愛とか恋とかストーカーとか

なかあたま

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ストーカーとか恋とか愛とか

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 真辺くんがカフェに勤めているのは平日の昼だ。そのタイミングを見計らい、俺はカフェへ急ぐ。
 内装はモダンな雰囲気を醸し出していて、落ち着いている。
 彼に会いたい一心で店の扉を潜る。小走りで俺を出迎えたのは────真辺くんだ。ふわりと柔らかい笑みを浮かべ、胸元についた名札を揺らしながら、俺を席へ案内する。
 その間も、俺は彼を見逃さないようにと、背中を眺めた。

「こちらへどうぞ」

 真辺くんが、新たに入店してきた客を案内するため小走りで去った。
 俺は席に腰を下ろし、様子を眺める。
 ────あ、結城加子だ。
 結城が入店し、真辺くんに案内され席に着く。
 彼女もこの店を利用していたのか。そんなことを頭の隅で考えながら、真辺くんを観察した。
 テキパキと動く彼は、とても心を擽られる。
 ────手に入れたい。
 どうしても、その感情は消えなかった。
 あの肌に触れることができたら……考えるだけで、胸が疼いた。



 ほんの出来心だった。そう、出来心にすぎない。
 だから、この行為に悪意はない。
 ただ、真辺くんのバイトが終わるタイミングを見計らい、後を追っただけだ。
 あの日はたまたま休暇で、それでたまたま店に来ていた。食事を済ませ、彼の退勤を待ち、後を追っただけだ。
 本当に悪意はない。

「だから、大丈夫だ」

 真辺くんから離れた位置で、そうひとりごちた。
 リュックを背負い、駅まで歩む彼の背中を追いかける。
 ────可愛い。
 真辺くんの私服は、とてもシンプルで可愛かった。
 思わず、スマホのカメラを起動させる。バレない位置で彼の姿を撮影した。手元に収まった写真に頬が緩む。
 そのまま、駅のホームへ向かう真辺くんの後を追い、電車に乗り込んだ。席に腰を下ろした彼を、斜め前からじっと観察する。
 もちろん、真辺くんは俺に気がついていない。
 目を瞑り、目的の駅に着くまで黙って電車に揺られていた。
 長いまつ毛と、白くまろい頬。振動が髪を揺らし、それが蠱惑的に見えた。
 空いている電車内をきょろきょろと見渡す。彼の隣に座りたいが、不自然に見えてしまうかもしれない。
 ────声をかけてみようか。
「こんにちは、真辺くんだよね? 俺、君が働いているカフェによく行くんだ。ねぇ、隣に座ってもいい?」なんて声をかけたら、彼はどんな反応をするだろうか。
 俺を見上げ、顔色を悪くし、「ど、どうも……」と言いながら席を移動するだろうか。
 もしくは目的の駅よりも一つ手前の駅に、そそくさと降りてしまうかもしれない。
 そんなことをした結果、俺を警戒されると非常に困る。
 欲を殺しつつ、真辺くんのうつらうつらとした表情を眺めた。
 やがて、電車が緩やかに停まる。ハッと顔をあげ、リュックを背負い直した真辺くんが駅へ吸い込まれるように歩き出した。俺も数秒後に、彼の後を追う。
 真辺くんは改札を抜け、外へ向かった。俺は物陰に隠れ、彼の背中を見逃さないようにする。
 つけられていると知らない彼は、とても愚かに見えた。そんな無防備な姿に、腹の奥が疼く。
 数分歩いた真辺くんは、くたびれたマンションへ足を踏み入れた。
 猫の額ほどの狭いエントランスは薄暗く、切れかけの電気がチカチカと点滅している。
 人が二人乗るのがやっとであろう狭いエレベーターの隣には、階段があった。
 真辺くんは階段を登り、その姿を隠してしまった。
 俺は集合ポストへ視線を投げた。表札を指先でなぞる。二〇二号室という文字の横に、真辺と記載されていた。
 ポスト口から中を覗き込む。チラシが回収されないまま、放置されていた。
 意外とズボラなのだな、と口角が歪む。
 そこでふと、隣室のポスト口が養生テープで塞がれていることに気がついた。
 俺は自分の頬が緩み切っていることに気がつき、思わず鼻で笑ってしまった。
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