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最後の学園生活
手を離れるもの、付いてくるもの
しおりを挟むそうしてパッセルとフリカの間で弟子の引継ぎが行われている一方、リュノとギル王子はお互いが経験したダンジョンの情報交換をしていた。
海のダンジョンの話を聞いて、ギル王子は言った。
「……なるほど、全容は掴めた。
確かに、ここから先は少数精鋭の方が攻略しやすいだろうな」
「兎に角通路が狭いからな……
だから、出来れば身軽で小柄な方が良い」
小柄。
その言葉に、特務隊全員ががっかりした顔になる。
「それじゃうちの騎士は全員無理じゃないか」
近衛特務隊はまだ成長期さなかのギル王子とラディアを除いて、全員が身長180㎝以上・体重80㎏以上というゴリマッチョ集団だ。
別に、それが条件というわけではない
にも関わらず、全員がデカい。
そしてほんのり……モテない。
現実、やはり細マッチョの方がモテるのだ。
別に彼らはモテようとしてこの体格になったのでは無いが……。
「くそ、ダンジョンにもフラれるとはっ!」
「神は我々に試練ばかりをお与えになる」
「近衛なのに……近衛なのに!」
深々とため息をつく特務隊に、パッセルは苦笑しつつ言った。
「まあ、水路へ落ちなければ良いんです。
落ちたら死ぬか入口へ強制送還かのどちらか、でしょうから」
「……なるほど」
「という事は、水路に乗り物を浮かべれば、それに乗って安全に入口へ帰れる?」
「そんなもの持って入る方が危険でしょうがね」
パーツを運び込んで現地で組み立てる、という方法なら運び入れられなくも無いが、そんな事をするぐらいなら森へ出てきた方が楽だろう。
ゴムボートだって大概重たいのに……
「ふむ……しかし、特務隊に出来ない事があるのは、まずいな」
「細身の団員を募集しましょう」
「そうだな、それしかない」
そうして特務隊員たちはまだ見ぬメンバーの話で盛り上がり……
パッセルとリュノがいつの間にかいなくなっている事にも気づかなかった。
***
森のダンジョンを大急ぎで抜け、港へ戻ってみると無事に魔物の大発生は止まっていた。
南方騎士団は戦い疲れた様子を見せつつも、パッセル達や特務隊の面々を笑顔で出迎えた。
「良く耐えてくださいました」
「いやいや、援軍があったればこそです」
「災害救助隊も来てくれたしな!」
実はここへ来る前に、パッセルは何通かの手紙を出していた。
内容は短く「南の港で魔物の大発生が確認された」と、それだけの。
だがたったそれだけの内容で、彼らは自分たちでどう動くかを考え、動いたのだ。
彼らはパッセルがダンジョンへ行った直後に東端と西端の漁村から順次救助に入り、魔物討伐に参加し、今は復興作業を手伝っているらしい。
「間に合いましたか……良かった」
パッセルはその事を聞いて、胸が熱くなるような少し寂しいような感情を覚えた。
「もう私がいなくても立派にやっていけますね、彼らも」
「……良かったな、パッセル」
「ええ、心配事が1つ減りました。
これで心置きなく、西の辺境を再開拓する事が出来そうです」
ラディアの新しい師匠も決まった。
救助隊も自分たちで計画を立てて動けるようになった。
後は……
「国道、ダンジョン管理人及び案内人、救国の士達の選定、番契約解除法の指導、新人騎士の最終訓練、災害対策教本の作成……」
「ユバトゥス王国への訪問、もな」
「ええ、すぐ隣の国になりますから……
西の辺境へ入ったら、すぐにでも」
「後、結婚式もな!」
「ああ、はい」
仕事も私事も、まだまだ残っている。
それでも、西の辺境でリアル「わたしの箱庭」をやれる日は近づいた。
「卒業しても王都に残る、という選択肢は有り得ません」
「……ああ、最後まで気を抜かずに、行こう」
その為にもまずは、災害救助隊のメンバーたちを労いに行かねばなるまい。
パッセルはメジロがいるという厩舎へと、足早に向かった。
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