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最後の学園生活
一方その頃、王宮では 1
しおりを挟む2人の見送りもそこそこに王宮へ戻った5人は、それぞれの持ち場へ散った。
エバ王子はオヴィスと自室へ。
ギル王子は近衛騎士が待つ厩へ。
そしてアラウダとウルサは、シルウェストリス公が待つ大臣室へ……
「……覚悟は」
「はい、お願い致します、公爵様」
「宜しい……『我々は今より最も目立たぬ物になる』……完了だ、行くぞ」
そうして、公爵の魔法で気配をすっかり消すと、窓からそっと抜け出し、密やかに走る。
目隠しの林を抜け、小庭園を抜け、中庭を抜け、四阿の横を通り、まだ蕾ばかりの薔薇園を抜け……
「……ここだ」
「はい」
到達したのは、離宮。
王妃と王妃付きの近衛が住む、離宮だ。
「確認する。
離宮は2、料理人と助手。
本館からは週3、廊下の掃除に来るのが3」
「はい」
「庭掃除の協力者、顔は」
「存じております」
「良し、では入る」
シルウェストリス公は勝手口から中の様子を覗う。
「……万事計画通りだ」
見張りの近衛がすでにいなくなっている事を確認し、後ろの2人に合図を送る。
なぜ居ないのか…というと、今日から精鋭たち10名が、本館の警備を抜けてギル王子と共に南へ旅立つのに伴って大幅な配置転換があったからだ。
つまり、ギル王子が戻るまで、離宮に見張りの近衛はいない。
簡単に言えば「計画通り」。
「過去数年に渡り、離宮に不審者があった事は無いのだから近衛は王妃付きだけで充分」
……とは、アラウダの父で宰相であるアルベンシス候のお言葉である。
「この部屋だ」
シルウェストリス公は2人を伴い、大きな扉の前まで進み、ノックし、5秒数え、開く。
その瞬間に、3人は部屋の中へ入り……
「待ちかねたよ、ボルタ君」
そうして彼らを出迎えた王妃の髪は、短く切りそろえられていた。
***
ウルサが王妃に、アラウダがヴェスパにと変装している間、大人たち3人は小声で話した。
「……王の『草』には?」
「見つからんよ。
腕の良いのは全部、君の息子たちに付けた」
「そんな事まで出来るの?」
「ああ、陛下のご命令で人事権を頂いたんでな」
「うーん馬鹿かな?」
王妃が王を貶し、公爵と近衛は苦笑する…
ある意味でこの国の縮図を表した光景だ。
「さて、確認しよう。
もうすぐリュノ殿下とギル殿下が厩で騒ぎを起こす。
その混乱に乗じて君たちは離宮を抜け、正門とは逆の通用門へ行く。
そこでは西へ行くフェリスの護衛をする騎士が、幌馬車に物資を積み込んでいる。
君たちはその幌馬車にこっそり乗り込んで、西門から王都を出る……良いかい?」
シルウェストリス公の説明に、王妃とヴェスパは深々と頭を下げ、言った。
「ボルタ殿、何から何まで……有難う」
そうして感極まって泣きそうな2人に、シルウェストリス公は涙が止まるような答えを返した。
「なぁに、あのクソボケカスヤリチンクソ野郎の悔しがる面さえ見られれば、それでおつりが来る」
「……クソが2回あるよ、ボルタ君」
「そんなの誤差だよアルス君。
あと1000個付けてもいいぐらいだ」
「1000個」
「1000個」
「1000個か……」
そんな内緒話をしているうちに、アラウダとウルサが衝立の向こうから出て来た。
「……いかがでしょう?」
「ああ、いいんじゃないか?背格好と髪の色さえ同じなら、後は何とでもなる。
まかせろ」
「……本当に?」
「大丈夫だ、魔法には自信がある」
シルウェストリス公はそう言って、拳を握ってから親指を立てた。
それを見て王妃は2人に言った。
「……なるべくバレないように、ね」
「御意に」
「お任せください、王妃陛下。
私も魔法には自信が御座います」
そう言って彼女もまた、拳を握って親指を立てた。
まさかウルサの方からもそんな言葉が出るとは思わなかった王妃は……
「うーん、そういう事じゃないんだけどなー」
そう言って、面白そうに、笑った。
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