話が違う2人

紫蘇

文字の大きさ
172 / 292
最後の学園生活

最後の春休み

しおりを挟む
 
「さ、行きますよフェリス殿!」
「うん、行こう!」

卒業式から数日遅れて行われた終了式の後、パッセルは愛馬に鞍をかけ、荷物を積んだ。
フェリスもまた大きな荷物を箱馬車に積み込み、御者台へ座った。

今から2人で、西の辺境へ行くのだ。

風で走る乗り物の開発は勉強会の面々に託した。
馬車にはこの数日間で作りためたポーションと、途中の村や町で配布する魔法工法・魔法農法の教本も積み込まれた。

「王都の西門で護衛を待たせている。
 そこまで何も無いとは思うが、気を付けてな」
「ええ、エバ殿下も…オヴィス、後は頼んだよ」
「おまかせください!」
「私共も微力ながら、精一杯務めて参りますわ」
「ウルサ殿、どうかアラウダ殿をお守りください」

エバ王子とオヴィス、アラウダとウルサは王都へ残ることになった。
だが、ただの留守番ではない。
1年後の戴冠に向けた準備があるのだ。
こっちはこっちで相当の負担がある。
しかし……。

「私のジンクスがどこまで通用するかは分かりませんが、精一杯務めて参りますよ」

留守番組には強力なお守りがある。
逆に言えば、フェリスとパッセルには何か良からぬ事が降りかかる可能性もあるという事で……。

「大丈夫だフェリス殿、パッセル。
 俺が南へ行く分、危険は分散される」
「それも……困りますね」
「ええ、ギル殿下も、どうか気を付けて」
「ああ、全員で生きて戻る。任せろ」

ギル王子は一旦王宮へ戻った後、近衛の一団と共に南の王領へ向かう。
西・東と魔物災害があったので、南でも「石持ち」つまりダンジョン産魔物がいないか、調査に行くのだ。
南の方面からは特に報告は上がっていないが、万が一という事もある。
だからダンジョン経験者である彼が、

……

…………、あれ?

「そう言えば、リュノ殿下は?」
「西門で合流するとの事です」
「あっ、じゃあ、僕らも早く王宮へ行かないと!」
「……?」

オヴィスは謎の匂わせを残し、4人を急かす。
フェリスとパッセルはその様を見て、思う。

「オヴィスも仕上がって来たな」

……と。


***


フェリスとパッセルが西門に到着すると、今回護衛に選ばれたシルウェストリスの騎士たちと幌馬車が一台待っていた。

「これはまた、立派な幌馬車ですね」
「ええ、西の辺境へ運ぶ追加物資です」
「へぇ……すごい、こんなにも沢山……!」
「あんな婚約契約書を送ってきたと思えば、今度はこれほどの物資……親心とは複雑ですな」
「ふふっ、父上ったら、素直じゃないんだから」

二人は、彼らと共に西門を出た。

「そう言えばリュノ殿下は?」
「野暮用があり後から追いつくとの事です」
「そうですか……では、遠慮なく速度を上げて参りましょう!!」

そう言うとパッセルは愛馬の腹をポンと蹴り、速度を上げさせた。
それを合図に、全員が少しだけ速度を上げ……

「まったく、パッセルも素直じゃないんだから!!」
「向こうはメジロより速い馬に乗って来るのですから、このぐらい追いつけて当然です!!」
「ええ、まったく!!
 この程度追いつけない者に、パッセル殿を任せるわけにはいきません!!」
「んも~、君たちまでそういう事言う!!」
「「 ははは! 」」

彼らは馬や馬車のたてる音に負けない大声で笑いながら、西門からどんどん離れていった……。


しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

目覚めたらヤバそうな男にキスされてたんですが!?

キトー
BL
傭兵として働いていたはずの青年サク。 目覚めるとなぜか廃墟のような城にいた。 そしてかたわらには、伸びっぱなしの黒髪と真っ赤な瞳をもつ男が自分の手を握りしめている。 どうして僕はこんな所に居るんだろう。 それに、どうして僕は、この男にキスをされているんだろうか…… コメディ、ほのぼの、時々シリアスのファンタジーBLです。 【執着が激しい魔王と呼ばれる男×気が弱い巻き込まれた一般人?】 反応いただけるととても喜びます! 匿名希望の方はX(元Twitter)のWaveboxやマシュマロからどうぞ(⁠^⁠^⁠)  

拗らせ問題児は癒しの君を独占したい

結衣可
BL
前世で限界社畜として心をすり減らした青年は、異世界の貧乏子爵家三男・セナとして転生する。王立貴族学院に奨学生として通う彼は、座学で首席の成績を持ちながらも、目立つことを徹底的に避けて生きていた。期待されることは、壊れる前触れだと知っているからだ。 一方、公爵家次男のアレクシスは、魔法も剣術も学年トップの才能を持ちながら、「何も期待されていない」立場に嫌気がさし、問題児として学院で浮いた存在になっていた。 補習課題のペアとして出会った二人。 セナはアレクシスを特別視せず、恐れも媚びも見せない。その静かな態度と、美しい瞳に、アレクシスは強く惹かれていく。放課後を共に過ごすうち、アレクシスはセナを守りたいと思い始める。 身分差と噂、そしてセナが隠す“癒やしの光魔法”。 期待されることを恐れるセナと、期待されないことに傷つくアレクシスは、すれ違いながらも互いを唯一の居場所として見つけていく。 これは、静かに生きたい少年と、選ばれたかった少年が出会った物語。

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

白金の花嫁は将軍の希望の花

葉咲透織
BL
義妹の身代わりでボルカノ王国に嫁ぐことになったレイナール。女好きのボルカノ王は、男である彼を受け入れず、そのまま若き将軍・ジョシュアに下げ渡す。彼の屋敷で過ごすうちに、ジョシュアに惹かれていくレイナールには、ある秘密があった。 ※個人ブログにも投稿済みです。

処理中です...