【完結】ざまぁは待ってちゃ始まらない!

紫蘇

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【過去ばなし】チート魔術師とチャラ男令息

チート魔術師の過去 3

立派だが使い込まれた鎧を着た彼らは、魔物討伐にやってきた騎士たちだった。

俺たちはどうやら助かった…らしい。

この先の事を考えると、命があったからどうだという話になるかもしれないけれど。


一昨日街へ着いたばかりだという騎士団は、まず先遣隊をこの道へ向かわせたらしい。
そしてその先遣隊が途中で俺たちを見つけ、報告のために1人を街へ向かわせ、警護にこの2人を残した。
後の人間は俺たちの村へ向かったそうだ。

騎士たちは俺たちにパンを食わせながら、今後の計画を説明してくれた。

「本隊は先遣隊と合流する為にもうすぐここを通るはずだ。
 報告に行ったやつに馬車を寄越してくれって頼んであるからさ、それが来たらみんなで乗ってさ、一旦君たちの村へ行こうぜ」
「……分かりました」

誰か1人でも生きていれば良いけれど、とは返せなかった。
子ども達に非情な現実を見せることになるだろうとは思ったけれど、それも必要な事なのかもしれない、とも思った。

「……」

地面を叩いた騎士は黙りこむ俺に、単に話を繋げる為なのか、昨今の国内事情を話し出した。

「各地方から『魔物の被害が増えている』と報告が相次いでな。だから急ぎ国中へ討伐隊が派遣される予定だったんだ」
「そうだったのですか」
「…だけど『まず地方の領主たちに任せるべきだ!』って、誰かさんが言い始めたんだよ」
「はあ、まあ言い分は分からなくも無いですね」
「だがそのことで、結果として、対応が後手後手になってしまった…。
 魔物の数は膨れ上がり、我々は進む事もままならず、国土も討伐隊の被害も甚大になってしまった」
「そうですか…」

誰かがこの魔物の増殖を読み違えた。

いや、単に読み違えたのではなく、何か意図があったのかもしれない。
俺には今のところ、判別がつかないが。

「裕福な街や貴族は私兵を囲えるが、君たちのいた村ではそれも厳しかっただろう…」

は?厳しかっただと?
そんな事を思いつく余裕なんか無かったよ。
あの村を捨てて、全員で逃げる事すら思いつかなかったよ。
みんな、その日を生きるだけで精一杯で、先のことなんて考える余裕は無かったんだよ。
だから、人買いの甘言に乗せられて…
子どもたちの為に、子どもたちを売ったんだよ。

俺は腹が立った。
ムカムカして、何か言ってやらないと気が済まなくなって…そして、彼らに毒を吐いた。

「ええ、ここ数年は畑で採れる作物が不調で、いくら売っても金になりませんでしたしね」

一度考えた事を口に出したら、思考が滑り出した。
そうだ、前世でもそういう癖が…
話しながら思考をまとめる癖が、俺にはあった。

炭水化物パンを食って、ようやく回り始めた脳味噌が、言語を吐き出す。

「…だから、税金を払う為にいつも以上に量を売らなきゃならなくなって、食べる分すら買い叩かれて、仕方なく普段入らないような山奥へまで食べる物を探しに入って…」

生きる為に、食うものは村の中に無い。
村の周りにももう無い。
あるのは、いや、あるかもしれないのは、森の奥…

「そうやって、仕方なく、仕方なく、で魔物の縄張りを荒らした、だから魔物は、人を襲った。
 そうして…」

俺の頭に、ふと「三毛別羆事件」という言葉が浮かんで、消えた。

「人肉の味を覚えた魔物は、次々に人を襲う、つまり、人間という、狩りやすい餌があることを学んで、食って、腹を満たし、そして……
 数を増やした、の、かも、しれませんね」

村を襲えば、人も家畜も農作物も手に入る。
人間が食えない物も食える彼らには、貧しい村が最高の餌場に見えるに違いない。

だが、そうさせたのは結局、何だった?
無理な開拓、縄張りの侵蝕…それは…何故?
簡単な話じゃないか。

「結局は、魔物だけのせいでもないんでしょう」
「どういう事だ?」
「人間が欲をかきすぎたんですよ」

農地を拡げれば儲かる。
税金を集める側は。

「貧乏人に土地をやって無理にでも開拓させれば、そのまま放っておくより税金を取れますもんね?」
「…っ」
「それに、随分色々と買い叩かれましたが、それらを運んだ先では一体いくらで取引されていたんでしょうね?」
「…、君は」
「貧乏人を搾取し、さらなる貧困へ追い込んだ後、最後には魔物に喰わせて処分する。
 それが一番金のかからない方法…つまり、儲かる方法というところですかね?」
「……」
「ですから、皆さんの到着が遅くなったからといって、領主様はお怒りになったりしませんよ。
 むしろ喜んで下さるのでは?」

こんなところで彼らにこんな事を言うなんて、八つ当たりも良い所だろう。
それでも言わずにいられなかった。
騎士というのは、どちらかといえば搾取する側だと思ったからだ。
少なくとも子どもを売らなきゃならない程、困窮した事もないはずだしな。

俺は言うだけ言って黙った。
これで彼らがキレて俺を攻撃するなら、魔法で応戦してやるつもりで。

「…君は」
「……何です」

だが、またもや俺の想像は外れた。
あの、地面を叩いた騎士はこう言ったのだ。

「…君は、随分と賢いんだな」

だから俺は咄嗟に返した。

「見た目より多少長く生きてますから」
「……へえ」

嘘ではない。
この世界に生まれてからは10年も経っていないが、前世を含めれば60年程度の人生経験と知識がある。

ちょっと軽口な騎士が聞いた。

「じゃあお前、いくつなんだ?」
「今、いくつに見えます?」
「俺がお前に聞いてるんだけど?」
「貴方の予想の2倍は生きてますよ」

すると、地面を叩いた方の騎士が言った。

「なるほど、10歳…か」

…俺が5歳程度に見えたのか、それとも実際の年齢を聞き出す為のブラフだったのかは分からない。
だから俺はこう言ったんだ。

「多分、貴方より年上ですよ?」

…と。

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