かべいちまい

なかあたま

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「んっ、ひぃ!」

 粘り気のある指先が後孔へ侵入し、中で指を折り曲げられる。いい所を掠め、痙攣してしまう。
 素直に反応してしまう体が忌々しくて、涙が溢れ出た。
 小刻みに動く脛と、その足を持ち上げて愛おしそうに唇を押し付けている衛藤が視界に入り、射精しそうになる。

「ねぇ、気持ちいい?」

 良いに決まってる。そう返したかったが舌が回らない。息をするのもやっとだ。
 指先でいいところを掠めたかと思えば、乳首を吸われ、耳元で「可愛いね」と褒められる。
 まるで底無しの沼のように俺を堕としていく彼が、恐ろしかった。
 「挿れていい?」と甘えるような口調でそう言われ、耳朶を喰まれる。
 頭を上下に振ると、衛藤が汗ばんだ額を拭いながら、子供のように微笑んだ。
 「ありがとう」とひとりごちた彼は、再びビニール袋を漁った。
 手に持っているそれはコンドームだ。落ち着いた様子でパッケージを開ける彼を霞んだ視界で必死に捉える。
 ────デカ。
 笹原より長くて太いそれにコンドームを被せる姿を見て、俺は唾液を嚥下する。
 俺の視線に気がついたのか、彼が体を密着させ、キスをした。

「そんなじっくりと見られると、恥ずかしいよ」

 近距離で見つめ合ったかと思えば、舌を唇の隙間へ侵入させ、そのままじゅうじゅうと舌を吸う。
 その間も、彼は自身のブツを俺の腹や太ももに擦り付けており、心臓の脈打つ速度が早まった。
 ────これを挿れられたら、きっと。
 尻で得られる快感を覚えてしまった脳が、ぼんやりと思考を曇らせた。
 まるで麻薬を打つ前のような感覚だ。(もちろん、経験などないが)

「ンお゛っ!」

 予告もなく、いきなり挿入され、思わず大声を上げてしまう。
 初っ端から深いところを目掛けて侵入してきたそれに、腰が震えた。

「はっ、は、はっ、あ゛っ」
「あはは。ねぇ。もっと声、出していいですよ。我慢しないで。壁越しに聞いていた声を、もっと間近で聞きたいです」
「ん゛ぁ! あっ……ぐぅう!」

 爽やかな顔でそう言いながら、腰を激しく動かす彼。そのギャップが恐ろしくなり、彼の腕に手を伸ばし距離を取ろうと藻掻いた。
 そんな俺の行為が気に食わなかったのか、それとも悪戯心が働いたのか。彼がさらに深く腰を沈める。
 ごちゅん、という音が響き、心臓が一瞬止まった。

「お゛っ、お、くっ、ダメ! あッ、は、入っちゃ、いけない゛、ところ、はいっで、ぇ!」
「ここ、まだ誰も入ってないんですか? じゃあ僕が、一番最初なんですね。嬉しいです」

 いつも弄られている場所の更に奥。そこへ彼の亀頭が侵入し、目の前に星が散った。
 呼吸の仕方さえ危うく、指先が震え出す。短く息を吐き出す俺を、うっとりとした瞳が見つめている。
 アンタのデカブツでパニックを起こしてるのに、よく平気な顔でいられるな。と、頭の片隅で毒を吐く。

「ひぎっ、ぃ……! んぉ゛っ」

 腰を揺らされるたびに、背筋にビリビリと何かが走る。
 抑えられない声が、部屋に響いた。

「……本当に、声が大きいですね」

 嘲笑うように言われ、泣きそうになる。
 「ら、らってぇ」と情けない声を漏らす俺の額にそっとキスをした彼が、ぎゅうと俺の体を抱きしめた。
 力を込められ、背筋の骨が数回鳴る。
 肺を圧迫され呼吸がし辛くなったが、何故かとても幸福に満ちていた。
 汗でベタベタになった手で頬を包まれ、何度も唇に歯を立てられる。
 彼の瞳には俺が常に映り込んでおり、それがむず痒くて堪らなかった。
 ────こんな、恋人同士がするようなセックスをされたら。戻れなくなりそう。
 頬に軽くキスをされ、擦り寄られる。
 洗脳のように「可愛い、可愛い」と囁かれ、脳に浸透していく。
 手を絡め取られ、ぎゅうと握りしめられた。
 腰を打ち付ける速度が早まり、彼がイキそうなのだと実感する。
 下半身がキュンと疼き、俺は舌を出して喘いだ。

「あ、あ、アッ、はっ、あぁ!」
「ねぇ、イって、いいですか?」

 拙い口調でそう言われ、胸が締め付けられる。
 無言で頷くと、突き出していた舌に彼が吸い付く。
 そのまま奥を抉られ、勢いよく放たれる。ビクンと震える彼のブツと、コンドーム内に溜まっているであろう精液が熱くて、深く息を漏らした。
 彼と俺の間でもみくちゃにされた俺の息子もいつの間にか爆ぜており、恥ずかしいやら情けないやらで、顔を横に向けカーペットの感覚を味わう。
 一息ついたのか、彼が前髪を撫でた。俺を見下ろし、口角を上げる。
 その色っぽさに、眩暈がした。

「……ちゃんと出せましたね。貴方がイけたみたいで、安心しました」

 腹に散った白い液体を指先で弄りながら、彼が呟く。

「……衛藤さんは、気持ちよかったですか?」
「もちろん。最高の体験をしました」

 先ほどの色っぽい表情とは真逆の、人懐っこい笑顔でハッキリとそう言われ、俺は照れ臭さのあまり頭を掻き毟りたくなった。
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