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接近
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制服の上着は脱がせたが、それ以上の着替えはさせなかった。遊星の性格からして、目が覚めた時に恐縮しそうだったからだ。
(まあ、部屋に運ばれただけでも十分だろうけど)
ギルドで、遊星の面倒は見ないと言っている。あと、関わる気が全くないとも。
(だけど僕にも、言い分がある)
そう結論付けたところで、ベッドの横に椅子を置き、腰掛けていたアルバは遊星の頬が土で汚れていることに気づいた。
そのままにするつもりもないが、遊星から離れる気もない。それ故、制服のポケットからハンカチを取り出して躊躇せず遊星の頬から汚れを拭うと、アルバの視線の先で遊星の瞼がピクッと動いた。
そしてしばし無言で見つめていると、眉が寄ってゆっくりと瞼が開いて――アルバに気づいた瞬間、黒い瞳が大きく見張られてそのまま固まった。
「……キメラの歪みを正した後、気絶したんですよ」
「あっ……ごめ……」
「君が謝る必要なんてない」
この状況に戸惑いながらも、まず謝ろうとする遊星をキッパリと制する。それに丸い目を、更に真ん丸く見開く遊星にアルバは言葉を続けた。
「死神も去りましたし、犠牲者も出ませんでした……あぁ、それぞれの使い魔を置いてきてしまいましたが。まあ、子供じゃないので何とかするでしょう」
「え、あの……っ!?」
「具合が悪いなら、大人しくして下さい」
淡々としたアルバの言葉だったが、後半の内容に慌てたのだろう。寝かせたベッドから慌てて飛び起きようとしたが眩暈か、あるいは力が入らなかったのかすぐに突っ伏してしまった。
先程から、それ程時間も経っていない。いくら神から、色々と加護を受けているとは言え――いや、逆にそんな遊星が倒れるくらいなのだ。せめて一晩は休むべきであり、だからこそアスセーナにも明日以降と言ったのである。
(とりあえず目立つ汚れは拭いたから、着替えももう少し落ち着いてからでもいいか)
そう結論付けて、再び椅子に腰掛けたアルバに膝に頭を乗せた状態で遊星が口を開く。
「……ありがとう。ここまで運んでくれた……んだよな?」
お礼を言い、ただアルバの言動からか疑問形になるのに少し考えて言葉を紡ぐ。
「そう思うなら、態度で示して下さい」
「えっ!?」
「落ち着いて下さい」
途端にハッと顔を上げ、再び辛かったのか顔を伏せる遊星にやれやれとため息をつく。
相手の顔が見えないということは、自分の顔も相手からは見えないということで――それは好都合だと、アルバは思った。
「今でも、面倒を見るつもりはありません」
「……うん」
「ただ、関わらないのは……仕方ないので、諦めます」
そう続けたアルバに、遊星の肩が驚きからか跳ねる。とは言え、流石に学習したのか顔は上げないままだ。
そんな相手のつむじを見下ろしながら、アルバは言った。
「君が倒れた時に「嫌だ」と思いました」
「えっ……」
「馬鹿でお人好しなところは、腹が立ちますが……嫌いだったら、何も思いません。嫌いじゃなくて、君に何かあるのが嫌なら関わるしかないじゃないですか。だから、僕の目の届くところにいて下さい。そしてどうか、危ない目に遭わないで下さい」
アルバの言葉に、遊星は顔を伏せたままだったが――やがて、その耳が真っ赤になったのが解った。
「……ツンデレの破壊力、怖い」
「は? 何ですか? ツン……」
「言わなくていいからっ……あの、それならアルバも敬語やめない? その、同級生なんだし」
「この喋り方が、楽なので」
何故か遮られたのは面白くなかったが、義母に引き取られてからのこの口調を今更、直すつもり方が面倒だ。だからこそそう言うと、ふ、と遊星の肩から力が抜けた。
「……それじゃあ、仕方ないよなぁ」
顔は見えないが、何となく遊星が笑ったのが解った。
子供のように、好き嫌いの感情論を面と向かって話すのも何なので、先程は好都合だと思ったが――今は少しだけ、遊星の笑顔が見られないのを惜しいと思った。
(まあ、部屋に運ばれただけでも十分だろうけど)
ギルドで、遊星の面倒は見ないと言っている。あと、関わる気が全くないとも。
(だけど僕にも、言い分がある)
そう結論付けたところで、ベッドの横に椅子を置き、腰掛けていたアルバは遊星の頬が土で汚れていることに気づいた。
そのままにするつもりもないが、遊星から離れる気もない。それ故、制服のポケットからハンカチを取り出して躊躇せず遊星の頬から汚れを拭うと、アルバの視線の先で遊星の瞼がピクッと動いた。
そしてしばし無言で見つめていると、眉が寄ってゆっくりと瞼が開いて――アルバに気づいた瞬間、黒い瞳が大きく見張られてそのまま固まった。
「……キメラの歪みを正した後、気絶したんですよ」
「あっ……ごめ……」
「君が謝る必要なんてない」
この状況に戸惑いながらも、まず謝ろうとする遊星をキッパリと制する。それに丸い目を、更に真ん丸く見開く遊星にアルバは言葉を続けた。
「死神も去りましたし、犠牲者も出ませんでした……あぁ、それぞれの使い魔を置いてきてしまいましたが。まあ、子供じゃないので何とかするでしょう」
「え、あの……っ!?」
「具合が悪いなら、大人しくして下さい」
淡々としたアルバの言葉だったが、後半の内容に慌てたのだろう。寝かせたベッドから慌てて飛び起きようとしたが眩暈か、あるいは力が入らなかったのかすぐに突っ伏してしまった。
先程から、それ程時間も経っていない。いくら神から、色々と加護を受けているとは言え――いや、逆にそんな遊星が倒れるくらいなのだ。せめて一晩は休むべきであり、だからこそアスセーナにも明日以降と言ったのである。
(とりあえず目立つ汚れは拭いたから、着替えももう少し落ち着いてからでもいいか)
そう結論付けて、再び椅子に腰掛けたアルバに膝に頭を乗せた状態で遊星が口を開く。
「……ありがとう。ここまで運んでくれた……んだよな?」
お礼を言い、ただアルバの言動からか疑問形になるのに少し考えて言葉を紡ぐ。
「そう思うなら、態度で示して下さい」
「えっ!?」
「落ち着いて下さい」
途端にハッと顔を上げ、再び辛かったのか顔を伏せる遊星にやれやれとため息をつく。
相手の顔が見えないということは、自分の顔も相手からは見えないということで――それは好都合だと、アルバは思った。
「今でも、面倒を見るつもりはありません」
「……うん」
「ただ、関わらないのは……仕方ないので、諦めます」
そう続けたアルバに、遊星の肩が驚きからか跳ねる。とは言え、流石に学習したのか顔は上げないままだ。
そんな相手のつむじを見下ろしながら、アルバは言った。
「君が倒れた時に「嫌だ」と思いました」
「えっ……」
「馬鹿でお人好しなところは、腹が立ちますが……嫌いだったら、何も思いません。嫌いじゃなくて、君に何かあるのが嫌なら関わるしかないじゃないですか。だから、僕の目の届くところにいて下さい。そしてどうか、危ない目に遭わないで下さい」
アルバの言葉に、遊星は顔を伏せたままだったが――やがて、その耳が真っ赤になったのが解った。
「……ツンデレの破壊力、怖い」
「は? 何ですか? ツン……」
「言わなくていいからっ……あの、それならアルバも敬語やめない? その、同級生なんだし」
「この喋り方が、楽なので」
何故か遮られたのは面白くなかったが、義母に引き取られてからのこの口調を今更、直すつもり方が面倒だ。だからこそそう言うと、ふ、と遊星の肩から力が抜けた。
「……それじゃあ、仕方ないよなぁ」
顔は見えないが、何となく遊星が笑ったのが解った。
子供のように、好き嫌いの感情論を面と向かって話すのも何なので、先程は好都合だと思ったが――今は少しだけ、遊星の笑顔が見られないのを惜しいと思った。
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