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最後の学園生活
【西ルート隊】のんびり進行
しおりを挟む一方、新人騎士3名と素人魔法使い9名は、手練れの辺境騎士3名の指導を受けながら準備を整えた。
「準備で1日かかるな」
「新人ですからね、そんなもんでしょう」
そもそも、素人魔法使いは元々騎士でも何でもない。
災害救助隊に参加している者達から選ばれた、ずぶの素人である。
このまま連れて行くにはあまりに危険すぎるので、出発前に訓練を施さねばならない。
「エル殿、デラ殿、ベン殿。
折角の機会ですから、北の辺境騎士団の訓練に混ぜて頂いてください」
「はい!」
「出発は3日後です。
それまでしっかり皆さんと交流を深めてください、有事の際にはそのご縁が役立ちますから」
「はい!」
こうして新人騎士3人の事は辺境騎士たちに任せた後、パッセルは素人魔法使いたちに言った。
「今から3日間で、基礎をしっかり覚えて頂きます。
かなり厳しい内容になるでしょうが、頑張って付いてきてください」
「「はい!」」
そうして、出る幕を無くしたリュノ王子は……
「俺もパッセルの指導を手伝う。
しんどかったり、ついていけなくなったら、遠慮せずに俺に言うといい」
「「はい!」」
鬼教官パッセルを支える立場を自分で作りだし、3日間傍にいる権利を得た。
***
3日間の特訓を終え、ようやく西へ向かって17名の大所帯が西方面へ出発した。
特務隊とは別のルートで、国境と防壁の間にある街道を進んで行く。
「3日間、お疲れ様でした」
「ああ、パッセルもな」
素人から駆け出しになった魔法使いたちは、奇跡的に全員が馬に乗れた。
だから、少々斜めな道でも平気で進んで行ける。
「なるべく早めに休憩を取りましょう。
既に5回、戦闘しましたから」
「たった5回でか?」
「私がもう限界です。
練習の後、あれほどこき使われるとは」
結局、3日間の練習とは別に、困り事を解決するために駆り出されたりと休む暇も無かったパッセル。
夏にしか来てもらえないからと、北の辺境伯が下からお願いに来るのだ。
「高圧的に来られるのであれば、お断りもできるんですがね」
「ああも下から来られたんではなぁ」
北の辺境伯は、いい意味でプライドを捨てられる人間なのだ。
やりづらい相手である。
「じゃあ昼休憩は、目一杯休むといい」
「そうします」
メジロもなるべく体を揺らさずに走る。
決して駿馬ではないが、気遣える馬なのだ。
「ぶるる」
「ああ、ありがとうなメジロ」
ここから西へのルートは、少しずつ魔物が強くなっていく傾向にある。
レベル上げには丁度良いコースでもあり、最初のうちは新人と駆け出しだけでも充分に戦える。
「メジロ、どうだ。ダンジョンはありそうか?」
「ふるふる」
まだダンジョンも遠そうだ。
近衛特務隊が石持ち魔物と戦闘したのは西の端あたりだから……
とはいえ、北の辺境は領地自体が東西に長く広い。
これを調べ上げるのは中々に困難だ。
「次に砦が見えたら、そこで情報交換もしないと……」
「それは俺がやる。
パッセルは休んでいてくれればいい」
「そうですか、ではお任せします」
俺でも出来ることは俺に任せてくれればいい、とリュノ王子はパッセルに言った。
全てをパッセルがやらなくてもいい。
仕事は分担してこそだ。
それに……。
何とか結婚にこぎ着けたとしても「仕事で疲れてるからセックスしません」とか言われたら、持て余して爆発してしまう。
家事も炊事も自分がやらねば、と今からリュノは気合いを入れているが、たまには愛する人の手料理が食べたいのも事実。
少しでも家事を分担してもらいたいなら、仕事を少しでも請け負わないと……。
甘い新婚生活を送るためにはどうしたら良いか。
リュノは結婚後の生活を脳内に描きながら、パッセルに言った。
「ああ、ところで……だが。
俺の前でも、自分を『俺』と言っても良いんだぞ」
「……は?」
「あの馬に語り掛ける時には『俺』と言うだろう。
それと同じで良いという事だ」
「……何を急に言い出すかと思えば」
「大事な事だ!
俺は君に自然体でいて欲しいんだ」
「自然体?」
突然の要求に、パッセルはまたひとつ面倒な事を抱えたような気がした、けれど……
「……善処します」
彼の想いが何となく、嬉しくもあった。
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