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王子様と皇太子殿下 1
北の猟犬達、城門の手前、城の庭で
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「急げ!」
浅い息を繰り返す小さな体を、引きちぎったカーテンでくるんで抱え、走る。
少し微笑んで見える顔とは反対に、身体はあまりにも酷く傷つき損なわれていて、早く治療をしなければと気が早る。
<もう少しで城の外へ出られる…!>
今、城の中では、あっちの国とこっちの国の兵隊が入り乱れての戦闘をしているところだ。
外へ出れば逃げ切れる確信がある。
目の前にいるやつを、
斬って、
蹴って、
投げて、
少しでも速く前へ進まなければ!
俺たちは、この小さな殿下を、助けるんだ。
小さな殿下、俺たちに希望をくれた領主様。
痩せた土地を、みんなと一緒になって、一生懸命手入れして、ついに小麦を実らせてくれた領主様。
中央の連中に奪われた、羊や馬がいる暮らしを、取り戻してくれた領主様。
飼ったこともなかった鶏や、豚や、牛を、俺たちに与えてくれた領主様。
北の領地を、豊かな土地に変え、飢えて死ぬ者を無くしてくれた領主様。
戦に出たけど何もできないまま死ぬ兵士を減らすために、たくさん俺たちを鍛えてくれた領主様。
「絶対に助ける、必ず……っ!」
返しきれてない恩がいくつもあるのに、ここで殿下の命を守れなければ……俺たちはどうやって北の領地に帰ればいいのか分からない。
「あっちだ!進路を確保!」
「任せろ!おらぁ!!」
帝国軍だろうがトーリ王国軍だろうが、自分たち以外は全部敵だ。
殺す、殺す。
殿下を苦しめたモノ、全部殺す……!
「殿下、もう、すぐですから……!」
城門が見えた。
もうすぐ、もうすぐだ。
「」
「-----止まれ!」
銀色の髪をなびかせた、一人の男が立ちはだかる。
この国の第3王子。
この国で一番偉くて、強いやつだ。
「北の猟犬ども…戦を放って何処へ行く?」
「知ったことか」
「邪魔をするなら殺す」
「ふむ、そうか。
ところでお前が抱えているそれは…何だ?」
「それ、だと?」
奴は侮辱の言葉を吐いた。
それ、じゃない、殿下だ。
俺たちの大事な…!
「まさか…それは」
「そこをどけ!!」
奴に向かって斬りかかる。
甲高い金属の音がし、
振り下ろした剣を弾き飛ばされ、
距離を詰められる。
「クロエ…?」
そうだ、俺たちの大事な、クロエ殿下だ。
「馴れ馴れしく呼び捨てにするんじゃねえ…っ」
「クロエ!!」
王子様は、俺を突き飛ばして殿下を奪い、抱いた。
「何しやが、」
「く…ろ、え…………」
俺が奴から殿下を取り返そうとしたその時、黒い何かが王子様から噴き出して、
「伏せろ!」
本能的に、俺たちは地面に貼り付いた。
奴の様子がおかしい。
奴の姿が、人間から歪んで、何か別のものになる。
何かをうめきながら、殿下を凝視し、唇を重ね…、
それから首筋に噛み付き……。
「何がしたい?」
「何でもいい、早く取り返さないと!」
俺達が体を起こそうとした瞬間、
王子様はがっくりと膝をつき、叫んだ。
「な…んで、何で……!?
何で治らん!!なんで救えぬ!?
何で…何で、何で!!!」
その途端、王子様から出た黒い何かは勢いを増す。
それは何か定めた目標があるかの様に飛んでいき、
「ギャアアア!!」
「ヒイィィィ!!」
人を生きたまま喰らい尽くす。
喰らい尽くしてまた飛んでいく。
阿鼻叫喚の地獄絵図……
俺達は伏せておく以外に、何も出来なかった。
浅い息を繰り返す小さな体を、引きちぎったカーテンでくるんで抱え、走る。
少し微笑んで見える顔とは反対に、身体はあまりにも酷く傷つき損なわれていて、早く治療をしなければと気が早る。
<もう少しで城の外へ出られる…!>
今、城の中では、あっちの国とこっちの国の兵隊が入り乱れての戦闘をしているところだ。
外へ出れば逃げ切れる確信がある。
目の前にいるやつを、
斬って、
蹴って、
投げて、
少しでも速く前へ進まなければ!
俺たちは、この小さな殿下を、助けるんだ。
小さな殿下、俺たちに希望をくれた領主様。
痩せた土地を、みんなと一緒になって、一生懸命手入れして、ついに小麦を実らせてくれた領主様。
中央の連中に奪われた、羊や馬がいる暮らしを、取り戻してくれた領主様。
飼ったこともなかった鶏や、豚や、牛を、俺たちに与えてくれた領主様。
北の領地を、豊かな土地に変え、飢えて死ぬ者を無くしてくれた領主様。
戦に出たけど何もできないまま死ぬ兵士を減らすために、たくさん俺たちを鍛えてくれた領主様。
「絶対に助ける、必ず……っ!」
返しきれてない恩がいくつもあるのに、ここで殿下の命を守れなければ……俺たちはどうやって北の領地に帰ればいいのか分からない。
「あっちだ!進路を確保!」
「任せろ!おらぁ!!」
帝国軍だろうがトーリ王国軍だろうが、自分たち以外は全部敵だ。
殺す、殺す。
殿下を苦しめたモノ、全部殺す……!
「殿下、もう、すぐですから……!」
城門が見えた。
もうすぐ、もうすぐだ。
「」
「-----止まれ!」
銀色の髪をなびかせた、一人の男が立ちはだかる。
この国の第3王子。
この国で一番偉くて、強いやつだ。
「北の猟犬ども…戦を放って何処へ行く?」
「知ったことか」
「邪魔をするなら殺す」
「ふむ、そうか。
ところでお前が抱えているそれは…何だ?」
「それ、だと?」
奴は侮辱の言葉を吐いた。
それ、じゃない、殿下だ。
俺たちの大事な…!
「まさか…それは」
「そこをどけ!!」
奴に向かって斬りかかる。
甲高い金属の音がし、
振り下ろした剣を弾き飛ばされ、
距離を詰められる。
「クロエ…?」
そうだ、俺たちの大事な、クロエ殿下だ。
「馴れ馴れしく呼び捨てにするんじゃねえ…っ」
「クロエ!!」
王子様は、俺を突き飛ばして殿下を奪い、抱いた。
「何しやが、」
「く…ろ、え…………」
俺が奴から殿下を取り返そうとしたその時、黒い何かが王子様から噴き出して、
「伏せろ!」
本能的に、俺たちは地面に貼り付いた。
奴の様子がおかしい。
奴の姿が、人間から歪んで、何か別のものになる。
何かをうめきながら、殿下を凝視し、唇を重ね…、
それから首筋に噛み付き……。
「何がしたい?」
「何でもいい、早く取り返さないと!」
俺達が体を起こそうとした瞬間、
王子様はがっくりと膝をつき、叫んだ。
「な…んで、何で……!?
何で治らん!!なんで救えぬ!?
何で…何で、何で!!!」
その途端、王子様から出た黒い何かは勢いを増す。
それは何か定めた目標があるかの様に飛んでいき、
「ギャアアア!!」
「ヒイィィィ!!」
人を生きたまま喰らい尽くす。
喰らい尽くしてまた飛んでいく。
阿鼻叫喚の地獄絵図……
俺達は伏せておく以外に、何も出来なかった。
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