話が違う2人

紫蘇

文字の大きさ
260 / 292
最後の学園生活

怪しげな島

しおりを挟む
 
「ひひん!ぶるるふ!」
「本当かメジロ、どっちだ!?」
「ふん!ふん!」
「あっちの方向だな!?」

パッセルの体を支えるように座っていたメジロが、ついに動いた。
体勢はそのままで、声で合図を出したのだ。

「……小さな島が見える、あれか」
「こくこく」
「よし、分かった。
 操舵手殿!あっちにある、あの小島へ向かってくれ!」
「は?小島?え、あ、本当だ!」

どうやら操舵手の反応からして、最近まで無かったものと見える。
という事は、ダンジョンで間違いなさそうだ……

「上陸艇、準備!」
「おお!」

船は帆を高く上げ、速度を上げる。

「一斉掃射、準備!」
「はっ!」

近付くにつれ、魔物の数も増える。
船に乗った全員が、海に向かってボウガンを構え……

「放て!」

魔物の群れに狙いをつけ、矢を放った!


***


パッセルとリュノ、その他3名の騎士は、無事ダンジョンらしき島へ到達した。

「明日の朝、迎えに来る!」
「はい、メジロの事、頼みます!」
「おう、任せろ!」

大声でのやりとりの後、船は大急ぎで反転して港へと戻っていく。
もうすでに出てしまった魔物と闘うためだ。
凶悪な鮫、大蛸、大イカ。
今まで見た事のない、魚と牛の中間みたいな生き物、魚と虎の中間みたいな生き物……
魚と人間の中間みたいな、生き物。

「……水の中に引きずり込まれたら、勝ち目はなさそうですね」
「ええ、出来るだけ水からは離れて戦いましょう」

南方騎士団は、王家所属の騎士団の中で唯一、剣ともう一つ、出来るだけリーチの長い武器を所持している。

「銛、ですか」
「ええ、先が外れてくれるので、武器を掴まれて海中へ引きずり込まれるのを防げます」

騎士はリュノにも銛を渡した。
だが、パッセルは銛ではなく別の選択をした。

「パッセルは、ボウガンか?」
「ええ、跳弾が恐いので弾は打ちませんが、似た事をやってみようかと」
「なるほど……」

島がどういう構造かは分からない。
ただ、今までとはかなり勝手が違う、という事だ。

「とにかく、入口を探しましょう。
 そこから出て来る魔物を殲滅して、港の負担を少しでも減らさないと」
「そうですね」

一行は、島の外周を回ってみることにした。
ごつごつした岩場が多く、歩きづらい……

「しっ」
「何だ?」
「魔物がいます、止まって」

パッセルはボウガンを構え、まだ洞窟に入る前だからと石を乗せ……

「……次」

優秀なハンターの様に、一発で魔物を仕留める。
そうしてあらかた仕留めた後、また全員で進み……

「あっ、あそこ!」
「……ほんとだ、湧き出てやがる」

ついにダンジョンの入口らしきものを発見したが、魔物が湧いて出るだけでなく、見た感じかなりの深さまで水に浸かっている。

「これでは突入できませんな」
「ああ、どうする?」

近くまで行って、どうにもならなければ後退しつつ戦闘する事になる。
この足場でそれはかなりの危険を伴う。
このまま進むか、それともあの入口とは別の入口を探すか。
今なら反対周りに進路を変更もできそう、だが……。

「ダンジョンの魔物は、人間に向かってくる性質があります。
 下がるのにも細心の注意が必要です」
「……なるほど」

ひとたび魔物に見つかってしまえば、戦闘は免れない。
足場の良い場所……舟を乗り付けたところまで行ければ、

「ふむ……姿を隠して近づいてみましょう」
「えっ、姿を?」
「そういう魔法があるのです。
 ただ、私とあと1人分しか魔力に余裕がありません」
「という事は、残りはここで待つ?」
「ええ、そうです。
 待つ、と言っても魔物が攻めてくるでしょうし、かなりの戦闘になると思いますが」

つまり、この少ない人数を二手に分けるという事だ。
行く方にも待つ方にも、相当の負担が出る。

 私とリュノで入口へ向かいます、皆さんはここで魔物をしのぎつつお待ち頂く、という事で」
「……分かりました」
「では後ほど……『光学迷彩』」

パッセルがそう唱えると、2人の姿が消えた。
残された3人は目配せしあうと、近くの岩陰に身を隠した……

「……作戦、開始」

しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

目が覚めたら宿敵の伴侶になっていた

木村木下
BL
日本の大学に通う俺はある日突然異世界で目覚め、思い出した。 自分が本来、この世界で生きていた妖精、フォランだということを。 しかし目覚めたフォランはなぜか自分の肉体ではなく、シルヴァ・サリオンという青年の体に入っていた。その上、シルヴァはフォランの宿敵である大英雄ユエ・オーレルの『望まれない伴侶』だった。 ユエ×フォラン (ムーンライトノベルズ/全年齢版をカクヨムでも投稿しています)

【完結】ただの狼です?神の使いです??

野々宮なつの
BL
気が付いたら高い山の上にいた白狼のディン。気ままに狼暮らしを満喫かと思いきや、どうやら白い生き物は神の使いらしい? 司祭×白狼(人間の姿になります) 神の使いなんて壮大な話と思いきや、好きな人を救いに来ただけのお話です。 全15話+おまけ+番外編 !地震と津波表現がさらっとですがあります。ご注意ください! 番外編更新中です。土日に更新します。

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

処理中です...