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執事と執事
リチャードとウルフレッド ※
しおりを挟むあの日以来、風呂の時間になると毎日ウルフレッドの奴がやってくる。
「リチャードさん、お手伝いに参りました!」
「サンセベリア様…王太子正室付官吏の仕事は」
「ルース様が殿下と寝室へお戻りになられましたら、業務終了ですので」
「…書類整理は」
「それもワルド様とルディ様が自室へお戻りになられたら業務終了です」
何をそんな元気いっぱいなんだこの馬鹿。
俺は毎日げんなりだわ。
色恋沙汰はもうしんどいのよ、若くねーから。
「業務終了後は時間が有り余ってしまって…
何をしていてもリチャードの事しか考えられないんです」
「しれっと呼び捨てしないでくださいサンセベリア様」
「リチャード、私の事はウルフと呼んで、と…」
「私はまだ仕事中でございますので」
はぁ…俺ってこんなに押しに弱いタイプだっけ。
気が付いたらズルズル…もう3ヶ月だぜ。
そうこうしてるうちにアレク様も無事にご出産なさって、今は初めての子育てにトルセン様共々必死でいらっしゃる。
ルース坊ちゃまの予定日はどんどん早まって来週には出産で屋敷へお戻りになるというし…。
妊夫の魔力量が多かったり、妊娠中も仲良しする回数が多いと早くなるとは聞いたが、まさかこれほどとは思わなかったな。
「しかし坊ちゃまもギリギリまでお仕事とは…」
「はい、他にも妊娠中の口腔性交の頻度がどのように出産に影響するのか検証されたいと…」
「!?」
坊ちゃま…
この馬鹿に何をお話になっておられるのです!
そんなあけすけな…とはいえ坊ちゃまだからなぁ…。
「まったく、全部お仕事になさるのだから…
困ったお方です」
「ユーフォルビアの責務だと仰っておられました」
「そうでしたか」
坊ちゃまはユーフォルビアを断絶させる、と仰ったけれど、その叡智は必ず引き継ぐ…というご意志をしっかりとお持ちになっておられるのだ。
やはり尊敬すべきお方…
「リチャード、私、子どもが出来ても大丈夫ですよ」
「急に何の話です」
「今妊娠すれば、アレク様が育休から復帰されるタイミングで産休に入れば、ルース様にご迷惑をかけずにすみますから…」
そういって顔を赤らめてモジモジするウルフレッドに、なぜか腹が立つ。
「そういう事を聞いてるんじゃありません」
「では、どういう事ですか?」
「あなたのお父上達がどう思うか、考えた事は無いのですか?」
自分の孫の父親が元男娼で、しかも20歳近く年上って…いくら何でもあり得なさすぎるだろ。
髪型変えて誤魔化してるが、貴族だって何人も相手にしてきてんだぞ。
今まで誰も何も言わないのは、ひとえに自分の下半身事情を気にしてるのと…
俺が「ユーフォルビアの執事」だからだ。
貴族どもの下世話なスキャンダルを握ってる家の執事が元娼夫、って事実は、憶測を腐るほど生んでくれるもんだからな。
そんなのに、こんな前途洋々の若者が…なあ。
いくら何でも、俺にも良心ってものがある。
それなのにウルフの奴は真っ直ぐな目で俺を見て言うんだ。
「父の事は関係ありません!
もしこの事で勘当されたとしても、今は平民でも能力があれば王宮官吏に登用される時代ですし」
「……」
「リチャードも、私の事を優秀だと言ってくれたじゃありませんか。
私は男爵位から降りたとしても今の地位に留まれる自信はあります」
…ったく、何をキラキラした目で…。
しょうがねえ、飽きるまでは遊んでやるか。
「仕方ありませんね。
さっさと風呂掃除に行きますよ」
「はい!」
ったくもう…
何でこんな事になったんだかなぁ。
***
風呂場でキレイにした後、俺の部屋へウルフを招き入れる。
後ろから抱き抱え、軽く耳朶を舌で転がす。
股間に伸びたウルフの手に指を絡めて阻止し、空いたほうの手で鎖骨のあたりをくすぐる。
「あっ…リチャード、そこ…」
「違う場所をして欲しい?」
「ん…ふ、いじわる…」
ウルフは熱い息を吐きながら言う。
「んっ…ふぅ、リチャード…」
「何だ?ウルフ」
「けっこん、しよう」
「だめ」
結婚なんかしたら、何に狙われるか分かったもんじゃない。
俺はお前を守ってやれるほど強くないんだから…
「じゃあ、こども、ほしい…」
「だめ」
子どもなんか作ったら、その子どもまで狙われるかもしれないだろ?
別に武器持って襲うだけが傷つける手段じゃない。
根も葉もない噂をたてて、生き辛くする事だって…
「りちゃーどの、こと、つなぎ…とめたい」
「そんな事で子ども作っちゃだめだろ」
「でも」
俺は図太いから良いけれど、お前はそうじゃない。
あれだけ端々に目が利くんだから、根が繊細なんだって事は分かる。
「それに、今子どもが出来ても、その子が成人するまで俺は生きられない…かも、しれない」
「そんな、リチャード…」
「片親の子がどれだけ苦しいか…
不幸な子どもは少ない方が良い、だろ?」
「あっ…ん、でも、あなたの面影を、この世界にのこしたい…それじゃ、だめ…っ?」
「駄目だ。
そんな親の都合で産んで…お前も、不幸になる」
もうこの話は終わりだ。
だからこんな優しい快感じゃなくて、もっと脳天に響く場所に手を伸ばす。
「あっ、あ!…ん、ふぁっ」
「きもちいい?」
「あっ、ん、りちゃ、あっ、ひ!」
右手でサオを握って、左手でタマを揉んでやる。
これでギリギリまで追い詰めた後は…
「大きくなったな、ウルフ…ここも」
「あ、やあっ…!ん…っう!」
思う存分、乳首も愛撫してやって…それから、次は…。
「り、ちゃ、ど、けっこん、して…っ!」
「だめだ」
…何度も結婚をねだりながら、ウルフは…
俺の手管に翻弄されて、果てる。
「ああっーーーー…!」
……
ぐったりして動かないウルフに、俺は言う。
「…愛してる、だから結婚はしない。
こどもも作らない。
それでも良ければ…俺と一緒に居て欲しい」
愛をかたちにしなくても、それでも信じられる愛でなきゃ…
俺は、受け入れない。
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