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文化祭の灰かぶり君3
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「すみません、真白を巻き込んでしまって」
「は?」
「あ、劇が始まったら客も減るでしょうから。真白、観に行かせますか?」
「え?」
「違いましたか? じゃあ、生徒会の皆様を探しに?」
そう俺が聞いたら、副会長がキッと睨みつけてきた。これはもう、ただ単に俺が気に食わないってオチか?
「僕は、君に聞いているんです!」
「俺、ですか?」
「意地を通して頑張ったって、良いことなんて何もないじゃないですか!」
「ありましたよ……副会長様に、怒って貰えました」
うん、腹黒副会長に(真白とかが絡まない状態で)怒って、って言うか心配して貰えるなんてレアだと思う。あとは、委員長とも仲良くなれたし。風紀委員長に、大福貰えたしな。
「ありがとうございます。だけど、何でもかんでも逃げるのも悔しいんで今回は頑張ってみます。失礼します」
それから、呆れたのか反論してこない副会長に頭を下げて、俺は調理室へと走り出した。
「……全く。何を言っているんだか」
だから、副会長がそう呟いてSクラスに向かったことを俺は知らない。
「ちょっと、見た!?」
「見た見た! 紫苑様の微笑みっ」
それから、そんな副会長とすれ違ったチワワ達がそう盛り上がっていたことを。
※
……三時になり、文化祭終了を知らせる放送が流れる。
「終わったー!」
「お疲れっ」
衝立の向こうから聞こえてきた真白達の声に、俺もホッと息をついた。教室の片づけこそあるが、とりあえず何とかやりきれたぞ。
「よう」
「「先生?」」
「橙司!」
「ホスト!」
「……柏原、お前な」
と、聞こえてきた声に俺は何だ、と顔を出した。
そしてホストこと橙司先生と、その手に持っているコンビニ袋とのミスマッチに首を傾げた。
「お疲れさん、差し入れだ」
これくらいは良いだろ、と言って橙司先生は俺にコンビニ袋を渡す。
うん、確かに口出しを控えてくれて助かった。先生が介入してたら、また面倒なことになってただろうからな。
(本当、見かけによらず空気を読んでくれる人だよな)
だから、俺は「ありがとうございます」とお礼を言って、コンビニ袋の中を見た。
……そしてそこにあったおにぎりを見た瞬間、グウ、と俺の腹が鳴り。
「食べていい、ですか?」
「お、おう!」
橙司先生に尋ねると、腹の音に驚いたのか軽く目を見張りつつも、頷いてくれた。
立っているのも何なんで、俺は床に座り「いただきます」と言って、おにぎりを口に入れた――美味い、そして鮭ハラミだ。
「出灰……腹、減ってたんだな」
「ん、みたいだな」
真白に聞かれて、俺は他人事みたいに答えた。
本当に、さっきまでは別に何かを食べたいなんて思ってなかった。自覚してなかったけど、結構、いっぱいいっぱいだったのかな、俺。
「オ、オレの分も食うか?」
「いいよ。もう一個あるし、お前も食ってないだろ……って、おい?」
メイドの格好のまま、床に座ろうとした真白に俺は慌てた。
それから、俺が立ったのに合わせて立ち上がる真白を見て思う。
(そっか、これも……一緒に並んで食うのも『お揃い』か)
女子か、と思ったけどまあ、真白には似合うし可愛いから良いか。そう結論づけた俺に、一茶達が声をかけてくる。
「出灰、ここで食べようよ」
「今回は、一茶に賛成。もう、ご主人様やお嬢様も来ないしね」
「そうだね」
さっきまで、客がケーキを食べてお茶をしていたテーブルと椅子を示されたのに、俺は無言で頷いた。
それから、橙司先生が俺の肩をポンッて叩いて教室を出て行った後――俺は、皆と一緒に差し入れのおにぎりを食べて、ペットボトルのお茶を飲んだ。
走り回ってたせいで、だるくなった足を伸ばしながら――終わったんだな、って俺は心の中で呟いた。
(これも『良いこと』ですよ、副会長)
……文化祭を回って、楽しむことは出来なかったけど。
こいつらと一緒に、何とかケーキ屋をやりきれたから十分だ――小説にするには、ちょっと地味かもしれないけどな。
「は?」
「あ、劇が始まったら客も減るでしょうから。真白、観に行かせますか?」
「え?」
「違いましたか? じゃあ、生徒会の皆様を探しに?」
そう俺が聞いたら、副会長がキッと睨みつけてきた。これはもう、ただ単に俺が気に食わないってオチか?
「僕は、君に聞いているんです!」
「俺、ですか?」
「意地を通して頑張ったって、良いことなんて何もないじゃないですか!」
「ありましたよ……副会長様に、怒って貰えました」
うん、腹黒副会長に(真白とかが絡まない状態で)怒って、って言うか心配して貰えるなんてレアだと思う。あとは、委員長とも仲良くなれたし。風紀委員長に、大福貰えたしな。
「ありがとうございます。だけど、何でもかんでも逃げるのも悔しいんで今回は頑張ってみます。失礼します」
それから、呆れたのか反論してこない副会長に頭を下げて、俺は調理室へと走り出した。
「……全く。何を言っているんだか」
だから、副会長がそう呟いてSクラスに向かったことを俺は知らない。
「ちょっと、見た!?」
「見た見た! 紫苑様の微笑みっ」
それから、そんな副会長とすれ違ったチワワ達がそう盛り上がっていたことを。
※
……三時になり、文化祭終了を知らせる放送が流れる。
「終わったー!」
「お疲れっ」
衝立の向こうから聞こえてきた真白達の声に、俺もホッと息をついた。教室の片づけこそあるが、とりあえず何とかやりきれたぞ。
「よう」
「「先生?」」
「橙司!」
「ホスト!」
「……柏原、お前な」
と、聞こえてきた声に俺は何だ、と顔を出した。
そしてホストこと橙司先生と、その手に持っているコンビニ袋とのミスマッチに首を傾げた。
「お疲れさん、差し入れだ」
これくらいは良いだろ、と言って橙司先生は俺にコンビニ袋を渡す。
うん、確かに口出しを控えてくれて助かった。先生が介入してたら、また面倒なことになってただろうからな。
(本当、見かけによらず空気を読んでくれる人だよな)
だから、俺は「ありがとうございます」とお礼を言って、コンビニ袋の中を見た。
……そしてそこにあったおにぎりを見た瞬間、グウ、と俺の腹が鳴り。
「食べていい、ですか?」
「お、おう!」
橙司先生に尋ねると、腹の音に驚いたのか軽く目を見張りつつも、頷いてくれた。
立っているのも何なんで、俺は床に座り「いただきます」と言って、おにぎりを口に入れた――美味い、そして鮭ハラミだ。
「出灰……腹、減ってたんだな」
「ん、みたいだな」
真白に聞かれて、俺は他人事みたいに答えた。
本当に、さっきまでは別に何かを食べたいなんて思ってなかった。自覚してなかったけど、結構、いっぱいいっぱいだったのかな、俺。
「オ、オレの分も食うか?」
「いいよ。もう一個あるし、お前も食ってないだろ……って、おい?」
メイドの格好のまま、床に座ろうとした真白に俺は慌てた。
それから、俺が立ったのに合わせて立ち上がる真白を見て思う。
(そっか、これも……一緒に並んで食うのも『お揃い』か)
女子か、と思ったけどまあ、真白には似合うし可愛いから良いか。そう結論づけた俺に、一茶達が声をかけてくる。
「出灰、ここで食べようよ」
「今回は、一茶に賛成。もう、ご主人様やお嬢様も来ないしね」
「そうだね」
さっきまで、客がケーキを食べてお茶をしていたテーブルと椅子を示されたのに、俺は無言で頷いた。
それから、橙司先生が俺の肩をポンッて叩いて教室を出て行った後――俺は、皆と一緒に差し入れのおにぎりを食べて、ペットボトルのお茶を飲んだ。
走り回ってたせいで、だるくなった足を伸ばしながら――終わったんだな、って俺は心の中で呟いた。
(これも『良いこと』ですよ、副会長)
……文化祭を回って、楽しむことは出来なかったけど。
こいつらと一緒に、何とかケーキ屋をやりきれたから十分だ――小説にするには、ちょっと地味かもしれないけどな。
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