愛とか恋とかストーカーとか

なかあたま

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愛とか恋とかストーカーとか

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「真辺くん。君、ずっとストーカーされてるの、気がついてなかった?」

 ストーカー? ストーカーは僕の方だろ?
 泥濘に浸かって鈍くなった脳みそが、言葉の一つ一つを上手く噛み砕けない。
 意識がどんどん闇に沈んでいく。
 そんな中でも、彼の熱い指先が体を這う感覚だけはハッキリと脳に焼きついた。
 ────これは、僕の願望が見せた夢か?
 ふと、目の端に何かが映る。霞んだ視界が捉えたものは、縄とガムテープ、そして手錠だ。

「あぁ、それ? 真辺くんが抵抗したら使おうと思ってたんだ。でも、この様子じゃ使わなくても良さそうだね」

 彼が醜く口角を上げ、僕を見下ろす。冷酷な眼差しに胸が抉られるほどの興奮を覚え、身が震えた。
 その震えを恐怖から来るものだと思い込んだのか、前島さんは満足げに微笑み、耳をべろりと舐めた。
 彼の香水の匂いが鼻腔を擽り、更に脳の奥で火花が散る。

「んっ、う! ……うぅ……!」

 朦朧とした意識の中、泥沼から引き摺り出すような衝撃が体を襲う。
 顔だけを起こし、前島さんを見た。
 前島さんはというと、容器から垂れた液体を手に擦り付け、僕の下半身を探っている。
 再び、衝撃が体を走る。背中が弓なりに反り、爪先が痙攣した。

「お゛っ……!」
「へぇ、初々しい反応。こういうことするの初めてなんだ。あはは」

 後孔に指を入れられているのだと気がつき、背中に汗が滲む。
 異物が体内に埋め込まれているという違和感と、その根源が前島さんであるという高揚感で頭がぐちゃぐちゃになった。

「……我慢できない。入れるね?」

 切羽詰まった声が鼓膜を撫でる。頬に落ちてきた汗が、緩やかに流れ落ちた。
 後孔に熱いものがピタリとくっつき、勢いよく挿入される。

「んうぅ! あっ、あっ!」
「うわ、すごっ、すごいよ……真辺くんっ」

 ガツガツと腰を打ちつけられ、唾液が口の端から漏れる。
 力の入らない体を、まるでダッチワイフのように使われた。
 腰を掴まれ、ガクガクと揺さぶられる。短い喘ぎ声が部屋に響いた。
 歪んだ視界に、前島さんの微笑んだ顔が映る。

「可愛い……すごく、可愛いよ……」

 譫言のごとくそう繰り返し、キスをされる。感覚がない口の中を、ぬるりとした舌が這い回る。
 歯列を唾液の多い舌が、品定めするようになぞる。痺れた舌を擽られ、塞がれた唇の隙間から声が漏れた。
 短く吐息を漏らし、前島さんが唇を離す。名残惜しさにその唇にもう一度噛みつこうとしたが、体が動かなかった。

「やっと、抱けた。この時を、ずっと待ってたんだ」

 切羽詰まった声でそう囁かれ、腹の奥がぎゅうと疼いた。
 どうやら僕らは、両思いだったらしい。その事実が嬉しくて、このまま死んでも悔いはないと思えた。

「は、あ゛っ……! ま、まえじま、さっ、まえじま、さ……ッ」

 彼の動きが早くなる。額に汗を滲ませた前島さんが必死になって性器を最奥に捩じ込み、種付けしようとしている。その姿が興奮を招き、目の前が歪んだ。
 荒い息遣いと腰を打ちつける音が部屋に響く。ごちゅごちゅと下品な音が鼓膜でリフレインした。

「は……はぁ、真辺くん、初めてなのに……気持ち、良いんだ。すっごく、えっちな顔してる」

 どんな顔を、しているのだろうか。
 僕はぼんやりと彼を見上げながら、そう思った。
 ゆるりと口の端から唾液が垂れ、頬を伝う。
 汗ばんだ手のひらが滑るのか、彼は何度か腰を掴み直す。その度に鈍い痛みが全身に広がった。

「もう、ダメだ。我慢できない」
「ひ、ぎゅぅッ────!」

 腰を打ちつける速度が速くなる。その度に、内臓が口からこぼれ落ちそうなほどの衝撃が背筋に走る。
 しかし、その苦痛でさえ、今の僕には甘美な蜜の味だ。彼から与えられる全てを感受して、余すことなく満たしたかった。

「ゴム、つけるの忘れてたッ……でも、中に出して、いいよね? 君は……もう、俺のものだもんね?」

 少し幼稚な口調で彼が譫言のようにボヤいた。「ね? ほら、出しちゃうよ。いいの? 男の子なのに、中出しされちゃうね? 」────数々の言葉が降ってくる。
 その瞳は愉快げで、僕の反応を楽しみに待っているようだった。
 そんな彼の腰に足を回す。痺れを残す脚に力を込め、引き寄せた。

「あ゛っ! なかに、い、っ、いっぱいだしてッ……! まえじまさんの、あかちゃん、う、うみたいっ」
「えっ」

 その言葉と同時に、腹の奥で彼の性器がびくんと蠢いた。
 前島さんが僕の体を使って気持ちよくなってくれたのだ。彼から与えられる快感とほんのわずかな苦痛に幸福感を覚え、胸が締め付けられる。
 欲望を吐き出した後の倦怠感でそのまま前のめりに倒れた前島さんの背中に手を回し、緩く撫でた。汗ばんだ皮膚と、脈打つ心臓の音が愛しくてたまらない。
 やがて息を整えた彼がゆっくりと体を起こす。

「……えっ」

 もう一度、彼が短く言葉を漏らした。僕を見つめ、ポカンとしている。

「……えっと……真辺くん」
「はい」
「俺は君に薬を盛ってレイプをしたんだけど、感想は?」
「さいこうです」

 ようやく回りだした呂律。けれど滑舌はどうも治りそうにない。
 ────すごく強い薬を盛ったんだな。後遺症とか残らないといいけど。
 そんなことを頭の隅で考える。
 前島さんは目を見開き、口をポカンと開けていた。
 その表情が可愛くて、キスをしたくなった。

「えっ……えっと、あの……」
「ぼく、まえじまさんのこと好きです。嬉しいです」

 上半身を無理やり起こし、呆気に取られている彼の頬に唇を押し付けた。
 力の入らない手を彼の首に回し、抱きしめる。

「ぼく、あなたになら何をされてもいい。なんでもします。あなたが望むなら。もっと好きにつかってください」

 耳元でそう囁く。
 彼は身動き一つしないまま、もう一度だけ「えっ」と言葉を漏らした。
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