話が違う2人

紫蘇

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最後の学園生活

【王都帰還組】帰り道にて

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「皆、一人同行者が増える事になった。
 学園の生徒で、ラディア・リドティという」
「皆様、宜しくお願い致します」
「こちらこそ、よろしく頼む」

ギル王子の簡単な紹介とラディアからの簡単な挨拶が終われば、すぐに出発だ。
近衛特務隊はその名の通り、アルバトルスの精鋭たちだけで構成された部隊であり無駄を極力排除する傾向にあった。

「殿下、僕、どんな魔法が使えるとか、言わなくても大丈夫なんでしょうか」
「問題ない。共に戦ううちに理解するというのが、この部隊のやり方だ」
「でも、連携……」

ラディアは早くも、このエリート集団についていけるか不安になった。
一緒に戦う場面で自分がどうすればいいのか分からなさ過ぎる。
せめてもう少し説明とか、各個人の自己紹介とかあっても良さそうなものなのに。

そんなラディアにギル王子は優しく言った。

「ラディアの面倒は俺が見る。
 他の者もそれで承知している。
 だから、それほど怯えなくてもいい」

すると他の騎士から声が上がった。

「細かい事は先にパッセル殿から聞いている」

既に師匠から根回しがあったのだ。
パッセルは彼らとも共闘した経験があるため、簡単な会話で通じたものと見える。

「魔法はそれなり、と」
「回復魔法は少々、と」
「剣と体術は期待薄、と」
「そ、そうでしたか……」

魔法以外の評価が相当厳しい事に、ラディアは少し落ち込んだ。

「大丈夫だラディア。
 こいつらと同じぐらい剣や体術が使えるのは経験のある騎士ぐらいだ」
「……はい」
「見ていれば分かる。
 お前が途中まで同行した事のある騎士と彼らが、どのぐらい違うか。
 俺だって指揮を身だからな」

そう言ってギル王子はラディアに笑いかけ……

「2時方向、来るぞ!」

と一言号令をかけた。


***


日がすっかり落ち切った頃、ようやく特務隊は野営の為行軍を中断した。

「付いて行くので、精一杯でした……」
「はは、今日は一日乗馬の訓練だったな」

駿馬揃いの近衛特務隊は、とにかく移動速度が速い。
その駿馬から振り落とされないで着いてこられただけでも、充分頑張ったと言えるだろう。

「パッセルさんでも、速いと思ったのに」
「ああ、あの馬か?
 正直パッセル殿には、もう少し速い馬に乗って頂きたいんだがなぁ」
「だがあの馬には、ダンジョンを嗅ぎつけた実績がある」

隊員たちは、話しながらも手を止めない。
気が付けば何も手伝えないうちに野営の準備が整っており、ラディアは立場を無くす。

「すみません、何も出来なくて」
「問題ありません、本日は見て覚えて頂くつもりでしたので」
「明日から一緒にやっていこう、ラディア」
「はい……」

そもそも、初めて同行する人間が最初から役に立つ事など殆ど無い。
それこそ彼らに無い能力、例えば薬の調合や治癒魔法がある場合は別だが……

「僕、学園に戻ったら魔法を勉強しなおします。
 パッセルさんは戻ってこないけど……」

今日一日、見て気が付いた。
とにかく彼らは、魔物を発見してからの動きが速い。
それもそのはず、彼らは一人一人が手練れの剣士だ。自分が剣技で彼らに認められる事など一生無いと言える。
では魔法は、といえば、彼らは全員魔法剣を使いこなせる。
ただ、魔法単独で使用することは無い……

ラディアは何故だか、それがとても気になった。

一方、ラディアの一言に隊員たちは反応した。

「殿下、パッセル殿は学園を辞めるのですか?」
「漸く救助隊の育成に本腰を入れるのか……」
「だが学生を即戦力に育てられる人材が……」

やはりパッセルに学歴も成績も関係ないようだ。
彼が学生だから困る事、逆に学生だから助かる事について、話が盛り上がる。

「いや、パッセルは学園を辞めるわけではない。
 暫く学園に戻らず、西の辺境へ滞在するだけだ」
「ではその間、勉強会は殿下が?」
「そうなるな。
 だが、一人では厳しい」
「それで弟子を?」
「ああ、それがラディアだ」
「彼の魔法理論は生きる、と」

ラディアは自分の名前が出た事に驚いたが、それを隊員たちが全員納得しているのにも驚いた。
思ったより「パッセルの弟子」という肩書は強いらしい……

彼らほどの人間から、ならばギル殿下の横にいるのも当たり前…と思わせるぐらいに。

「そうだ、それ以外は外部講師や卒業生に頼れるしな」
「つまり時にはパッセル殿を招いて?」
「いや、長期休暇を利用して、西の辺境へ皆で行くのはどうかと考えている」
「なるほど、あそこのダンジョンの敵が一番強いですからね」
「では新人の特練も西で?」
「ああ、但し農閑期でな。
 西の国境砦の修復も進めるそうだから……」

既にパッセルが卒業した後の彼の使い道について、色々なところから話が上がる。

ラディアは、その事にある種の恐怖と尊敬を覚えた……。

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