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揺らぎの時
冬期休暇の始まり
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「と、いう訳で兄上、フェリス殿とエバ殿下とリュノ殿下他諸々の方は頼みましたぞ」
「えっ、パッセル、護衛は!?」
「そうだよ、護衛の騎士さんは?」
「途中で合流します!
ではフェリス殿も、お元気で!」
「あ、ちょっと、パッセル!!」
パッセルはまたしても、終業式が終わるなりさっさと身支度を整え荷物を馬に積んで走り去った。
護衛の騎士もまだ来ていないのに…。
パッセルは今回もまたエバ王子を通じ、さらに復興活動の最中に出来た仲間たちとも連絡を取り合いながら災害に見舞われた土地が無いか、また復興の遅れがみられる地域がどこかを探った。
どうやら彼は独自の情報ルートを構築しつつあるらしい。
「ついに国家からも独立する…とか、無いだろうな」
「さすがにそれは無いと思うよ?
けど、中立であり続けるって、大変…あ」
何とかパッセルを見送ったフェリスとクレイドが、自分たちも出発の用意をしなければと正門に背を向けた瞬間、こちらへ走って来る人影に気付いた。
リュノ王子と、アラウダ、ウルサ、エバ王子とオヴィスだ。
「…っ、パッセルは」
「ああ…あそこ」
「一足遅かったですね、リュノ殿下」
「あらあら…パッセル様、随分急いで出発なさいましたのね」
「見事な逃げ足だな」
「もう…パッセルさんったら…」
小さくなる後ろ姿を見送りながら、残された7人はため息をついた。
「すっかり嫌われてるじゃないですか…」
「いくらなんでも押し過ぎじゃないですか?」
「だが、駆け引きなんてしていたら逃げられてしまうだろう?」
「…さもありなん」
「…確かにそうですわね」
「駆け引きになった途端、パッセルさんの方が強くなる気がします!」
「護衛が追いつけるか心配だな…冬は重装備だし、風は冷たいし」
最後のごもっともな心配はエバ王子だ。
他人の恋愛にはとんと興味が無いらしい…
と、思いきや。
「ちなみに彼の旅程は私共で把握しておりますが…
どうします?リュノ殿」
「…教えてくれるのか?」
「あなたが本当に、パッセルの事を想っているというのならば……ね」
ちゃっかり恋バナに持っていくあたり、やはり王子も人の子らしい。
「そう、それ!僕も気になってた」
「俺もだ…大事な弟の事だからな」
その話にフェリスとクレイドが乗り、他3名も「我々にも当然聞く権利がありますよね?」の顔をする。
強すぎる6人の圧に、リュノ王子はたじたじになりながら言った。
「その……実は、一目惚れ……というか」
「それは、学園で?」
「いや、国境沿いの…」
「国境沿い?」
「辺境ではお見掛けしませんでしたが?」
「いや、その…見張り台から」
「見張り台?」
6人の目が、リュノ王子を追い詰めていく。
王子は仕方なく、彼らに全てを打ち明ける事にした。
「まず初めに、恋があって。
そこへ打算を付け加えて、ここに来た。
私は彼の誘引香も知らないうちに、彼に恋をしたんだ…」
***
リュノ王子の切ない胸の内を聞き、エバ王子はそっとパッセルの旅程をメモした紙を彼に握らせた。
「この書きつけの代わりに、帰省をしない旨の書状を頂きたい」
「分かった、すぐに用意する」
リュノ王子はすぐさま走って第2寮へ行き、怒涛の勢いで手紙を書くとこれまた怒涛の勢いでエバ王子たちがいるところへ走ってきた。
「これを!」
「ええ、確かに受け取りました」
「では今から準備出来次第、私も出発する」
この冬は夏季休暇の時の3人に加え、オヴィスとアラウダとウルサも辺境へ行く事になっていた。
「冬は寒いし、魔物も餌が無くて気が立っている。
どうかくれぐれも、ご無理なさらず」
「リュノ殿下、ご武運を!」
「分かった、有難う!!」
そうしてまた自室へ帰っていく彼を見送りながら、まもなくやって来るであろう騎士団にリュノ王子の不在を何と説明するか…。
その事を考えているのは、アラウダただ一人であった。
「えっ、パッセル、護衛は!?」
「そうだよ、護衛の騎士さんは?」
「途中で合流します!
ではフェリス殿も、お元気で!」
「あ、ちょっと、パッセル!!」
パッセルはまたしても、終業式が終わるなりさっさと身支度を整え荷物を馬に積んで走り去った。
護衛の騎士もまだ来ていないのに…。
パッセルは今回もまたエバ王子を通じ、さらに復興活動の最中に出来た仲間たちとも連絡を取り合いながら災害に見舞われた土地が無いか、また復興の遅れがみられる地域がどこかを探った。
どうやら彼は独自の情報ルートを構築しつつあるらしい。
「ついに国家からも独立する…とか、無いだろうな」
「さすがにそれは無いと思うよ?
けど、中立であり続けるって、大変…あ」
何とかパッセルを見送ったフェリスとクレイドが、自分たちも出発の用意をしなければと正門に背を向けた瞬間、こちらへ走って来る人影に気付いた。
リュノ王子と、アラウダ、ウルサ、エバ王子とオヴィスだ。
「…っ、パッセルは」
「ああ…あそこ」
「一足遅かったですね、リュノ殿下」
「あらあら…パッセル様、随分急いで出発なさいましたのね」
「見事な逃げ足だな」
「もう…パッセルさんったら…」
小さくなる後ろ姿を見送りながら、残された7人はため息をついた。
「すっかり嫌われてるじゃないですか…」
「いくらなんでも押し過ぎじゃないですか?」
「だが、駆け引きなんてしていたら逃げられてしまうだろう?」
「…さもありなん」
「…確かにそうですわね」
「駆け引きになった途端、パッセルさんの方が強くなる気がします!」
「護衛が追いつけるか心配だな…冬は重装備だし、風は冷たいし」
最後のごもっともな心配はエバ王子だ。
他人の恋愛にはとんと興味が無いらしい…
と、思いきや。
「ちなみに彼の旅程は私共で把握しておりますが…
どうします?リュノ殿」
「…教えてくれるのか?」
「あなたが本当に、パッセルの事を想っているというのならば……ね」
ちゃっかり恋バナに持っていくあたり、やはり王子も人の子らしい。
「そう、それ!僕も気になってた」
「俺もだ…大事な弟の事だからな」
その話にフェリスとクレイドが乗り、他3名も「我々にも当然聞く権利がありますよね?」の顔をする。
強すぎる6人の圧に、リュノ王子はたじたじになりながら言った。
「その……実は、一目惚れ……というか」
「それは、学園で?」
「いや、国境沿いの…」
「国境沿い?」
「辺境ではお見掛けしませんでしたが?」
「いや、その…見張り台から」
「見張り台?」
6人の目が、リュノ王子を追い詰めていく。
王子は仕方なく、彼らに全てを打ち明ける事にした。
「まず初めに、恋があって。
そこへ打算を付け加えて、ここに来た。
私は彼の誘引香も知らないうちに、彼に恋をしたんだ…」
***
リュノ王子の切ない胸の内を聞き、エバ王子はそっとパッセルの旅程をメモした紙を彼に握らせた。
「この書きつけの代わりに、帰省をしない旨の書状を頂きたい」
「分かった、すぐに用意する」
リュノ王子はすぐさま走って第2寮へ行き、怒涛の勢いで手紙を書くとこれまた怒涛の勢いでエバ王子たちがいるところへ走ってきた。
「これを!」
「ええ、確かに受け取りました」
「では今から準備出来次第、私も出発する」
この冬は夏季休暇の時の3人に加え、オヴィスとアラウダとウルサも辺境へ行く事になっていた。
「冬は寒いし、魔物も餌が無くて気が立っている。
どうかくれぐれも、ご無理なさらず」
「リュノ殿下、ご武運を!」
「分かった、有難う!!」
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