【完結】ざまぁは待ってちゃ始まらない!

紫蘇

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向かえ!大団円

【ブレック】置いていかれた2人の会話

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「いやぁ、ようやく合流できそうですな」
「まったく…すっかり置いていかれてしまいましたからね」

私とスミス殿は南端の村でヨーク殿とロンバード様を見送った後、あれやこれやと連絡したり王都へ行ったりの雑用を何とか片付け、キャンディッシュ領の魔術師ギルドのご厚意で東端の村一つ手前まで箒で運んで頂き…

「しかし、バレン一味が捕まったのは良かった。
 あそこが一番大きな転売組織でしたからな」
「そうでしょうね、まさかドラークの中心部まで手を伸ばしていたとは」
「それどころか、ロンバード殿の飴を武器に様々な国へ販路を広げておりましてな」

バレンがあれほど大きな組織を作る事が出来たのは、あの飴の存在にいち早く気が付いたからだ。

ロンバード様の作った物は色々あれど、あの魔法の飴だけは量産化できない為に転売の格好のネタだった。

もちろん、最初は真っ当な方法であの飴を手に入れようと、各国が接触を図りに来た。
研究して量産化できればしめたもの…と、各国の研究機関があの飴を求めてオーセンに書簡を送ってきたり間諜を送って来たり使者を立てたり…。

だがあの飴は、いつでも数を揃えられるものではない。
魔法の飴作りはロンバード様の善意であって、国家として命じたものではなく、命じられるものでもなかったから。

何故なら、あの大魔術師が「息子に仕事をさせるのは22歳以降だ」と主張なさったからだ。
そこを何とか18歳まで引き下げて頂くだけでも大変な交渉で…。

それでも、魔術塔に出入りして貰ったりダリル殿下を通じてお願いして頂いたり、セジュール殿に頭を下げたりして何とか数を確保するために努力してきた。

大魔術師殿は過保護すぎる、と何度も陰で愚痴を言いたくなるぐらいに。


ロンバード様は全く知らないが、あれは我が国の交渉材料なのだ。
オーセンに何か不利益な事をすれば、二度と飴は譲らない…と、圧をかけられる程の。

それを金で買えるのであれば、予算をつけて買う国が出るのも当然…
オーセン国内なら高くとも200万前後で済むが、それを外国へ持って行けばいくらになるか想像もできない。


「しかし一番の組織が無くなると、残った小さな組織同士の抗争が増えませんか?」
「勿論それも織り込み済みですぞ!
 もう第3騎士団には各組織に名称を付け、どこを根城にしているかを把握しております。
 元々密売組織だったり暗殺組織だったりと、まあ様々ありましてね」
「暗殺組織…ですか!?」

そうか、それほど色々な地下組織もあれを資金源にしようと…。
あの飴は、それほどの狂乱を産んだのか。

「…そんな物騒な組織までが関わるとは」
「ええ、これまでその概要を掴むのは大変難しかった組織までが、です。
 ですから、むしろ「魔法の飴で儲かる」と商売っ気を出してきたおかげで尻尾を掴めて良かったという話ですな」
「……なるほど」

私はもう、唸るしかなかった。
それはつまり、リブリー陛下は「あの飴が及ぼす影響」をすでに計算していた…という事だ。

「…その為に、今まで魔法の飴を野放しにしてきたのかもしれませんね」
「はは、そうかもしれませんな!
 リブリー陛下は謀略と策略の中で生きて来られた方ですから」
「……そうですね」

もしかしたら、すでにこの状況を計画なさっていたのかもしれない。
ダリル殿下とロンバード様の間に割って入る男の事は、知らなかったとしても…。

「どこからどこまでが、陛下の手の中なのでしょうね」
「はは、恐ろしくやり手なお方ですからな」

そうでなければ、あれほど冷遇されていた中で慈善事業の資金を得たり、学園の人事権を持つ事など出来ますまい…と、スミス殿は笑った。

「…第3騎士団は、リブリー陛下に近かったのですか」
「ええ、そうです!
 …第1と第2が投げ出した事は、第3がやるのが当たり前でしたからな」
「ああ…なるほど」

つまりそこも、リブリー陛下の手の中…。

「そりゃ、前王や弟王子じゃ勝ち目が無いな」

ポム上官と同世代の大使や外交官は、随分と尻拭いをさせられたと聞く。
もしもの時はオーセンを分割して譲り渡す…という5大国との間の条約は、その名残だ。

「リブリー様が王になられなければ、この国はとっくに消えてなくなっておりましたでしょうな」
「そうかもしれませんね」

まだ、前王時代の負の遺産はある。
全て返し終えられるのは…いつの日になるのだろう。

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