。
ですから現状ダンジョン内の魔生物の間引きは、年2回、わざわざ領軍を動かしておりまして…。
しかし国境警備の事もありますから、それほど多くの兵士を投入することはできません。
それで、物資を運んだり馬の面倒をみたりを、セリンセ商会に頼んでいるんですがね……」
するとここまで同行していたモロー君が言った。
「アナガリス伯、いつも当商会をご利用頂き、有難う御座います。
ですがはっきり申しまして、うちの商会もこの件は完全に赤字なんです。
アナガリス領にあるダンジョンを最奥部まで攻略するには3週間程度かかります。
ということはそれだけの物資を馬だけで運ぶということになるのですが、その間それだけの数の馬をずっと置いておける場所はありません。
というわけで積荷のない状態で沢山の馬を1往復させてまして、これが丸々赤字に…。
ルースさん、何とかなりませんか?」
「ええっ!?」
それを聞いてディー兄が眉をひそめた。
「ちょっと待て、セリンセもなのか?」
「積荷無しで馬を走らせるのは、単純に人件費の無駄になるんです。
あっ、でも、赤字だろうと必要な場所に物資を運ぶのが家業ですから!
気にしないでください、ちゃんと正規料金をお支払い頂いていますし!」
「それは知ってるけど…何だか申し訳ないな」
セリンセ家の物流部門は、前世で言うところの郵便局みたいなものだ。
手紙は距離に関係なく定額だし、荷物の配送料も算出方法がしっかり決まっている。
赤字を他人に転嫁できないようになってるんだ。
うーん困ったね。
ウィン兄が俺に言う。
「当然アナガリス家でも相当の負担なんだ。
ルー、何か良い考えは無いかな?」
「えっ…あーーー、うん…」
そう言われても、簡単に解決策なんか…
あっ!
「馬が走れる道はあるんですよね?」
「あるよ!」
「…えっと、こういうのはどうですかね?
ダンジョンと最寄りの村にこんな感じで頑丈なロープを渡して…」
ロープの端と端にトロッコを付けて、こう…ケーブルカー的なものを提案してみる。
「上のトロッコの荷物を重く、下のトロッコの荷物を軽くすることで、下のトロッコを引き上げる力を少なくすれば少ない馬でトロッコが引けます。
ただインフラ整備に相当額かかるから…」
「なるほど」
「俺はその辺の事に疎いんで…
モロー君、良い業者さん知らない?」
「だったら、うちで土木工事を頼んでる商会に聞いてみます!
うちからも多少融資できるかと!」
うーんさすが、頼りになるなぁ。
「そうだな…レールを敷くのと装置を作るのに金は掛かるが、これが上手くいけば農地でも役に立つかもしれないし…悪くない考えかもしれんな」
前向きに検討してみる、とアナガリス辺境伯が言って、さっそく一族会議を開こう…という事になり、具体的な装置の説明の為に模型を作ったりして一晩過ごした。
殿下はもちろん、ちょっと不機嫌になった…。
========
次回、ディー兄に新事実が!?
お楽しみに!
ウィン兄・ディー兄の実家についたのは夕食前。
「遠い所をようこそ、両殿下」
「辺境伯様もご健勝で何よりです。
ウィンさんとディーさんにはいつもお世話になっております」
「短い間だが世話になる、宜しく頼む」
着替えを運び込んで身支度を整える。
今日は晩餐会…ダンスがなくて良かった。
***
アナガリス辺境領には、ウィン兄とディー兄の他に2人のいとこがいる。
4人も子どもがいたら後継者争いが起きそうなもんだけど、ここは今の所そんな心配は無し。
何でかって言うと、「本家と分家で立場に優劣がない」からだそうだ。
辺境伯という地位自体は長子相続。
だけど一族で手分けしてこの広い辺境領を治めている関係上、辺境伯1人では大したことは出来ない。
全領地に関わることは一族会議で決める。
……そういう慣習があるから、一族全員の立場が平等になりやすいそうだ。
「つーか、辺境伯を継いだからって何か旨味があるかって話なんだよなぁ」
「無駄にデカイ屋敷が付いてくるだけだからな…」
「維持費エグいからねー」
「そりゃ税金は管理してるが、それで贅沢するったって…なあ?」
「田舎すぎて、金を使う遊びも無いしな!」
「「ははは!!」」
…うん、諍いは無いに限る。
今日のメイン料理であるヤギのミルク煮込みを食べながら、俺は遠距離通信用魔道具を売り込めないかなと思ってアナガリス伯に言った。
「アナガリス領って広いですよね。
ほうぼうの村からの連絡が大変なのでは?」
「いやいや、そんなことはありません。
標高が高いので馬車道は大きく九十九折になっていますが、馬だけで来るのならもっと早く来れます」
「確かに、右に左に…って感じでしたね」
アナガリス領は広大な山の斜面にある。
道と道の間には森林や草原、九十九折の両端には村があり、段々畑が広がっている。
つまり、この斜面のおかげでアナガリス領の馬は山を走れる力がつくんだな。
「上の村と下の村を繋ぐのは、やっぱり馬しか無いんですか?」
「そうですね、まあ物品のやりとりは行商人が居ますから。
ただ、問題はダンジョンでね…」
「えっ、ダンジョン…何でまた?」
領主のアナガリス伯は続けた。
周りの人は「また始まった…」って顔だ。
どうやら長年の悩みらしい。
「うちのダンジョンは高い山の中腹にあるので、最寄りの村とは馬で行き来するしかないんです。
そうなると、ダンジョンへ行けるのは馬を扱える冒険者だけ、しかも潜っている間の馬の面倒を見る人間も雇わなければなりませんし…とにかく金が掛かるので、冒険者は誰も来たがりません。
ですから現状ダンジョン内の魔生物の間引きは、年2回、わざわざ領軍を動かしておりまして…。
しかし国境警備の事もありますから、それほど多くの兵士を投入することはできません。
それで、物資を運んだり馬の面倒をみたりを、セリンセ商会に頼んでいるんですがね……」
するとここまで同行していたモロー君が言った。
「アナガリス伯、いつも当商会をご利用頂き、有難う御座います。
ですがはっきり申しまして、うちの商会もこの件は完全に赤字なんです。
アナガリス領にあるダンジョンを最奥部まで攻略するには3週間程度かかります。
ということはそれだけの物資を馬だけで運ぶということになるのですが、その間それだけの数の馬をずっと置いておける場所はありません。
というわけで積荷のない状態で沢山の馬を1往復させてまして、これが丸々赤字に…。
ルースさん、何とかなりませんか?」
「ええっ!?」
それを聞いてディー兄が眉をひそめた。
「ちょっと待て、セリンセもなのか?」
「積荷無しで馬を走らせるのは、単純に人件費の無駄になるんです。
あっ、でも、赤字だろうと必要な場所に物資を運ぶのが家業ですから!
気にしないでください、ちゃんと正規料金をお支払い頂いていますし!」
「それは知ってるけど…何だか申し訳ないな」
セリンセ家の物流部門は、前世で言うところの郵便局みたいなものだ。
手紙は距離に関係なく定額だし、荷物の配送料も算出方法がしっかり決まっている。
赤字を他人に転嫁できないようになってるんだ。
うーん困ったね。
ウィン兄が俺に言う。
「当然アナガリス家でも相当の負担なんだ。
ルー、何か良い考えは無いかな?」
「えっ…あーーー、うん…」
そう言われても、簡単に解決策なんか…
あっ!
「馬が走れる道はあるんですよね?」
「あるよ!」
「…えっと、こういうのはどうですかね?
ダンジョンと最寄りの村にこんな感じで頑丈なロープを渡して…」
ロープの端と端にトロッコを付けて、こう…ケーブルカー的なものを提案してみる。
「上のトロッコの荷物を重く、下のトロッコの荷物を軽くすることで、下のトロッコを引き上げる力を少なくすれば少ない馬でトロッコが引けます。
ただインフラ整備に相当額かかるから…」
「なるほど」
「俺はその辺の事に疎いんで…
モロー君、良い業者さん知らない?」
「だったら、うちで土木工事を頼んでる商会に聞いてみます!
うちからも多少融資できるかと!」
うーんさすが、頼りになるなぁ。
「そうだな…レールを敷くのと装置を作るのに金は掛かるが、これが上手くいけば農地でも役に立つかもしれないし…悪くない考えかもしれんな」
前向きに検討してみる、とアナガリス辺境伯が言って、さっそく一族会議を開こう…という事になり、具体的な装置の説明の為に模型を作ったりして一晩過ごした。
殿下はもちろん、ちょっと不機嫌になった…。
========
次回、ディー兄に新事実が!?
お楽しみに!
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