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最後の学園生活
南方騎士団
しおりを挟む港へ行ってみると、そこには南方騎士団と船大工が慌ただしくしている姿があった。
「お忙しいところ、失礼致します。
王都騎士団より応援に参りました、スクエアと申しますが」
「おお、あなた方が!
すみませんね、今船を修繕するのに必死で。
また魔物が出てきたら大変だから……」
船は海の魔物と戦う為の必需品でして、と作業着で言い訳をした騎士は、大声で呼んだ。
「だんちょー!王都の騎士団の人!!」
すると、船の内側から金槌を持った大男が現れた。
「おお、待ちかねた!!」
どうやら彼が団長らしい。
パッセルは騎士たちと共に彼に近寄り、声をかけた。
「何かお手伝いできる事はありますか?」
「ああ、大丈夫だ!自分の命を預けるモンは自分で面倒見なきゃ落ち着かねえからな!」
「では船の修理以外にお手伝いする事は?」
「ああ、そんなら……」
団長は海の方を指差し、こう言った。
「海から魔物が来たら、魔法で追い払っといてくれ!」
***
船に乗って戦うのはコツがいる。
地上での戦いしか知らない王都の騎士たちは、陸の上から戦いをサポートする係になるようだ。
「それで魔法が使える俺たちが呼ばれたんすね」
「そういう事のようです」
「パッセル殿に鍛えて頂いてて良かったっす」
「ええ、ですがここからが本番ですよ」
まず、船を避けながら魔法を撃たなければならない。
細い隙間を狙って弓矢の軌道をイメージしつつ魔法を使う為には、それなりの経験が必要だろう。
「弓兵の方と一緒に戦った事は?」
「ええ、昨年秋のカヌス領で」
「ああ、あの時の……そうでしたか」
どうやら、彼らはあの時リュノ王子に付いてカヌス領へやってきたメンバーの中にいたらしい。
「あの時の魔法、すごかったっすよね」
「あんなに短い間隔で魔法が撃てるなんて、なぁ」
「そうそう、学園で魔法教わった奴なんか一人もいないのに」
「って事は、学園で教えてる魔法って実戦向きじゃないのかなって」
彼らにはあの時の経験が強烈だったらしい。
パッセルにとっても、あの時の経験は忘れがたい物だ……オーバードーズというのは、あまりかっこいいものではない。
だが、倒れるまで魔法を使い続けた姿は彼らにとって輝いて見えたようで……。
「だからパッセル殿がどうやって魔法使ってるか、教えて貰いたかったんです」
「俺ら魔法は使えるけど、戦闘で使った事ないから」
騎士たちによると、魔法を戦闘で使える「魔法騎士」は、近衛に集中しているそうだ。
つまり南方騎士団にも、戦闘ベースで魔法を使える人間は少ないという事……
「どうやら、やる事が増えそうですね」
「えっ、何です?」
「皆さんにはしっかり魔法の使……ん?」
がぁん、がぁん、がぁん……
突然、港に金属を打つような音が響いた。
「魔物が出たんですね」
「っすね、あ、あっちだ!!」
4人は、さざ波が見える方へと走り……
「板、お借りします!」
「え、あ!」
パッセルは桟橋で、小舟に掛ける渡し板をひったくり、それを海へ投げ入れるとその上へ乗り……
「まずは見て覚えなさい、良いですね!」
「「は、はい!!」」
「水、流れて、1時方向!」
「!?」
水魔法で海面の流れを操り、一気に魔物の方へ走る。
馬とほぼ変わらない速度、魔物ですら驚く速度で奴らに近づく……!
「火、槍8、貫け!!」
短い、ごく短い詠唱。
水面に浮かべた板の上でバランスを取りながら、苦手な分野であったはずの炎をぶっ放す、そして、当たる!
「ち、そう単純じゃないな」
火が然程効いていない。
仕方ない、半分以上海に浸かっている…
水で威力が落ちないもの、それは何だ?
風、火、水、土、雷……
「……魚雷」
だが、それはこの世界に無い概念。
この世界の人間が理解できる方法でなければ。
水…敢えて、水、いや、水から引き上げ…
がぁん、がぁん、がぁん、金属音。
音、音波……?
いや、振動、激しい振動で敵を気絶させる、ダイナマイト漁法?……いや。
「潮と潮、ぶつかり、渦となれ…」
徳島と淡路島の間の、あの海峡。
岡山から、ぼろぼろの瀬戸大橋を渡り、香川から徳島、海沿いを行軍し、失われた大鳴門橋を見つめながら、船に乗り込み……
自然はただ、そこにあった。
あの海峡に浮かんだ鯛は、波に翻弄された自分……
パッセルは腰を落とし、両手を掲げ、あの踊りを再現するように腕をひと振り、叫んだ。
「……渦、潮!!」
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