当て馬にも、ワンチャンあってしかるべき!

紫蘇

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執事と執事

今言う!? ~ルース視点~

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補佐局付きの産科医さんは優秀だ。

その優秀さをもってしても、俺の予定日は測りかねる…
というわけで、明日早めに帰省…って言っても、徒歩10、…!

「っ…た、い、っ、あ」
「ルース!?
 ちょっと待ってろ、美容部から担架を…」

アルが離れの執事さんを呼ぶベルを激しく振る。

「だいじょぶ、そんな、あわてっ…!」

やばい。
前駆陣痛来た。
まだでも余裕が…っ、い、った、あっ…!

「こ、れ、あ、か、ん、や、つ、や…」
「ルース!大丈夫か、しっかりしろ」
「だ、い、じょぶ、まだ、出ない、から、多分」

その時、部屋の扉が開いて、執事さんと、ウルフレッド君と、王宮カフェに偶然居合わせたおじいちゃんが駆け込んできた。

「早く!美容部から、担架を!」
「かしこまりましてございます!!」
「ユーフォルビア家と医者にも!」
「行ってまいります!!」

殿下の執事さんが美容部へ走る。
ウルフレッド君も実家へ走る。
そしておじいちゃんもどこかへ走る。

「大変じゃ!ルースが、産気づいた!
 モーフィス!モーーフーーィス!!」

おじいちゃん…陛下呼んで、どうするんですか…っ!
産医さんの名前は、モーゼス、でしょっ…!

***

そんなこんなで、一回目より大騒ぎしながら実家へ戻り、分娩台に乗って何とか出産に漕ぎ着け…

「…お疲れ様だったな、ルース」
「うん…ありがと、アル…」

無事に双子が出てきて、初乳をあげて寝かせて、次は一人でおねがい…、と神様に祈る。

でも次産んだら5人か…
何人産んだら正解なのか、もう分かんなくなって来たな。

「自分の部屋へ移るかい?ルース」
「うん…そうする」

とにかく今はゆっくり寝たい。
今回は、安定期に入ってからほぼ毎日オーラルセックスして胎児に魔力をあげ続ける事で、2ヶ月程度妊娠期間を短くできた。

「何かの役に立てば良いんだけど…」
「ルースは元々の魔力量が普通じゃないからな」
「そうだよね…」
「だが、毎日ちゃんとそうした触れ合いがあるのは嬉しい」
「そっか……なら、良いや」

ま、今すぐでなくてもそのうち…
何でも記録しておくのが大事だからね。

そうこうしてるうちに分娩室の扉がノックされ、リチャードさんの声がした。

「殿下、坊ちゃま、お部屋のご用意が出来ました」
「ああ、分かった」

アルが返事を返して、俺を抱き上げる。
リチャードさんが計ったように扉を開ける。

「お子様のベッドもすでに運び入れております。
 身体測定と検査の後、すぐにお連れ致します」
「うん…助かるよ」

そうしてアルに運ばれて俺の部屋まで行くと、扉の前にはウルフレッド君がいた。

「両殿下、お待ちしておりました」
「うむ」

今度はウルフレッド君が扉を開けてくれる。
アルが俺をベッドの上に降ろすと、リチャードさんが薄手の掛け布団を持って来て掛けてくれる。

「お茶はこちらに…常温で御座います」
「ありがと…助かる」
「他にご希望が御座いましたら、こちらから選んで頂いて」
「あれ、いつの間にメニュー表が…」
「産院としてご活用頂く上では、サービスの向上も必要かと」
「なるほど」

いつの間にかうちの実家、恋愛相談から出産まで承ります!みたいな恐ろしい家になってきたな。
元々の家業が大規模になって還ってきてる感じ…

「こちら、朝食のメニューでございます」
「あら、胃に優しそう…これ、リチャードさんが作ってくれるの?」
「いえ、今回は…サンセベリア様が」
「えっ?」

ウルフレッド君が?なにゆえ?
俺は妙な予感とともに2人の顔を見比べる。

リチャードさんは微妙な引きつり笑顔。
ウルフレッド君はハニカミ笑顔。

えっ何どういう事……?

するとウルフレッド君が、モジモジしながら言う。

「もっとリチャードのお手伝いが出来るように、最近料理を習っているんです」
「へえ…」
「もっと学んで、もっと料理が上手くなって、ゆくゆくはユーフォルビア家のシェフになろうかと」
「……は?」

俺の動揺をよそに、ウルフレッド君はさらに言う。

「3年後を目処に、王宮執事の職を辞してこの家でリチャードと共にユーフォルビア家を守りたいと…」
「待って待って待って」

何ちゅうタイミングで退職を切り出しとんねん!?
出産直後に聞く話じゃねー!!

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