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王子様と皇太子殿下 4
皇太子、友との再会を喜ぶ
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「カラス君!」
「ソラ君!」
あれから少し。
エース殿がソラ君に会わせてくれた。
お互いに駆け寄って、抱き合う。
「カラス君、ちょっと背、伸びた?」
「うん、ちょっとだけど、ね!」
「でもちょっと筋肉落ちた?」
「うん…ずっと寝てたから。
でも、義足もつけたし、これからまた体を動かそうと思って…そういうソラ君は、腕、太くなったね」
「あー、西の砦で薪割りばっかしてたから…」
二人で向かい合って、腕や体をお互い触ったりなんかして話していると、ソラ君の向こうから不機嫌そうな声がした。
「…2人は友だち同士、だよね?」
「そうだよ!」
「ソラ君、この人は?」
「この人はね…その…おれの恋人」
ソラ君がちょっとモジモジしながらそう言うと、不機嫌そうな声をかけて来た男が、急に機嫌を直したらしく、胸を張って、俺に自己紹介してくれた。
「そう、オレはソラの恋人の、ロウ。よろしく」
「ロウさんと、おっしゃるんですね」
「そう。ソラとお友だちの君は?」
「はい、自分はクロエと言います。
ソラ君からは、カラスと呼ばれています」
「東の辺境にいたときは、カラス君は偽名を使ってて、カラスって名乗ってたの。ね、カラス君」
「はい…皇太子ということが知れるとまずい、ということで、咄嗟に考えたものなのですが」
実はソラ君の髪の色から発想を得た、なんてことは黙っておくのが良さそうだ。
「本当の名前がわかってからも、癖でつい呼んじゃうんだよね…直したほうがいい?」
「そのままでいいよ!
だって、友達だし、あだ名ってことで」
ロウさんが大きな声で言った。
「そう、2人は友だち同士、だもんな!
特別な名前で呼ぶのも、あだ名なんだったら、友だちの証だもんな!仲良しの友だちの証!
でも、オレはお前のことクロエって呼ぶから!」
「もー、ロウさん、友だち友だちって、言い過ぎ」
「何だか照れます」
えへへ、と、ソラ君と二人で笑う。
最近の近況をお互い話す。
「クロエ君、今何してるの?」
「それがね、何と、あのシュン・コバヤシ先生の学園で、働いてるんだ!すごいでしょ。
ソラ君は?」
「今は馬の調教…だけど、剣を教えてくれっていう人が毎日来るもんで、断るのも面倒だから軽く手合わせだけしてあげたり…とか」
「ソラ教官は教える時も鬼、とか言われてそう」
「だってさ、剣をやるからには強くならないと、死んじゃうじゃない。
おれの優しさだよ」
聞けば、剣を教えてくれって来る人のほとんどは女の人なんだって。
「女の人が剣術やるのは、トーリじゃ普通なんだって。
痩せて綺麗な体を作ることからハマる人が多いみたいで、女の人が警備につかないといけないことも多いから、強い人はすごく稼げるんだってさ!」
そこから剣の話になって、そうこうしていると、ソラ君が言った。
「あのさ、久々に会ったし、軽くアレやる?」
「いいね」
ソラ君が、長い枝を2本、背中から取り出す。
アレやるつもりで持ってたんだって。
まあ、2人でやる遊びっていったらアレだもんね。
「いくぜ!」
「こいっ!」
2人でやる剣術ごっこ。
決着をつけないのがルールで、どっちかが疲れるまでずっとこれをやるんだ。
軽い枝だから、今の自分には丁度いいや。
------------
「これが遊び、とは…強いはずじゃのぉ」
いつの間にかエース殿が来ていた。
まだまだ、剣術ごっこは続いている。
「せっ!」
「ふんっ!」
ぱしぱしって枝の音が楽しい。
「さっきからずっとこれやってるんだよ」
「それでまだこの速さか…」
「目がいいのかな?」
「右目が潰れとるのに、右が見えとるような…」
もうそろそろ…腕が上がらなくなってきた。
「あー、もう、疲れた!」
「じゃあおれの勝ちだね!」
尻もちをついて降参した自分に、ソラ君は手を差し伸べる。
その手をとって立ち上がろうとしたら、エース殿が飛んできて、後ろから抱き上げるように立たせてくれる。
「義足をつけたばかりじゃろ、無理しおって…」
「いえ、この程度なら、まだ。
元々左でも剣は扱えましたので、問題は…」
「いかんいかん。先生にも言われたじゃろ、急にやりすぎると体に障ると」
そういってエース殿は自分を横抱きにしようとするので、ちょっと恥ずかしくなって
「や、あの、大丈夫…ですから」
とお断りした。
「エース様、カラス君は子どもじゃないんですから、そんな扱いしちゃ駄目っすよ」
「ぐっ…わかった」
エース殿は、ソラ君の言うこともちゃんと聞くみたいだ。この前まで敵だったのに…大人だなぁ。
「そういえば、ソラ君、エース殿に負けちゃったって聞いたけど…」
「あんなの偶然だよ」
「偶然じゃと?ならもう一回、馬上試合でもやるか?」
「いいっすよ。
リリの分そっちが大分優位ですけど、譲ってさしあげますから、いつでも」
…と、思ったけど、子どもっぽいとこもある。
不思議な人だな。
「お互い真剣じゃぞ」
「いいですよ、こっちももう死なないんで」
「おい、ソラ!」
エース殿が慌ててソラ君を止めるけど、どうしても気になったから僕はソラ君に聞いた。
「死なない?」
「うん、そうだよ。おれ、死なない体になったの」
「……えっ?」
「…あのね、カラス君、聞いて欲しいことが、あるんだ」
ソラ君が、改まったように自分に言う。
…何があったんだろ…。
「ソラ君!」
あれから少し。
エース殿がソラ君に会わせてくれた。
お互いに駆け寄って、抱き合う。
「カラス君、ちょっと背、伸びた?」
「うん、ちょっとだけど、ね!」
「でもちょっと筋肉落ちた?」
「うん…ずっと寝てたから。
でも、義足もつけたし、これからまた体を動かそうと思って…そういうソラ君は、腕、太くなったね」
「あー、西の砦で薪割りばっかしてたから…」
二人で向かい合って、腕や体をお互い触ったりなんかして話していると、ソラ君の向こうから不機嫌そうな声がした。
「…2人は友だち同士、だよね?」
「そうだよ!」
「ソラ君、この人は?」
「この人はね…その…おれの恋人」
ソラ君がちょっとモジモジしながらそう言うと、不機嫌そうな声をかけて来た男が、急に機嫌を直したらしく、胸を張って、俺に自己紹介してくれた。
「そう、オレはソラの恋人の、ロウ。よろしく」
「ロウさんと、おっしゃるんですね」
「そう。ソラとお友だちの君は?」
「はい、自分はクロエと言います。
ソラ君からは、カラスと呼ばれています」
「東の辺境にいたときは、カラス君は偽名を使ってて、カラスって名乗ってたの。ね、カラス君」
「はい…皇太子ということが知れるとまずい、ということで、咄嗟に考えたものなのですが」
実はソラ君の髪の色から発想を得た、なんてことは黙っておくのが良さそうだ。
「本当の名前がわかってからも、癖でつい呼んじゃうんだよね…直したほうがいい?」
「そのままでいいよ!
だって、友達だし、あだ名ってことで」
ロウさんが大きな声で言った。
「そう、2人は友だち同士、だもんな!
特別な名前で呼ぶのも、あだ名なんだったら、友だちの証だもんな!仲良しの友だちの証!
でも、オレはお前のことクロエって呼ぶから!」
「もー、ロウさん、友だち友だちって、言い過ぎ」
「何だか照れます」
えへへ、と、ソラ君と二人で笑う。
最近の近況をお互い話す。
「クロエ君、今何してるの?」
「それがね、何と、あのシュン・コバヤシ先生の学園で、働いてるんだ!すごいでしょ。
ソラ君は?」
「今は馬の調教…だけど、剣を教えてくれっていう人が毎日来るもんで、断るのも面倒だから軽く手合わせだけしてあげたり…とか」
「ソラ教官は教える時も鬼、とか言われてそう」
「だってさ、剣をやるからには強くならないと、死んじゃうじゃない。
おれの優しさだよ」
聞けば、剣を教えてくれって来る人のほとんどは女の人なんだって。
「女の人が剣術やるのは、トーリじゃ普通なんだって。
痩せて綺麗な体を作ることからハマる人が多いみたいで、女の人が警備につかないといけないことも多いから、強い人はすごく稼げるんだってさ!」
そこから剣の話になって、そうこうしていると、ソラ君が言った。
「あのさ、久々に会ったし、軽くアレやる?」
「いいね」
ソラ君が、長い枝を2本、背中から取り出す。
アレやるつもりで持ってたんだって。
まあ、2人でやる遊びっていったらアレだもんね。
「いくぜ!」
「こいっ!」
2人でやる剣術ごっこ。
決着をつけないのがルールで、どっちかが疲れるまでずっとこれをやるんだ。
軽い枝だから、今の自分には丁度いいや。
------------
「これが遊び、とは…強いはずじゃのぉ」
いつの間にかエース殿が来ていた。
まだまだ、剣術ごっこは続いている。
「せっ!」
「ふんっ!」
ぱしぱしって枝の音が楽しい。
「さっきからずっとこれやってるんだよ」
「それでまだこの速さか…」
「目がいいのかな?」
「右目が潰れとるのに、右が見えとるような…」
もうそろそろ…腕が上がらなくなってきた。
「あー、もう、疲れた!」
「じゃあおれの勝ちだね!」
尻もちをついて降参した自分に、ソラ君は手を差し伸べる。
その手をとって立ち上がろうとしたら、エース殿が飛んできて、後ろから抱き上げるように立たせてくれる。
「義足をつけたばかりじゃろ、無理しおって…」
「いえ、この程度なら、まだ。
元々左でも剣は扱えましたので、問題は…」
「いかんいかん。先生にも言われたじゃろ、急にやりすぎると体に障ると」
そういってエース殿は自分を横抱きにしようとするので、ちょっと恥ずかしくなって
「や、あの、大丈夫…ですから」
とお断りした。
「エース様、カラス君は子どもじゃないんですから、そんな扱いしちゃ駄目っすよ」
「ぐっ…わかった」
エース殿は、ソラ君の言うこともちゃんと聞くみたいだ。この前まで敵だったのに…大人だなぁ。
「そういえば、ソラ君、エース殿に負けちゃったって聞いたけど…」
「あんなの偶然だよ」
「偶然じゃと?ならもう一回、馬上試合でもやるか?」
「いいっすよ。
リリの分そっちが大分優位ですけど、譲ってさしあげますから、いつでも」
…と、思ったけど、子どもっぽいとこもある。
不思議な人だな。
「お互い真剣じゃぞ」
「いいですよ、こっちももう死なないんで」
「おい、ソラ!」
エース殿が慌ててソラ君を止めるけど、どうしても気になったから僕はソラ君に聞いた。
「死なない?」
「うん、そうだよ。おれ、死なない体になったの」
「……えっ?」
「…あのね、カラス君、聞いて欲しいことが、あるんだ」
ソラ君が、改まったように自分に言う。
…何があったんだろ…。
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