話が違う2人

紫蘇

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最後の学園生活

アルバトルス連、発足

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「まず、魔法はイメージが大事です。
 水は必ず水平を保とうとしますね?」
「はい」
「その現象を利用して、あの独特の潮流を生み出すのです」

こうして、パッセルの「渦潮」魔法の伝授が始まった。
大きなタライを用意し、そこに水を張って再現実験をしながらの説明だ。
いつの間にか騎士団長までやってきて、タライの周りはむさくるしい熱気に包まれた。

「まず魔法で特定領域の水を利用し近くの水面を引き上げ……一気に、開放する」
「「 おお~ 」」

騎士たちは大きなタライの周りに集まり、その中でさっきの「渦潮」が再現されるのを見る。
ちっちゃな渦がぐるぐると出来上がる不思議に、全員が釘付けになる。

「ですから、こう、両手を挙げる時、この部分……魔物のいた領域から水を移動させて、水面を引き上げているわけです。
 で、この領域の水面は下がるわけですから、これを、腰を落とすという動きで表現しているわけです」
「「 ほうほう 」」
「そして、開放の合図が『渦潮』という言葉になるわけですね?」
「そうです」

さすが、パッセルに弟子入りしていただけの事はある。

魔法のイメージを固める言葉、それが詠唱。
だから長々と言葉を紡がなくても、実体化できる程にイメージが出来れば、後は引き金を引くだけ。

この旅の間で散々聞かされた話である。

パッセルは弟子きしの言葉に頷きつつ、更に説明を続ける。

「ただ、開放しただけでこの流れが狙った場所にうまく出来るとは限りません。
 ですから渦がしっかり狙った場所に出来るように、水の動きを補助する……この水を動かすイメージが、この、腕の振りというわけです」
「という事は、開放した直後にも水魔法を連続して使っているという事になりますね?」
「ええ、大人数連続魔法です。
 渦が完成するまで気を抜かないでください」
「「 はい! 」」

騎士たちはみんな、やる気に満ちている。
魔法が使えない者もいるだろうに、全員が真剣な眼差しで学ぼうとしている。
中途半端な真似は、できない。

パッセルはもう一度気合いを入れ直し、同僚の言葉と動きを回想する……

「では、動きだけ……やってみましょうか」

パッセルはゆっくりと、自分が説明したとおりの動きをして見せる。
つまりさっき思わず出て来た動きだ。

「両手を挙げ、同時に腰を落とし」

「掛け声と共に、水をぐわん、と回すように、腕を動かす」

この動きが、本来の阿波踊りと同じかどうかは分からない。
だが、男踊りは腰を落としてダイナミックに力強く踊るのだ、という同僚の言葉は覚えている。
大事なのはリズムとステップ……

「パッセル殿、その足の動きは?」
「あ、ああ……これですか」

そう言えば、さっき足を動かす事はしていなかった……ような、していたような。
動かしていたとすれば、渦潮の再現を目指す、何かの目的が無いと……

ああ。

「渦によって海の中までしっかりとかき混ぜられるのを補助するために、足の動きでそれを表します」
「なるほど、全身を使って……」
「よし、みんなで動きが合うまで練習だ!」

王都騎士たちがカヌス領への遠征で学んだ話を南方騎士団に披露する。

「大人数で一つの魔法をやる時には、意識を統一するために動きを揃えるんだ。
 この魔法はこの動き、この魔法はこの動き、っていうのを決めて……」
「「 へぇ~ 」」

魔法をただ出せるだけだった弟子たちが魔法について語れるようになったのを、パッセルは微笑ましく見つめながら考えた。

魔力が使えない騎士には、ステップを合わせられるように太鼓をたたいてもらうのはどうだろう……と。


***


そうして翌日、ギル王子がラディアを伴って港へ再訪した時には、この世界に無い踊りを踊る集団が完成していた。

いつの間にか船大工や、見張り役の金属板を叩く係まで巻き込み、パッセルが作る海面で渦巻く潮を観察した後、太鼓の音に合わせて両手を挙げ・腰を落とし・渦潮という掛け声と共に腕を振り……

「やっとさーぁ!」「やっとさー!」
「あヤットヤット!」「ヤットヤット!」

謎の掛け声で息を合わせて踊る、謎の集団……

「おい、パッセル……これは」
「新しい魔法の練習です」
「はぁ?」
「アルバトルス連です」
「あるばとるすれん?」

阿波踊りのチームの事を「連」と呼ぶのは完全に前世の倣いだ。
だがもはや、そんな事を気にしている場合ではない。

海のどこかに、ダンジョンがあるとするならば……。


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