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ウィラードには通じないだろうが
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その後、ひと眠りしたクララベルは予想通りお腹が空いたことに安堵した。最初は気を使われ、寝台でパン粥を出されたが朝昼ほとんど食べておらず、ペロリと食べたのを見て急遽、焼いたソーセージが運ばれてきた。恥ずかしいが、食いしん坊なのは今更だ。逆に今遠慮して、後から空腹でお腹を鳴らす方が大変なので、ありがたく頂戴する。
「熱っ……おいし……」
「それは良かった」
フォークで刺してかじった途端、パリッとした皮から熱々のソーセージと溢れた肉汁が口の中に広がり、たまらずに声が出た。そんなクララベルを、傍らに運んだ椅子に腰かけたウィラードが微笑ましげに眺めてくる。
「食べますか?」
「いや、早く回復した君と一緒に食べたり、君の作った料理を味わいたいから、しっかり食べて治してくれ」
「……はい」
子供に言い聞かせるような口調だと思ったが、確かにその通りだと思う。何より、自分もこんな風に寝台で病人のように食事をするのではなく、早く治して食堂で一緒に、あるいはクララベル自身がまたフライパンで料理を作って、ウィラード達に振る舞いたかった。
……その気持ちが功を成し、クララベルは数日後にはいつもの調子でフライパン料理を作れるようになった。
そんなクララベルは、昼には元気になったということで侍女によりお風呂に入ったのだが──その日の夜、用意されたのは色こそ同じ白だがいつものシンプルな夜着ではなく、襟や裾は繊細なレースで、胸元はリボンで飾られている上に透けていた。歴史的にはもっと先の話だし、クララベルが前世で知る『ベビードール』より丈は長いしワンピース型ではあるが、目的は同じだと思う。ウィラードの『本当の意味での』妻になりたいと思ったのは、恥ずかしくてウィラード以外には誰にも言っていなかったのだが。
(でも、そう……そうよね。夫婦なんだし、こうして部屋だけじゃなく寝台も同じになったんだし)
そこまで考えて、クララベルはハッとして寝台に持ち込んでいた『護身用のフライパン』を取り出した。そして、どこに隠そうかと視線を巡らせたところで──笑うのを堪えているウィラードに気づいて硬直し、次いで全身真っ赤になった。ウィラードには通じないだろうが『YesNo枕』で『Yes』を出している状態だからである。
「あ……う」
「落ち着け……座って、話そうか。頭を撫でても、大丈夫か?」
「うっ……うん」
唸るような声を上げるクララベルを促して寝台に座らせ、ウィラードがその横に腰かけてきた。そして尋ねられるのに頷くと、ウィラードは大きな手でクララベルの頭を撫でてくれた。
……これは一緒に眠るようになってから、ウィラードがクララベルにしてくれるようになったことだ。
スキンシップではあるのだが、異母兄であるアンドレアとは違うと示してくれることでもある。おかげで、クララベルは落ち着くことが出来た。そして、落ち着いたことで初心に帰ることも出来た。
「初めても、これからも……ウィラードが、いいの」
「俺も、クララベルがいい……好きだ」
「私、も……んっ……」
顔を上げ、真っ直ぐにウィラードの目を見てそう言ったクララベルに、ウィラードが答えて更に告白してくれた。それに返事しようとしたクララベルの唇が、ウィラードの唇に塞がれる。
初めての時とは違い、二度、三度と唇が重なり、その触れ合いは次第に深くなっていった。力の抜けたクララベルの体が、いつしか寝台に横たわる。
そんな彼女に覆い被さってくるのは、悍ましい異母兄ではなくウィラードで──笑顔や言葉で追い詰めるのではなく、クララベルの名前を読んだり好意を告げて、彼女の気持ちを確かめるように触れてくる。
「……すき」
だからクララベルも嬉し涙を流しつつ、ウィラードを抱きしめる腕に力を込めて精一杯、気持ちを伝えるのだった。
「熱っ……おいし……」
「それは良かった」
フォークで刺してかじった途端、パリッとした皮から熱々のソーセージと溢れた肉汁が口の中に広がり、たまらずに声が出た。そんなクララベルを、傍らに運んだ椅子に腰かけたウィラードが微笑ましげに眺めてくる。
「食べますか?」
「いや、早く回復した君と一緒に食べたり、君の作った料理を味わいたいから、しっかり食べて治してくれ」
「……はい」
子供に言い聞かせるような口調だと思ったが、確かにその通りだと思う。何より、自分もこんな風に寝台で病人のように食事をするのではなく、早く治して食堂で一緒に、あるいはクララベル自身がまたフライパンで料理を作って、ウィラード達に振る舞いたかった。
……その気持ちが功を成し、クララベルは数日後にはいつもの調子でフライパン料理を作れるようになった。
そんなクララベルは、昼には元気になったということで侍女によりお風呂に入ったのだが──その日の夜、用意されたのは色こそ同じ白だがいつものシンプルな夜着ではなく、襟や裾は繊細なレースで、胸元はリボンで飾られている上に透けていた。歴史的にはもっと先の話だし、クララベルが前世で知る『ベビードール』より丈は長いしワンピース型ではあるが、目的は同じだと思う。ウィラードの『本当の意味での』妻になりたいと思ったのは、恥ずかしくてウィラード以外には誰にも言っていなかったのだが。
(でも、そう……そうよね。夫婦なんだし、こうして部屋だけじゃなく寝台も同じになったんだし)
そこまで考えて、クララベルはハッとして寝台に持ち込んでいた『護身用のフライパン』を取り出した。そして、どこに隠そうかと視線を巡らせたところで──笑うのを堪えているウィラードに気づいて硬直し、次いで全身真っ赤になった。ウィラードには通じないだろうが『YesNo枕』で『Yes』を出している状態だからである。
「あ……う」
「落ち着け……座って、話そうか。頭を撫でても、大丈夫か?」
「うっ……うん」
唸るような声を上げるクララベルを促して寝台に座らせ、ウィラードがその横に腰かけてきた。そして尋ねられるのに頷くと、ウィラードは大きな手でクララベルの頭を撫でてくれた。
……これは一緒に眠るようになってから、ウィラードがクララベルにしてくれるようになったことだ。
スキンシップではあるのだが、異母兄であるアンドレアとは違うと示してくれることでもある。おかげで、クララベルは落ち着くことが出来た。そして、落ち着いたことで初心に帰ることも出来た。
「初めても、これからも……ウィラードが、いいの」
「俺も、クララベルがいい……好きだ」
「私、も……んっ……」
顔を上げ、真っ直ぐにウィラードの目を見てそう言ったクララベルに、ウィラードが答えて更に告白してくれた。それに返事しようとしたクララベルの唇が、ウィラードの唇に塞がれる。
初めての時とは違い、二度、三度と唇が重なり、その触れ合いは次第に深くなっていった。力の抜けたクララベルの体が、いつしか寝台に横たわる。
そんな彼女に覆い被さってくるのは、悍ましい異母兄ではなくウィラードで──笑顔や言葉で追い詰めるのではなく、クララベルの名前を読んだり好意を告げて、彼女の気持ちを確かめるように触れてくる。
「……すき」
だからクララベルも嬉し涙を流しつつ、ウィラードを抱きしめる腕に力を込めて精一杯、気持ちを伝えるのだった。
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