話が違う2人

紫蘇

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最後の学園生活

弟子か、弟子でないか

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森からのルートと、海からのルート。
彼らがここで出会った事で、この2つが繋がっている事が判明した。

ギル王子は海からのルートについて、リュノに聞いた。

「俺たちが来たルートには、セーフルームらしき場所が無かったんだ。
 だからずっと野営で……そっちは?」
「ありがたい事に、ちゃんとあった。
 だから逆に、テントは置いて……少しでも荷物を軽くするのに、な」

海ルートはたった5人、しかも足場が悪く進むだけでかなり体力を使う。
だったらセーフルームがこの先もある事に賭けて、寝具は毛布一枚と決め、ここまで来たのだ。

「しかしセーフルームが無いのは、困るな」
「ああ、もしかしたら、分かれ道の先にあるのかもしれんが……そもそもこの人数だからな」
「うーん……確かに」

特務隊は隊長のギル王子と補助要員のラディア含め22名。それにフェリス・クレイド、治癒師のフリカ。
総勢25名の大所帯だ。
しかもほとんどがガタイのデカい男。
そして、馬。

「しかし、ここまで馬で来れるとは」
「ああ、馬車も入れたしな。物資は運び放題だ」
「なら、いっそ宿をここへ建設するのはどうだ」
「ふむ……つまり、無ければ作ってしまえという事だな」
「その通り」

セーフルームのあるなしは、今後の探索にも大きく影響する。
海側から来る場合では特に、テントというかさばるうえに重たい装備を持ち歩かなくて済むのは有難い。

「よし、ではその方向で兄上に進言してみる」
「ああ、頼む」


***


……一方、2人の王子がそんな話をする中、パッセルは治癒師のフリカを交え、久々にラディアと会っていた。

「どうですかラディア、特務隊の方々との連携は?」
「え、えっと……まあまあ、です」
「怪我は?」
「え、えっと、してません……」
「それは素晴らしい成果ですね」

ラディア言葉に、パッセルは頷いた。

パッセルが特務隊のメンバーから聞き取ったところによれば、ラディアは魔法で魔物の群れ全体を弱らせ戦いを優位に進める事に貢献したり、怪我を負った隊員の治癒にあたったりなどしていたそうだ。
彼らが言うに、まだまだパッセル程では無いが連携の一端として充分に機能している、との事。

つまり、特務隊の補助要員としては合格。
後は補助要員ではなく、特務隊の一員として認められるか……だ。
そこまで到達するためには、今の戦いぶりを一度は見る必要があるだろう。

「……フリカ先生はどう見ます」
「ふむ、もう少し治癒についての学びが必要、というところじゃな」
「すみません……難しくて」
「パッセル殿は、彼にどうやって治癒を教えたのです?」
「まずは傷を塞ぐ事から考えろ、と」

血管と血管、筋肉と筋肉、骨と骨。
ちぎれたそれを繋ぎ合わせる事で、傷を治癒できる。
それが、ラディアにも出来る治癒の原理だ。

まずは怪我が治せるようにならなければ、騎士団にはついて行けまい。

「なるほど、教本通りですな」
「ええ、人体の構造とともに、そう教えてきたのですが……」
「上手く教えられない、と?」
「ええ」

しかし、パッセルの治癒は「巻き戻し」をイメージしたもの。
だから恐ろしく早いし正確だ。
だからパッセルは「あるべき姿に戻れ」と詠唱する。
他の治癒師では出来ない芸当でもある。

パッセルはラディアに向かって頭を下げた。

「え、パッセルさん!?」
「力不足で申し訳ありません。
 これ以上私には、あなたに教えられる事がありません」
「え!?でも、その、」
「攻撃魔法はもう、後は練習あるのみとしか言えません。
 治癒に関しても……私のは少々特殊で、一般的なものとのすり合わせが最近終わったばかりなのです」
「そ、そんな!」

ラディアは慌てた。
パッセルが自分に頭を下げた事にもだが、どちらかと言えば「これ以上教わる事が無い」という現実にだ。
誰にも教わらないで強くなる。
そんな方法、ラディアは知らない。

学校で教わるから勉強が出来る。
ギル王子に教わるから、成績上位になれる。
魔法だって、パッセルが教えてくれたから人よりいくらか出来るようになった。

それなのに、こんなところで放り出されたら、どうすればいいか……。

「ぼく、ぼく、パッセルさんの弟子じゃなかったら、」
「落ち着きなさいラディア」
「だ、だって、だって……」

今まで、反発した思いもあった。
無駄に意識したり、弱みを探ろうとしたり、恋愛面で「自分の方が上だ」と思い込もうとしたり。
そもそも好きな人の元恋人に対して、複雑な気持ちを持たない人間などいるだろうか?

ラディアは普通の子なのだ。
魔力が多いだけの、ごく普通の子。

そんな「ごく普通」が、畏れ多くも第二王子様に恋をしていて、その王子様も自分を傍に置いてくれて……

だが王子様が「傍に置いてくれる」のも、その事に表立って誰も何も言わないのも、自分が「化物パッセル」の弟子だから……なのだ。

パッセルのおかげで、この場所にいる。
パッセルのおかげで、魔法が使える。
パッセルのおかげで、皆に認めてもらえる。

ラディアはここに来て、初めて「パッセルの弟子」という肩書の大きさに震えた。

「ぼく、もう、ここにいられなくなる……」

ラディアは俯いて、目に涙をためた。
今まで感謝の気持ちなんかちっとも湧いてこなかったのに、なんて現金な……

だが、そんなラディアの感情を汲み取ったのか無視したのか、治癒師のフリカが言った。

「ふむ、だから次は私の弟子にということかね」
「ええ、そういう事です」
「!?」

ラディアにとっては更なる急展開。
だが、周りは全員承知の話が、始まる……。

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