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最後の学園生活
【西ルート隊】全否定
しおりを挟む一行は昼休憩の後、数回の戦闘を挟んで砦についた。
「それなりに魔物が出て来るものだな」
「ええ、山羊ばかりですが」
「狼の魔物もいましたよ!
あれはちょっと怖かったです」
「山羊の突進もまあまあ怖かったけどな」
北の山には野生のヤギが生息しているらしく、それが魔物化して出て来るのだ。
狼も同様である。
「ユキヒョウの魔物もいましたね」
「ええ、あれは綺麗でしたね!
……逃げちゃいましたけど」
「だからユキヒョウの毛皮は高いんだな」
「あれを追いかけるのは相当大変そうだ」
北の山脈には、様々な生き物が暮らしている。
ネズミやウサギなどの小動物もいるだろうが、彼らは出て来る事すら無かった。
17人も人間がいれば、当たり前だろうが。
ともあれ、逃げるのだから石持ちではなさそうだ。
ダンジョン産なら、どんな小さな魔物でも飛び掛かってくるのだから……
「今日はこちらの砦と近くの村に分かれて泊めて頂きます。
村に宿泊する方は、朝支度が出来たら砦に集まってください」
「公平にくじ引きだぞ!」
護衛の辺境騎士が17本のひもを持って声を上げる。
そのくじ引きの結果……
「パッセルは、村か」
「ええ、そちらは砦ですか……
では情報交換の仕事はお任せします」
「ああ、引き受けた」
砦に泊まるのは10人。
村に泊まるのは7人。
新人も駆け出しもバラバラになった。
もちろん手練れの騎士たちも。
「飯はみんなで食いましょう、砦に準備があると聞きましたから」
「山羊も持ってきましたしね」
狩った魔物を積む荷車を持って来て正解でしたね、と駆け出しと新人はニコニコ笑う。
手土産がある方が喜ばれる事をこれまでの生活で知っているのだ……
パッセルは来るだけで喜ばれるが。
「村であまり働きすぎないようにな、パッセル」
「それはどうでしょうね。
ああ、村にも山羊を持っていきましょうか」
「そうですね!5頭ありますから……」
まずは先にご挨拶。
誰もが知っている基本である。
「じゃあ、最初はみんなで砦へ行きましょうか」
「そうしましょう」
彼らは街道から近い砦から、挨拶を始める事にした。
***
その後、村宿泊組は村の方へ挨拶へ行き、砦にはリュノと他9名が残った。
「リュノ殿下はパッセル様とご一緒に行かれないので?」
「ああ、ここでやる事があるからな」
「なるほど、お仕事ですか」
「……パッセルは忙しいだろう?
結婚した後の事も考えて、俺がいくらか仕事を請け負う事にしたんだ」
リュノがそう言うと、周囲は突然にざわついた。
「えっ、結婚……?」
「結婚ですか!?」
「そうだ、俺がアルファでパッセルがオメガ。
何もおかしな事はあるまい」
男同士での結婚など、貴族間では当たり前。
一般的には珍しいのかもしれないが……と思ったら、驚きの原因はそこでは無いらしい。
「いえ、そういう事ではなく……
パッセル様と結婚が結びつかないもので」
「一生独身を貫いて仕事に生きるおつもりなんだと……なぁ?」
「そうそう、ギル殿下ともそれが原因で別れたって」
どうやら、巷間では「パッセル一生独身説」がまことしやかに流れているらしい。
曰く、武勇に優れ頭が切れ、その上第二王子という地位まであるギル殿下と結婚しないなんておかしい。
曰く、中立であるために独身でいる事を選択し、仕方なく別れた。
曰く、あれほど国中を飛び回るのでは、一緒にいる事自体が難しいはずだ。
つまり総合して、結婚より仕事を取ったのだという噂がほぼ事実として定着しているのだ。
なんたる迷惑!
「そんな事をパッセルが?」
「いえ、ご本人からは何も」
「だけどみんなそう言ってるし、なあ」
「王子様と結婚しないんだから、誰とも結婚しないんだろうって」
「俺も一応、王子なんだが?」
「……あっ」
全員が一瞬黙る。
言われてみれば、この人も隣国の王子様だった……ん?
「もしかしてパッセル様のタイプって、王子様なのか?」
「いや、甘えさせてくれる人が良いらしい。
これも本人に聞いたわけではないが、ギル殿とはそれで折り合いがつかなかったようだ」
リュノ王子はそう説明をしながら、思った。
かつてウルサに言われた時には理解しがたかった話だが、今は確かにそうだなと納得できる。
甘えられない立場にいるからこそ、仕事をとっぱらったところでは誰かに甘えたい……
それはギルにもパッセルにも言える事で、だからこそ上手くいかなかったのだ、と……
「え~!!?」
「そんな、その辺の人間が言うような理由で!?」
「ないないないない」
「というか、パッセル様が甘えるって何」
「あの人厳しさの塊ですよ!?」
「それは無いですよ、絶っっ対!なぁ?」
「そうそう、騙されてますよ殿下!!」
「……」
いや、騙されてるのはお前たちで……という言葉を飲み込んで、リュノは微妙な笑顔を浮かべた。
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