【完結】ざまぁは待ってちゃ始まらない!

紫蘇

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【過去ばなし】チート魔術師とチャラ男令息

王位簒奪と静養

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城の大広間はすっかり取り囲まれていた。

「シド、結界を掛ける」
「りょーかい、いち、にの、さん!」

俺が初めて作ったのと同じ結界で、シドをシドの形に包む。

「全員吹っ飛ばせ、シド!」
「とーぜん!」

すぐに前へ駆けるシド。
雁首揃えて魔術詠唱のカンペを見ていた連中を吹っ飛ばしながら走っていく。
連中はカンペごと宙に舞い、その一部が俺の足元に落ちる。

どうやら、奴ら大広間を大々的に燃やすつもりだったらしい…
はっ。

「情けねえ連中だ、この程度が覚えられんとは」

というよりも、出来る奴がもう残ってないのかもな。
思いっきり叩き潰してきたし。

「っと、のんびりしてる場合じゃねえな」

俺も自分を風に乗せて前に出る。
大広間は1・2階をぶち抜いた構造になっている…ってことは、2階にも敵はいるし、3階…
つまり天井にも敵がいると考えていい。

…やつらがそこまで阿呆でなければな!

シドが吹っ飛ばした奴らを踏みつけつつ、シドを追う。

「シド、俺は広間を守る。
 出来る限り外周、人数減らしてくれ!」
「りょーかい、誰か応援、よろしく!」

俺はシドと分かれ、大広間へ。
正面入口の前で長々しい詠唱をしている連中を全員から扉の中に飛び込む。

「おー、どうしたギゼル」
「すまん、今起きた」
「ふむ?何かあったのか」
「今ちょうど囲まれてる」

俺は中にいたユッカさんに報告した。
するとユッカさんは言った。

「ああ、知ってる。もうビゼーと数名に『心配だから外の様子を見てこい』と頼んである」
「さすがユッカさん!
 ああでも誰か、シドの手伝い出てくれないか、頼まれたし、結界掛ける前に、頼むわ」
「分かった…おい!誰か、暴れたい奴はいるか!」

ユッカさんの声に、数人が反応してスタッフ専用口を出て行く。
俺はそれを見守ってから、広間の中心まで歩き…

「…結構な広さだが、まあ出来ん事はない」

何が起きるんだ、と少々ざわつく室内。
構わず俺は詠唱する。

「結界、魔法・反射、物理・武具攻撃制限、中範囲エリア展開、指定・大広間、床から壁、天井まで、固めろ」
「え、うわぁ!?」

透明な魔力が俺を中心に部屋の床から壁、天井までを駆け上がる。
これで良し。

地下から襲ってくる可能性もあるからな…
一応固めたけど、どうだろうな。

と、そこまで回想した時、大きな爆発音。

ドガン!!「ひぃ!?」「何だ!?」
「落ち着け、結界を張ってある」
「えっ…あ、本当だ、何とも無い…」

ちょっとだけ揺れる大広間…やっぱ地下でも何かしてたか。
結界の外でも悲鳴が聞こえる。
多少返ってきたんだろうな…
自分がやられる事を想定出来ていないのか。

「さて、これを指示した連中は…と」

俺は結界の外へ一人で出る。
何せ他の人間は出入りできない仕様だからな。
転がる敵を避けつつ庭に出て、王宮の一番高いところを睨む。

そこには煌々と灯りがついていて、部屋の中に数人の影がちらほらと…

「一杯やりつつ高みの見物…ってか?」

まあいい、あの一番立派なベランダに、一撃食らわしてやるとしよう。

「……神罰級の雷、」バチバチ…
「食らいやがれ!!」ガァン!!

空からでかいのが一発降って来て、直撃。
って…

「ちょっと、やりすぎたかな…?」

ベランダ側の外壁、最上階から1階まで全部無くなっちゃった。
どうしよう…うーん…
…うん。

「まっ、いいか」

後は新しい王様に任せよう。
俺は頼まれただけだからな。

***

こうして、第一王子のクーデターは成功した。

恐怖で仲良く失禁していた王と第二王子、及びその取り巻き共は拘束され、地下牢へブチ込まれた。
全員消し炭にしてやろうと思ったのにしくじった。
ま、そうすると暫くこの部屋が使えなくなる所だったし、結果オーライ…まあまあ小便臭いけどな。

「無事に終わって、何よりだ」
「ああ、ここからは私の番だ。
 必ずこの国を建て直し、以前より豊かで平穏に民が暮らせるようにしてみせる。
 ギゼル殿にはご負担をかけた…どうか今はご静養くださるだろうか」

王位を簒奪した第一王子は、外壁の吹っ飛んだ王の間の玉座に座り、自分で王冠を被った。
これから王として、魔物の大増殖で出た被害と無理な税金で疲弊した人々の為に戦うのだろう。

とはいえ金庫には金貨の山、宝物庫には宝石の山。
没収した財産も倉庫に山積み…

資金には困らなさそうで何よりだ。

「壁はまた直しに来る…すまんが残党の処理はそっちでしてくれ」
「いやいや、こちらこそ壁まですまんな」
「で、どこへ隠れていればいい?」
「ああ、それはもう頼んである……メルバ!」

は?メルバ?
それって、キャンディッシュの…あの、彼か?

俺が焦って扉の方を見ると、やっぱりあの金髪がお出ましになった。
そして恭しく一礼すると、言った。

「何で御座いましょう、陛下」
「ギゼル殿をキャンディッシュ家にお連れしろ」
「畏まりました、陛下」
「おいちょっと待「では失礼致します、陛下。
 それでは参りましょう、ギゼル殿」!?」

そう言うと、メルバは俺を軽々と抱き上げ、って…
な ん で だ よ !?

「第27騎士団も今日から1年間王都勤務ですし、暫くはのんびり王都で暮らせますよ!」
「ああ、そう…じゃ、無え!
 何であんたの家に匿われなきゃいけないんだ、一応俺には自分の家だって…」

俺は抵抗した。
寝る所はどうでも良かったが、この体勢には大いに文句がある!

だがメルバの腕の中で暴れる俺に、新王は驚愕の事実を伝えた。

「申し訳ない、ギゼル殿。
 あなたの家は、その…昨日、燃えた」
「……は?」
「残党どもが腹いせに放火したようでな」
「なぁああ!?」

なんてこった、俺の家が…!
って、まあ、そんなに思い入れも無いけどな。
ほぼ使ってないし。

「残念ながら全焼だ…
 燃え残った物は一つも無い」
「だろうな!!」

大事なものは置いてない。
全部トランクに入れて持ち歩いている。
昨日から王宮のクロークに預けっぱなしだ。

「…って、降ろせ!1人で歩ける!!」
「いけませんギゼル殿、あなたは万全ではないのですから」
「万全でなくても行軍すんのが騎士団だ!」

何とか抵抗しようとするも、どうしてかうまくいかない。
こいつも何らかの魔法を使ってんじゃないだろうな…

「はーなーせ!はなせってば!」
「ふふっ…可愛いですね、ギゼル殿。
 では陛下、失礼致します」
「おー、頑張れよメルバ」

「かわいくねーーーわ!!!」


…そうして俺は王宮の馬車乗り場までお姫様抱っこで運ばれ、クローク係が慌てて持ってきたトランクと共にキャンディッシュ家の屋敷に送られたのだった…。


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