話が違う2人

紫蘇

文字の大きさ
266 / 292
最後の学園生活

手を離れるもの、付いてくるもの

しおりを挟む
 
そうしてパッセルとフリカの間で弟子ラディアの引継ぎが行われている一方、リュノとギル王子はお互いが経験したダンジョンの情報交換をしていた。

海のダンジョンの話を聞いて、ギル王子は言った。

「……なるほど、全容は掴めた。
 確かに、ここから先は少数精鋭の方が攻略しやすいだろうな」
「兎に角通路が狭いからな……
 だから、出来れば身軽で小柄な方が良い」

小柄。
その言葉に、特務隊全員ががっかりした顔になる。

「それじゃうちの騎士は全員無理じゃないか」

近衛特務隊はまだ成長期さなかのギル王子とラディアを除いて、全員が身長180㎝以上・体重80㎏以上というゴリマッチョ集団だ。

別に、それが条件というわけではない
にも関わらず、全員がデカい。
そしてほんのり……モテない。

現実、やはり細マッチョの方がモテるのだ。
別に彼らはモテようとしてこの体格になったのでは無いが……。

「くそ、ダンジョンにもフラれるとはっ!」
「神は我々に試練ばかりをお与えになる」
「近衛なのに……近衛なのに!」

深々とため息をつく特務隊に、パッセルは苦笑しつつ言った。

「まあ、水路へ落ちなければ良いんです。
 落ちたら死ぬか入口へ強制送還かのどちらか、でしょうから」
「……なるほど」
「という事は、水路に乗り物を浮かべれば、それに乗って安全に入口へ帰れる?」
「そんなもの持って入る方が危険でしょうがね」

パーツを運び込んで現地で組み立てる、という方法なら運び入れられなくも無いが、そんな事をするぐらいなら森へ出てきた方が楽だろう。
ゴムボートだって大概重たいのに……

「ふむ……しかし、特務隊に出来ない事があるのは、まずいな」
「細身の団員を募集しましょう」
「そうだな、それしかない」

そうして特務隊員たちはまだ見ぬメンバーの話で盛り上がり……

パッセルとリュノがいつの間にかいなくなっている事にも気づかなかった。


***


森のダンジョンを大急ぎで抜け、港へ戻ってみると無事に魔物の大発生は止まっていた。

南方騎士団は戦い疲れた様子を見せつつも、パッセル達や特務隊の面々を笑顔で出迎えた。

「良く耐えてくださいました」
「いやいや、援軍があったればこそです」
「災害救助隊も来てくれたしな!」

実はここへ来る前に、パッセルは何通かの手紙を出していた。
内容は短く「南の港で魔物の大発生が確認された」と、それだけの。

だがたったそれだけの内容で、彼らは自分たちでどう動くかを考え、動いたのだ。

彼らはパッセルがダンジョンへ行った直後に東端と西端の漁村から順次救助に入り、魔物討伐あわおどりに参加し、今は復興作業を手伝っているらしい。

「間に合いましたか……良かった」

パッセルはその事を聞いて、胸が熱くなるような少し寂しいような感情を覚えた。

「もう私がいなくても立派にやっていけますね、彼らも」
「……良かったな、パッセル」
「ええ、心配事が1つ減りました。
 これで心置きなく、西の辺境を再開拓する事が出来そうです」

ラディアの新しい師匠も決まった。
救助隊も自分たちで計画を立てて動けるようになった。
後は……

「国道、ダンジョン管理人及び案内人、救国の士の選定、番契約解除法の指導、新人騎士の最終訓練、災害対策教本の作成……」
「ユバトゥス王国への訪問、もな」
「ええ、すぐ隣の国になりますから……
 西の辺境へ入ったら、すぐにでも」
「後、結婚式もな!」
「ああ、はい」

仕事も私事も、まだまだ残っている。
それでも、西の辺境でリアル「わたしの箱庭」をやれる日は近づいた。

「卒業しても王都に残る、という選択肢は有り得ません」
「……ああ、最後まで気を抜かずに、行こう」

その為にもまずは、災害救助隊のメンバーたちを労いに行かねばなるまい。

パッセルはメジロがいるという厩舎へと、足早に向かった。


しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

目が覚めたら宿敵の伴侶になっていた

木村木下
BL
日本の大学に通う俺はある日突然異世界で目覚め、思い出した。 自分が本来、この世界で生きていた妖精、フォランだということを。 しかし目覚めたフォランはなぜか自分の肉体ではなく、シルヴァ・サリオンという青年の体に入っていた。その上、シルヴァはフォランの宿敵である大英雄ユエ・オーレルの『望まれない伴侶』だった。 ユエ×フォラン (ムーンライトノベルズ/全年齢版をカクヨムでも投稿しています)

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】ただの狼です?神の使いです??

野々宮なつの
BL
気が付いたら高い山の上にいた白狼のディン。気ままに狼暮らしを満喫かと思いきや、どうやら白い生き物は神の使いらしい? 司祭×白狼(人間の姿になります) 神の使いなんて壮大な話と思いきや、好きな人を救いに来ただけのお話です。 全15話+おまけ+番外編 !地震と津波表現がさらっとですがあります。ご注意ください! 番外編更新中です。土日に更新します。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

第十王子は天然侍従には敵わない。

きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」 学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。

処理中です...