当て馬にも、ワンチャンあってしかるべき!

紫蘇

文字の大きさ
523 / 586
新婚旅行

道中、2人の会話

しおりを挟む
ファセリア領でウィン兄・ディー兄・モロー君・御者さんの4人と合流し、テナチュール領、ジェンティアナ領、ベルガモット領…と来て、間に鉱山都市を挟んでからの大神殿。

テナチュール家では、伴侶の方から「今までの非礼と無礼をお詫びしたい」と頭を下げられて慌ててみたり、フィーデ君の弟と一緒にご本を読んでみたり、幼少時教育について議論したり。

ジェンティアナ家では、ご当主から神官長の幼少期の話を聞いたり、神殿とタッグを組んでお洒落雑貨店を展開させたい話を聞いたり、陶芸用の窯を作ってみたり。

ベルガモット家では、教授が5~8人目を産んだ話を聞かされて白目を剥いてみたり。

ベルガモット・パパさんズは
「ベルガモット家を継ぐ者として、本来なら産ませる側であって欲しかったとは思いますがね」
と言いながらも笑っていて、この歳にしてとても柔軟な思考の持ち主なんだろうな…と思ってみたり。

お二人とも、教授が同時に4人も伴侶を得る事に対して、それほど抵抗なく受け入れているというか…
「昔から、彼らは『セドリックを共有したい』旨、私どもに宣言しておりましたのでな」
「ええっ!?」
「我々も驚きはしましたが…彼らはセドリックのどこにあれほど焦がれたのでしょうなあ。
 突出した才があるわけでも無いのに…」
「ええっ、あれほど何でもこなされるのに?」
「はは、あれはただの器用貧乏ですよ」

って、あれは器用貧乏ってレベルじゃないと思うんだけどな…
なんて、恐ろしい話を聞かされてみたり。

そして鉱山都市ではいつも通りの視察と、白い石のお土産を大量に持たされてみたり…。



ちなみに大神殿の東はリリー領で、その隣は巨大ダンジョン「古龍の墓」擁するフリージア領なんだけど、今回はフリージア領の視察はしない。

だって、結婚式の前に、陛下が「お前んちの代わりに立て替えたユーフォルビア家への養育費を支払うまで、王家はフリージア家と一切の関わりを持たない」って通達したのに、まだ支払わないんだもん。

こういう時の為に、ローズには「婚外子に対しても、自分の子であると認めた場合には養育費の支払い義務が生じる」って法律があるねんで?

自分らが作った法律よりずっっと昔から。

せやのに、仮にも元法務大臣が「親権が無いから支払いの義務はない」とか書面にしてきよる場合か?あ?
アホか?
それともつける薬の無い方か?お?

「…フリージア公、これでよく今までやってきましたね?」
「ああ、伴侶が非常に優秀でな、息子を連れては領内の視察をしたり、法務の仕事を見せたりしていたそうだ。
 彼のおかげで、ラミー・フリージアはそれなりに優秀なのだな。
 まあ、とっくに離縁して母国へ戻っているが」
「あっ…あー…それで…。
 もう強制執行したほうが早いのかなぁ」

先輩のほうは、説明すればすぐに分かってくれそうだしな。

「ま、私腹を肥やすのに随分と熱心だったようだが、隠居すれば金も要らんだろうしな」
「ですよねー」

払うつもりがないんなら、ヒデル兄さんが結婚するときに「実の父親」面して出てくんなや。
ほんでホスタまでタダで行こうとすな。
金を払え金を!!

「蓄財の半分じゃなくて、全額いったろかな…」
「随分とご立腹だな、ルース」
「だって、金払いの悪い金持ちって腹立つんですもん」
「確かに…支払うべき金を払わんのはな」
「支払わなくていいように考える、の意味がおかしいんですよ。
 難癖つけて支払わないのは節約と言わないでしょ、普通」

予算オーバーだったら、最初から買わない、してもらわない。
それが節約やん。
買うけど払わん、やってもらったけど払わんって、タカリと一緒やろが!!

「そういう連中が、貴族全体に対する国民感情を悪くするんですよ!?
 市場に買い物に行って貴族ってバレた時の大変さを、奴らに身をもって知って貰いたいですね!!」
「…そうだな」

それまでの行いで「貴族扱いしなくていい奴」認定されるせいか、アホほど忌憚のない苦情を頂くんやぞ!
どこの家は支払いがまだやとか、どこの家が商品に難癖つけて支払いを拒否しよったとか!

そうやって俺がプリプリ怒っていると、殿下が静かな声で言った。

「…もしかしてルース、その家名を記録して残していたりするか?」
「してますよ!
 忘れないように手帳に書いて帰れってみんなが言うんだもん!!」
「…ほほう」

そりゃあもう、家の名前から金額から何買ったかまで…まで…

……あれ?これってまさか…

「ふふ…ククク」
「あの、殿下…?」
「また1つ、弱みを握れる名簿が出来たな?」

…うん。
やっぱ、そうなるよねえ…。

しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

王道学園のモブ

四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。 私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。 そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

発情薬

寺蔵
BL
【完結!漫画もUPしてます】攻めの匂いをかぐだけで発情して動けなくなってしまう受けの話です。  製薬会社で開発された、通称『発情薬』。  業務として治験に選ばれ、投薬を受けた新人社員が、先輩の匂いをかぐだけで発情して動けなくなったりします。  社会人。腹黒30歳×寂しがりわんこ系23歳。

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました

西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて… ほのほのです。 ※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

処理中です...