当て馬にも、ワンチャンあってしかるべき!

紫蘇

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新婚旅行

エランティス領から旧プリムラ公爵領

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あの後、俺は「災禍の大穴」監視塔の側にテントを張る場所を整え、トイレとごみ処理場の二役をこなせるタイプのスライム牧場を作って、アレクさんとカレンデュラ先生が捕まえてきてくれたスライムを放ち、監視塔の方々に管理方法をレクチャーして、施設をプレオープンさせた。

この間およそ1時間半程度…
この早業も、魔法工法の進化のおかげ。

エルさまとジョンさんのスライム牧場作りは、魔法工法チームと古代魔法チームが手を組むことで進化し、今や用途に合わせて設計を選んで魔法スクロールを詠唱するだけになっているのだ。

「ルース先生が魔法を使うとき、数値指定する事がありますでしょ?
 あれをヒントにしたんですよ」

なんて言ってたけど、建物を立てる事自体を魔法にしつらえるって凄いよな。
ガーベラ先輩の作った建築用魔道具もバカ売れするかもしれない。

その後、冒険者ギルドで観光ガイドの常設依頼を出して、
エランティス邸に戻って報告をして、
魔石鉱山に寄って無属性魔石と白い石の判別用魔法陣を紹介し、
伝統あるますの養殖場に視察に行き…
移動ついでに販路拡大の為の生け簀輸送の実験をすることになった。

荷馬車には水を張った大きな樽が4つと14匹のます
積んだのは3日前だけど、まあまあ元気そう。

「川を利用して、生け簀船を走らせてみるとか…
 どうですかね?」
「ふむ…なるほど、それもありだな」

この世界では下水処理がどうなってるのか知らないけど川は綺麗に保たれている。
ソラン先輩曰く、水辺の魔物のおかげらしい。
魔物もこの世界の一員って事だな。

「ま、川から遠い場所もありますしね。
 この方法がうまくいけば、生け簀船輸送と組み合わせて…
 何か儲かりませんかね?」
「そうだな…ケーブルカーのついでに、セリンセ商会に言ってみるか」

そうやって仕事の話をしながらイチャイチャしつつ、馬車は進む。

次の目的地は旧プリムラ邸だ。

現在王領になっている旧プリムラ領の主産業は農業。
俺が良く使っているデニー産小麦の産地でもあり、現在スイーツ大国を目指して神殿の孤児院出身者たちがカフェを展開しようと奮闘しているらしい。
ちなみに西隣はデューイ君の実家があるハイペリカム領だ。

「さて、今日の宿は邸宅ホテル…だったか?」
「ええ…旧プリムラ公爵邸を改装して、ホテルとして営業をし始めたところです」
「ということはそこも視察…か」
「ええ、お昼は持ってきたますを調理して貰って、味が落ちてないかも確認しないと…」

馬車は美しい街並みを通る。
農地も広々としてて、果樹園では桜や桃が咲き誇って綺麗だった。
邸宅の近くにある湖は、夏になれば水遊びもできるらしい…

「…プリムラ領って、いい所ですねえ」
「馬鹿みたいな借金も30年で返せるくらいだからな」
「確かに」

なんせ120億だからな…
1年に元本だけでも4億ですぞ?
とんでもねーよ。

「それにしても、ホテルまであとどのくらいですかね…」
「ああ、すでにアレクが先触れに行っているから、もうすぐ着くはずだが」

もう馬車の中でゴロゴロするのも限界だ。
書類ばっか読んでて目がショボショボだし。
イチャイチャもちょっとマンネリ気味だし…

いや、アブノーマルな事がしたいわけじゃないよ?

ただちょっと外へ出たいというか…
外でデートがしたいっていうか。

「新しい部屋着、買いに行きたいな…」
「ねやぎ?」
「へやぎ!!」

それ出発前にしたやり取りやないか!

そんなんまでマンネリにならんでええねん!!


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