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02. わたしと先輩の出会い
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五行姫奏先輩は、わたしを含めた多くの生徒の模範でもあり、目標でもあり、お手本だった。
お姉さま……五行先輩の事を知ったのは入学式の時。いろいろな事情があって、高校から星花女子学園に通うようになった、初めての日。
在校生代表の生徒会長として、わたしたち新入生に挨拶のスピーチをしにステージに立ったときに初めて五行先輩を知った。
初めての印象は、とっても綺麗な人だなぁ……。だった。こんな一言になっているけれど、本当はもっと、言葉にならないほどの魅力や美しさ、雰囲気を醸し出していて、思わずうっとりみとれた。
いろいろ聞いていくうちに、先輩も高等部からの入学で、その美しい仕草、可愛らしい容姿、入学試験の結果から今までのすべての試験において全てでトップの成績をもっていること、お父様が天寿ではない、別の財閥の社長をしているお嬢様だということ、とっても厳しく、怖いということを知った。
それと同時に、誰しもが憧れ、尊敬し、目標としているすごい先輩だということも知った。
たまたま任されたクラス委員の仕事や、友達から頼まれる事をしているうちに、生徒会の活動とかで時々目にすることが多くなった。話した事もないし、先輩が私を見たことなんて、初めての生徒会活動の時に、大勢の中の一人として挨拶をしたときだけだ。
五行先輩はわたしをチラッとみただけで、きっと名前も顔も覚えていてくれてないと思うけど、わたしは、ほんの一瞬見られただけなのに、ものすごく緊張してしまった。言葉が出なくなり、小さく体が震え、落ち着かなくなってしまう。聞くところによると、わたしだけじゃなくて多くの生徒もそんな風になるらしい。
でも、わたしは五行先輩目当てに、きゃーきゃー騒いでいる人たちに加わる気にもなれず、一人黙々と仕事を続けていた。
そんなある日、用事で忙しいという友達の仕事を頼まれてから、次第に私の仕事量は増えていった。
なんだか怖くて断れず、つい受けてしまう仕事の数々。量が増えることでかかる時間。時間がかかるせいで責められる日々。それでもなお減らない仕事のせいで、自分自身の仕事も十分に出来ず、ただひたすら頼まれたことをこなす日々。
わたしの心の支えは、あこがれの五行先輩の事を考えることと隙間の時間にする華道。五行先輩を想いながら華道をしている時だけは、いやなことを忘れさせてくれた。
でも、夏休み後半となった今日、ついに生徒会の先輩から『仕事が遅い。もっと真面目にやりなさい』と言われてしまった。
わたしはきちんと仕事をしているのに。わたしもしっかり仕事がしたいのに。
抑えきれない感情。悲しくなって走っているうちに、たまたまみつけた空き教室の隅っこにしゃがみこんで、膝に顔を埋めて泣いていた。
「……ぐすっ、わたしのせいじゃないのに。ひっく。わたしのせいじゃないのに……。ぐすっ、なんで私が責められなきゃいけないの……ふぇぇ」
と。
ひたすら泣いて、泣いて、泣いて。しばらくして、落ち着いた私は立ち上がって教室を出る。時計をみると、一時間近くこの教室にいたみたい。
と、視界の端に、どこかでみたことがある、紫っぽい黒の髪の毛が映った。
ハッ、として顔をあげると、ずっと憧れていた、夢にまでみた五行先輩が壁に寄りかかって下を向いていた。
お姉さま……五行先輩の事を知ったのは入学式の時。いろいろな事情があって、高校から星花女子学園に通うようになった、初めての日。
在校生代表の生徒会長として、わたしたち新入生に挨拶のスピーチをしにステージに立ったときに初めて五行先輩を知った。
初めての印象は、とっても綺麗な人だなぁ……。だった。こんな一言になっているけれど、本当はもっと、言葉にならないほどの魅力や美しさ、雰囲気を醸し出していて、思わずうっとりみとれた。
いろいろ聞いていくうちに、先輩も高等部からの入学で、その美しい仕草、可愛らしい容姿、入学試験の結果から今までのすべての試験において全てでトップの成績をもっていること、お父様が天寿ではない、別の財閥の社長をしているお嬢様だということ、とっても厳しく、怖いということを知った。
それと同時に、誰しもが憧れ、尊敬し、目標としているすごい先輩だということも知った。
たまたま任されたクラス委員の仕事や、友達から頼まれる事をしているうちに、生徒会の活動とかで時々目にすることが多くなった。話した事もないし、先輩が私を見たことなんて、初めての生徒会活動の時に、大勢の中の一人として挨拶をしたときだけだ。
五行先輩はわたしをチラッとみただけで、きっと名前も顔も覚えていてくれてないと思うけど、わたしは、ほんの一瞬見られただけなのに、ものすごく緊張してしまった。言葉が出なくなり、小さく体が震え、落ち着かなくなってしまう。聞くところによると、わたしだけじゃなくて多くの生徒もそんな風になるらしい。
でも、わたしは五行先輩目当てに、きゃーきゃー騒いでいる人たちに加わる気にもなれず、一人黙々と仕事を続けていた。
そんなある日、用事で忙しいという友達の仕事を頼まれてから、次第に私の仕事量は増えていった。
なんだか怖くて断れず、つい受けてしまう仕事の数々。量が増えることでかかる時間。時間がかかるせいで責められる日々。それでもなお減らない仕事のせいで、自分自身の仕事も十分に出来ず、ただひたすら頼まれたことをこなす日々。
わたしの心の支えは、あこがれの五行先輩の事を考えることと隙間の時間にする華道。五行先輩を想いながら華道をしている時だけは、いやなことを忘れさせてくれた。
でも、夏休み後半となった今日、ついに生徒会の先輩から『仕事が遅い。もっと真面目にやりなさい』と言われてしまった。
わたしはきちんと仕事をしているのに。わたしもしっかり仕事がしたいのに。
抑えきれない感情。悲しくなって走っているうちに、たまたまみつけた空き教室の隅っこにしゃがみこんで、膝に顔を埋めて泣いていた。
「……ぐすっ、わたしのせいじゃないのに。ひっく。わたしのせいじゃないのに……。ぐすっ、なんで私が責められなきゃいけないの……ふぇぇ」
と。
ひたすら泣いて、泣いて、泣いて。しばらくして、落ち着いた私は立ち上がって教室を出る。時計をみると、一時間近くこの教室にいたみたい。
と、視界の端に、どこかでみたことがある、紫っぽい黒の髪の毛が映った。
ハッ、として顔をあげると、ずっと憧れていた、夢にまでみた五行先輩が壁に寄りかかって下を向いていた。
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